子ども3人で遺産を相続した場合の遺留分は? 割合と計算方法を解説
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柏市役所がホームページ上で公表する「将来人口推計」よると、15歳~64歳の生産年齢人口は令和7年(2025年)をピークに減少する見込みですが、65歳以上の人口は増加すると予測されています。
このように、高齢化の進展といった社会全体の変化にあわせるため、相続に関する法律の見直しがなされるなど、相続への注目度が高まっています。
しかし実際には、自らが相続人になる機会はそう多くあることではないでしょう。相続に関する知識がなかったために、相続人の権利を行使できず後悔の残る相続になってしまったというケースも少なくありません。
本コラムでは、後悔の残らない相続にするために押さえておきたい遺留分の概要について、子ども3人で遺産を相続するケースでの具体例を交えながら、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説します。
1、遺留分の基礎知識
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(1)遺留分とは?
遺留分とは、法定相続人が法律上取得することが保障されている、相続財産における一定の割合をさします。
遺留分を主張する権利がある相続人は、被相続人の配偶者や子ども、または被相続人の父母などの直系尊属です。被相続人の兄弟姉妹は相続人になったとしても、遺留分を請求する権利者には該当しないので注意が必要です。
なお、遺留分の割合は次のように定められています。- 配偶者のみ……2分の1
- 配偶者と子ども……2分の1を相続人で分割(配偶者4分の1/子ども4分の1)
- 配偶者と父母などの直系尊属……2分の1を相続人で分割(配偶者3分の1/直系尊属6分の1)
- 子どものみ……2分の1
- 父母などの直系尊属のみ……3分の1
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(2)遺留分と遺留分侵害額請求(旧:遺留分減殺請求)
遺留分を侵害する遺言が行われたときには、遺留分を侵害された相続分の返還を求めることができます。これを、遺留分侵害額請求といいます。
遺留分侵害額請求権を行使できる期間は限られており、その期間を過ぎれば遺留分侵害額請求権は時効により消滅してしまうので注意が必要です。
遺留分侵害額請求権を行使できる期間は、下記のとおりです。遺留分侵害額請求をできる者が、相続の開始と不公平な内容の相続があったことを知ったときから1年間、または相続開始のときから10年以内
つまり、遺留分侵害額請求権は、最短で相続開始から1年で消滅してしまう可能性があるということになります。
なお、令和元年7月1日に施行された民法改正により、「遺留分減殺請求」から「遺留分侵害額請求」に名称が変更され、制度内容も一部変更されています。
2、遺留分の特徴や遺留分の対象となる財産
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(1)遺留分の特徴と遺留分制度の改正
遺留分の特徴としては、被相続人の兄弟姉妹は法定相続人でありながら遺留分が認められていないという点や、決められた期間内に遺留分侵害額請求権を行使しなければ、遺留分を請求することができなくなってしまう恐れがあるという点などがあげられます。
また、遺留分は一定割合の相続財産を遺留分権利者に保障するものです。遺留分権利者は、遺留分侵害額請求権を行使すれば、遺留分の範囲で不動産などの相続財産の金銭的な請求権を当然に取得できるという特徴もあります。
しかし、民法改正前は、遺留分に関する請求権(旧:遺留分減殺請求権)が当然に金銭的な請求ではなかったことから、不動産などの相続財産が、遺留分を侵害する遺贈などを受けた者と遺留分権利者で原則として共有状態になってしまうという不都合がありました。
こういった背景を受けて、令和元年7月に、遺留分制度を見直す法律が施行されました。遺留分制度について見直された点は、主に次の2点です。
1点目は、遺留分の返還についてです。改正により、遺留分の返還は「金銭賠償」が原則となりました。つまり、財産が土地しかなかったようなケースにおいて、これまでは共有状態になる恐れもありましたが、改正後は「価額」で取り戻すことができます。
2点目は、賠償の支払期限の猶予です。旧制度では、請求を受けたものに支払い能力がないと金銭での賠償が認められませんでした。改正により金銭賠償が原則となったことに伴い、遺留分侵害額請求を受けた者が賠償すべき金銭を直ちに準備できないときには、裁判所に申し立てをすることで支払期限の猶予を求めることができるようになりました。 -
(2)遺留分の対象となる財産
遺留分の対象となる財産については、「被相続人が相続開始のときにおいて有した財産の価額に、その贈与した財産の価額をくわえた額から債務の全額を控除したもの」とされています。
つまり、遺留分の対象となる財産は、次のような式で求められることになります。遺留分の対象財産=「相続開始時の相続財産」+「贈与した財産の価格」-「相続債務」
なお、「贈与した財産の価格」に算入されるものは、相続開始前の1年間に贈与したものに限られます。ただし、相続開始から1年以上前の贈与でも、契約当事者の双方が、遺留分権利者に損害を与えることを知っているにもかかわらず贈与したときには、遺留分の対象になります。
3、子ども3人が相続人の場合、遺留分はどうなる?
ここまで、遺留分の考え方について解説してきました。では、3人の子どもが相続人であった場合という具体例に基づき、どのくらいの遺留分が請求できるのかを見ていきましょう。
被相続人であるAさんの配偶者はすでに他界。Bさん・Cさん・Dさんという3人の子どもがいます。遺留分の対象財産の金額は1200万円で、特別受益を受けた者はいなかったというケースです。
法定相続人である子どもたちは、遺産全体における2分の1の遺留分を有していることになり、この遺留分を子ども3人で平等に分けることになります。
まず、子どもたちそれぞれの遺留分の割合を求めます。
2分の1(子どもたちの遺留分)÷3(人)=6分の1
次に、遺留分の割合を元に遺留分額を計算します。
1200万円×6分の1=200万円
つまり、BさんCさんDさんには、それぞれ200万円ずつの遺留分があることがわかります。
4、遺留分侵害額請求権を行使する方法
遺留分を侵害されたときには、遺留分侵害額請求権を行使できることは前述のとおりです。
遺留分侵害額請求権を行使する方法は、遺留分を侵害している相手に対して意思表示をするだけです。ただし、口頭のみで行うとトラブルの原因となるため、内容証明郵便で意思表示をすると良いでしょう。
しかし、相手にどのように伝えたら良いのかわからない、権利関係が複雑で遺留分の対象財産の金額が算出できず遺留分を侵害されたかどうかもわからない、といったケースも少なくないでしょう。
遺留分侵害額請求権を行使できる期間には時効があります。月日が経過してしまえば、権利が消失し、受け取れるはずの財産を請求することができないといった事態になりかねません。
不公平な遺産相続がされていると感じた際は、まずは弁護士に相談するのが得策です。弁護士は状況を整理した上で、遺留分が侵害されているのかどうかを判断するため、的確な助言を受けることができるでしょう。
実際に遺留分を請求する際も、遺留分侵害額請求権の行使方法や遺留分の計算方法など、弁護士のアドバイスがあればスムーズに進めることができることにくわえ、トラブルになった際のサポートも望めます。
弁護士に依頼することで、当然に受け取れるはずだった財産を諦めることなく、手にすることが望めるでしょう。
5、まとめ
後悔の残らない相続にするために、遺留分の概要と具体例として3人の子どもが相続人だったケースにおいて遺留分はどのように分けるのかを解説しました。
遺留分を侵害されたときには、遺留分侵害額請求権を行使することができますが、行使方法や遺留分額の計算などに悩むことも多いと思います。また、遺産相続に疑問を感じながらも、本当に遺留分を請求できるのか、判断できないというケースもあるでしょう。
遺産相続に伴う手続きは、期間が定められているものが多くあります。悩んでいる間に、本来は受け取れるはずの財産を失ってしまう可能性もあります。
相続に関して少しでも疑問を感じたり、悩んだりしている場合は、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士にご相談ください。
迅速に対応し、当然に受け取れるはずの財産を確保できるように尽力します。まずは、お気軽にご連絡ください。
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