死因贈与とは? 遺贈との違いやメリット・デメリットについて解説

2020年12月24日
  • 遺産を残す方
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死因贈与とは? 遺贈との違いやメリット・デメリットについて解説

柏市社会福祉協議会では、終活をサポートするための「わたしの望みノート」を配布しています。いわゆるエンディングノートで、自分の望みや希望、パーソナル情報などを記載できるようになっています。

終活をする上で特に頭を悩ませるのは、財産をどのように残すかということではないでしょうか。終活においては、生前の相続対策も大きなトピックになりますが、そのひとつに「死因贈与」があります。死因贈与とは、自身の死後、特定の相手に財産を贈与するための契約ですが、利用にはメリットとデメリットがあるので注意が必要です。

そこで、本コラムでは相続における死因贈与にスポットを当てて、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説します。

1、死因贈与のメリット・デメリット

死因贈与は遺言書作成などのように、生前に行うことができる相続対策のひとつです。まずは死因贈与の仕組みについて詳しくご説明します。

  1. (1)死因贈与は贈与契約

    贈与とは、財産を無償で譲ることを言い、「譲る」という意思表示に対し、「もらう」と合意することで成立します。
    贈与契約においては、財産を譲る側を「贈与者」、もらう側を「受贈者」と言います。

    死因贈与とは、贈与者の死亡を条件に財産を譲り渡す贈与契約です。
    平たく言えば、贈与者の「死んだらあげる」という提案に対し、受贈者が受け入れることで成立する契約です。

    なお贈与する相手は、法定相続人以外でも問題ありません。

  2. (2)相続税の対象

    個人から財産をもらう一般的な贈与については、「贈与税」の課税対象です。
    一方、死因贈与は贈与ではあるものの、実際には相続が発生してから財産の受け渡しが行われるため、贈与税ではなく「相続税」の課税対象となります。

    相続が行われた際には、他の相続財産とともに相続税の申告が必要です。

  3. (3)死因贈与のメリット

    死因贈与を利用するメリットは二つあります。

    一つ目は、贈与者の意志を正確に反映できることです。

    死因贈与は、生前に贈与者と受贈者の合意のもとに契約を結ぶため、贈与者の死後、受贈者が一方的にそれを破棄することはできません。
    つまり贈与者の意志に基づき、渡したい相手に財産を渡すことができるのです。

    二つ目は「負担付き贈与」を使えば、受贈者に、例えば介護してもらう等の約束を果たしてもらえることです。

    負担付き贈与とは、財産を譲る条件として受遺者に一定の負担を求めることです。
    たとえば親が自分の介護をすることを条件に、子どもに財産を譲るといったケースです。

    負担付き贈与の場合、受贈者がすでにその負担を果たしていれば、原則として贈与者は契約を撤回することはできません。

  4. (4)死因贈与のデメリット

    死因贈与のデメリットは、不動産を法定相続人に贈与した際の税負担の重さです。
    不動産の相続では、不動産の名義変更に伴い「登録免許税」と「不動産取得税」が課されます。死因贈与の場合は遺言をもとに財産を譲る「遺贈」と比べると、この税金が高額になります(法定相続人に対して行う場合)。

    また、契約内容に不備があった場合、相続人同士のトラブル原因になってしまう可能性や、結果的に贈与者の意思が反映されない、といったことも起こり得るでしょう。

2、死因贈与と遺贈の違い

死因贈与と遺贈は生前の相続対策であり、贈与者の死亡により財産を渡すという点で共通していますが、次のような点で違いがあります。

  1. (1)贈与者と受遺者の合意の有無

    死因贈与は、贈与者と受贈者の合意により成立する「契約」です。そのため、お互いが贈与の内容について知り、納得している必要があります。

    一方で遺贈は、遺贈者の気持ち次第で行うことができます。
    受遺者の同意は必要ないため、受遺者に知らせず一方的に財産の受け渡しを決めることができます。

  2. (2)死因贈与は双方の合意のみで成立する

    死因贈与は、贈与者と受贈者の合意があれば有効です。

    つまり、たとえ口頭での約束のみであったとしても、有効と考えられます。しかし、確固たる証拠がなければ、言った、言わないといった水掛け論になる可能性や、相続人同士のトラブルに発展する可能性も否定できません。そのため、死因贈与を行う場合は、内容をまとめた「贈与契約書」を作成しておくと良いでしょう。

