相続する子どもがいない夫婦の遺産はどうなる? 柏市の弁護士が解説
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千葉家庭裁判所で調停や裁判に発展した平成29年度の遺産分割事件数は489件でした。
相続は、誰しも経験するものといえますが、正しい知識や理解をもって財産を残さなければ、残されたご家族の間で後に大きな争いに発展してしまう可能性を含んでいます。
とはいえ、相続問題は、家族構成等によって法定相続分が異なるなどなかなか理解しにくい部分があることも確かです。
本コラムでは、子どもがいない夫婦の相続はどのように行われるのか、注意するべき点は何か、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説していきます。
1、夫婦に子どもがいない場合の相続人は配偶者だけではない!
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(1)夫婦に子どもがいない場合の法定相続人
子どもがいない夫婦の一方が死亡した場合には、残された配偶者は常に法定相続人になります。しかし、配偶者のみが法定相続人になるとは限りません。
民法では、配偶者のほかに、次の順位の者が順位に従って法定相続人になるとしています。
第1順位 子・孫などの直系卑属
第2順位 父母・祖父母などの直系尊属
第3順位 兄弟姉妹
したがって、子どもがいない夫婦の一方が亡くなれば、「配偶者と第2順位の父母などの直系尊属」が法定相続人になりますが、父母などが亡くなっていれば「配偶者と第3順位の兄弟姉妹」が法定相続人になります。
なお、第3順位の兄弟姉妹が亡くなっている場合は、兄弟姉妹の子どもによる代襲相続(だいしゅうそうぞく)が認められています。 -
(2)代襲相続
代襲相続とは、相続の時点で子や兄弟姉妹などが亡くなっているなどの理由により相続権を失っていた場合に発生する相続をいいます。つまり、子や兄弟姉妹に代わってその子どもが相続人になるということです。
例えば、相続が発生した時点で兄弟姉妹が亡くなっている場合でも、甥や姪にあたる兄弟姉妹の子どもがいれば、甥や姪が代襲相続して法定相続人になります。
したがって、子どもがいない夫婦の場合、「配偶者と甥や姪」が法定相続人になる場合があるということを覚えておくとよいでしょう。
2、相続人の法定相続分はどうなる?
では、子どものいない夫婦の一方が亡くなった場合の法定相続分について、いくつか例を挙げながら具体的にみていきましょう。
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(1)親が健在の場合
被相続人の親が健在である場合には、「配偶者と父母」が法定相続人になります。
この場合の法定相続分は、配偶者は3分の2、親は3分の1とされています。
なお、父母双方が健在の場合は、3分の1の法定相続分を2人で均等に分けることになるので、父母それぞれの法定相続分は6分の1ずつになります。 -
(2)親は亡くなっており、兄弟姉妹がいる場合
被相続人の親が亡くなっており、兄弟姉妹がいる場合には、「配偶者と兄弟姉妹」が法定相続人になります。
この場合の法定相続分は、配偶者は4分の3、兄弟姉妹は4分の1とされています。
なお、兄弟姉妹が複数いる場合には、4分の1の法定相続分を均等に分けたものがそれぞれの法定相続分となります。 -
(3)被相続人の親、兄弟姉妹が亡くなっており、甥や姪がいる場合
被相続人の親や兄弟姉妹が亡くなっている場合、甥や姪がいれば「配偶者と甥や姪」が法定相続人になります。
甥や姪は、兄弟姉妹を代襲相続しているのですから、法定相続分は兄弟姉妹が相続人である場合と同様に考えます。
そのため、法定相続分は、配偶者は4分の3、甥や姪は4分の1となり、甥や姪が複数いる場合には4分の1の法定相続分を均等に分けます。 -
(4)上記(1)~(3)に当てはまらない場合
被相続人の親が亡くなっており、兄弟姉妹や甥や姪などもいない場合には、配偶者のみが相続人となります。この場合、被相続人の遺産は、配偶者が全て引き継ぐことになります。
3、法定相続分は必ず守らなければならないか?
これまで法定相続人や法定相続分をみてきましたが、「日頃付き合いのなかった甥や姪が相続することに納得がいかない」「折り合いの悪い兄弟姉妹には相続させたくない」といったこともあると思います。
そのような場合にも、法定相続分は守らなければならないのでしょうか。
結論からいえば、法定相続分はあくまでも目安といえるものなので、必ず守らなければならないわけではありません。
法定相続分は、被相続人の遺言や相続後に相続人全員で行う遺産分割協議で変えることも可能です。
ただし、遺産分割協議は相続人全員の合意が必要となるため、被相続人が法定相続分どおりの相続を望まない場合には、遺言を作成しておくことが大切です。
続いて、遺言を作成する場合の注意点をみていきます。
4、遺言を作成する場合の注意点
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(1)遺留分に注意する
遺留分とは、一定の範囲の相続人の生活を保障するために設けられた最低限の権利です。
遺留分の権利を有する一定の範囲の相続人には、配偶者、子・孫などの直系卑属、父母・祖父母などの直系尊属が該当し、兄弟姉妹は含まれません。
そして、兄弟姉妹には遺留分はないので、代襲相続する甥や姪にも当然遺留分はないことになります。
遺留分権利者がいるときには、遺留分を侵害した遺言は相続後に争いを生じさせる可能性があるので、注意して遺言書を作成する必要があります。 -
(2)具体的な遺留分
子どものいない夫婦の一方に相続が生じた場合の具体的遺留分は、次のとおりです。
●配偶者と親が法定相続人になる場合
配偶者の遺留分は6分の2、親の遺留分は6分の1になります。
●配偶者と兄弟姉妹・甥・姪が法定相続人になる場合
配偶者の遺留分は2分の1で、兄弟姉妹(または甥や姪)には遺留分はありません。
●配偶者のみが法定相続人になる場合
配偶者の遺留分は2分の1になります。
たとえば配偶者だけに相続させたいと考えている場合でも、親が健在の場合は遺留分を考慮する必要があります。
しかし、兄弟姉妹や甥・姪が法定相続人になる場合には、遺留分を考慮せずに全財産を配偶者に相続させる旨の遺言書を作成したとしても、遺留分に関して問題が生じることはありません。 -
(3)公正証書遺言で有効な遺言を作成する
遺言書を作成する際には、有効な遺言書を作成することが大切です。
遺言書は、主に自筆証書遺言・公正証書遺言の方式で作成されることが多いものです。
自筆証書遺言は、紙とペンがあれば作成できる手軽なものである一方、記載方法や記載内容に厳格な様式が要求されるので、無効となるケースも生じやすいものです。
公正証書遺言は、遺言者と証人が公証役場に行って公証人に遺言書を作成・保管してもらうものです。公正証書遺言では、遺言の内容が無効になることはほぼなく、その保管に関しても紛失・盗難などの心配はありません。
したがって、確実に有効な遺言を作成するためには、公正証書遺言による方式がおすすめです。
5、夫婦に子どもがいない場合の相続を円滑に進めるためには
子どものいない夫婦の相続に関する法定相続人や法定相続分は、前もって被相続人が遺言書を作成しておくことで変更することができます。
しかし、相続財産などはそれぞれのケースで異なるため、「遺留分を考慮した遺言を作成するにはどのようにしたら良いのか」、また「有効な遺言書を確実に残すために公正証書遺言を作成したいが具体的にはどう行動したらよいか分からない」などという悩みが生じることもあると思います。
そういった場合には、弁護士に相談しアドバイスを受けることで相続を円滑に進めることができます。
6、まとめ
本コラムでは、子どもがいない夫婦の一方が亡くなった場合の相続について解説していきました。子どもがいない夫婦の相続に関しては、配偶者が当然すべて相続するものというイメージを持っている方も多く、相続が発生した段階で初めて甥や姪なども相続人になるという事実を知るケースも多いものです。
事前に知識を備えておけば、トラブルを未然に防ぐ相続準備を行うことができます。
残される配偶者に対してどのように相続準備を行えば良いのかとお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスまでご相談ください。柏オフィスの弁護士が力になります。
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