    一方で遺贈は、遺言書の作成が必須です。
    遺言書では贈与する財産や相手について、明確に指定しておかなければいけません。

  3. (3)死因贈与は撤回できないことがある

    死因贈与は、基本的には撤回することが可能です。

    ただし負担付き死因贈与では、すでに負担の全部またはそれに準ずる程度の履行が行われた場合は原則として撤回することはできません。

    その点、遺贈の場合は特に条件はなく、贈与者の一存で撤回することができます。
    気が変わった場合には、遺言書を作り直せば良いだけです。なお、遺言書は何度でも作成することができ、最新のものが正式な遺言書として扱われます。

  4. (4)死因贈与は仮登記が可能

    不動産を相続する場合は、不動産の登記名義を換える「所有権移転登記」をする必要があります。
    通常は相続が行われた際に登記をしますが、死因贈与の場合は、贈与者が生きている間に不動産の所有権移転登記を「仮登記」することができます。

    将来的に贈与者が死亡し相続が始まった際に、他の相続人などに勝手に不動産を売却・譲渡されるというような事態を防ぐことができます。
    なお、あくまで仮登記のため、贈与者が亡くなった後に本登記をする必要はあります。

    遺贈では、仮登記することはできません。通常の相続と同じように、相続が開始された後に所有権移転登記をする必要があります。

  5. (5)未成年者の契約の可否

    死因贈与は法律行為である「契約」です。
    そのため、一般的には少ないと思われますが未成年者が死因贈与をする場合は、法定代理人の同意または代理が必要です。
    なお、贈与を受けるのに年齢は関係なく、未成年者であっても自分の意思だけで受け取ることができます。

    一方、遺贈は満15歳以上であり遺言能力があれば、法定代理人の同意なく遺言者として遺贈することができます。

3、死因贈与の手続きの流れと注意点

死因贈与の手続き自体は難しくありませんが、自身の意思をしっかりと反映させ、相続人同士のトラブルを防止するためにも、弁護士に相談した上で進めると良いでしょう。

  1. (1)贈与内容の合意を得る

    死因贈与は贈与者の一方的な意思だけでなく、受贈者の同意が必要です。

    まずは贈与を検討していることや、対象となる相続財産について受贈者に伝えましょう。
    合意できればこの時点で贈与契約は成立します。

  2. (2)「死因贈与契約書」を作成

    死因贈与は口約束でも成立しますが、何も証拠が残っていなければ、相続が発生した後に他の相続人とトラブルになる可能性があります。
    そのため贈与に合意できたら「死因贈与契約書」を作成しておきましょう。公正証書にしておけばより安心です。

    贈与契約書の形式に決まりはありませんが、死因贈与契約を結ぶことや贈与する財産の詳細などを記載し、贈与者と受贈者が署名・押印するのが一般的です。

    また契約書の中で執行者を指定しておけば、相続が発生した際の手続きがスムーズに進みます。

  3. (3)不動産の仮登記

    不動産の死因贈与を行う場合には、所有権移転の仮登記が可能ですので、必要に応じて進めておきましょう。

    原則として、手続きは贈与者と受贈者が共同で行わなければいけませんが、公正証書で死因贈与契約書を作成し、受贈者による仮登記を認める旨が記載されていれば、受贈者のみでの申請も可能です。

4、死因贈与は弁護士に相談

死因贈与には、メリットもデメリットもあります。
そのため、利用する際にはまず、ご自分の思い描く相続が死因贈与で実現するかどうかを見極めなければいけません。

また、死因贈与は遺留分(法定相続人に保証されている最低限の遺産取得分)の規定が適用されます。たとえば、法定相続人がいるにもかかわらず、全財産を他人に譲るといった内容の死因贈与を行った場合、遺留分を侵害された他の相続人は、贈与を受けた受贈者に対して遺留分を請求することができます。これを、遺留分侵害額請求と言います。
このような事態にならないよう、死因贈与を検討する場合は、遺留分も考慮する必要があります。

相続に詳しい弁護士であれば、死因贈与を利用すべきかどうかの判断や手続きのサポート、死因贈与以外の財産の残し方など、状況に応じた的確なアドバイスをすることが可能です。 自身の思いを、しっかりと実現させるためにも、法の専門家である弁護士へ相談することをおすすめします。

5、まとめ

死因贈与を利用すれば、希望する形で財産を譲り渡すことができます。ただし、死因贈与のメリットや注意点をしっかりと理解した上で行わなければ、自身の思いがかなわないばかりか、相続人同士のトラブルに発展するおそれもあるので注意が必要です。

ベリーベスト法律事務所 柏オフィスには、相続問題に精通した弁護士が在籍しています。死因贈与を実現させるためのサポートはもちろんのこと、状況にもっとも適した相続手段をアドバイスします。初回相談料は無料ですので、まずはお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています