死亡保険金に相続税はかかる? 遺族がもめないためにやるべき遺産対策
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柏市役所のホームページ上で、生命保険に関する相談窓口として紹介されている一般社団法人 生命保険協会は、毎年「生命保険の動向」という統計を発表しています。これによると、平成30年の千葉県における個人保険の加入件数は847万件でした。1世帯あたりの保険の加入件数は3.01件です。
保険にはさまざまな種類がありますが、相続税対策、遺産分割の際のトラブル防止の観点から生命保険に加入する方も増えています。しかし、相続税との関係などを正しく知っておかなければ、遺族に余計な負担をかけてしまう可能性もあります。
そこで本記事では、死亡保険金と相続税の関係について、柏オフィスの弁護士が解説します。
1、死亡保険金にかかる税金とは?
死亡保険金には、保険料の負担者や受取人と死亡した方の関係により、課税される税金が異なります。まずはケース別に、どのような税金がかかるのかを解説します。
●パターン1(相続税が課税される場合)
保険料負担者かつ被保険者=亡くなられた方
受取人=妻や子どもなど法定相続人の場合
亡くなられた方が保険料を負担しており、かつ被保険者であって、妻や子どもなどの「法定相続人」が受取人になっているケースは相続税の対象です。法定相続人とは、民法で定められた「相続すべき人たち」のことを言います。
そもそも、死亡保険金は民法上の「相続財産」には該当しませんが、相続税を算出するにあたっては「みなし相続財産」とみなされるため、相続税が課税されます。
なお、法定相続人が生命保険を取得する場合は、一定の額が非課税となります。
●パターン2(所得税が課税される場合)
保険料負担者=妻
被保険者=夫
受取人=妻
保険料の負担者と死亡保険金の受取人が妻であり、被保険者が夫の場合、保険料を負担していたのが妻本人なので、相続税は課税されません。そのかわり、支払った保険料を差し引いた額に対して「所得税」が課税されます。
●パターン3(贈与税が課税される場合)
保険料負担者=妻
被保険者=夫
受取人=子ども
妻が保険料を支払い、被保険者が夫で、受取人が子どもに指定されている場合(全て異なる場合)は、保険料を負担していた妻から子どもへの「贈与」とみなされ、贈与税が課税されます。
代表的な3つのパターンについて説明しましたが、相続税対策等のために死亡保険金付きの生命保険への加入を考えている方は、上記を踏まえた上でどういった契約にするべきかを、検討されると良いでしょう。
2、死亡保険金を受け取る場合の非課税枠はいくら?
死亡保険金には、残された家族の生活を保障するという目的があります。そのため、みなし相続財産に該当した場合は、「非課税枠」が適用され、一定額は相続税の対象外となります。
非課税枠の具体的な計算式は、次の通りです。
たとえば、法定相続人が4人の場合は、500万×4人という計算式になり、2000万円までは相続税が非課税になります。
法定相続人の考え方ですが、基本的には「妻」や「夫」などの配偶者は常に法定相続人となり、それ以外の親族、家族には明確な順位が定められています。
- 第一順位:子ども、死亡している場合はその子ども(孫、ひ孫など)
- 第二順位:直系尊属(父母)、死亡している場合は祖父母
- 第三順位:兄弟姉妹、死亡している場合はおい、めい
たとえば、夫が死亡して、妻と子どもが残された場合は、妻と子どもが法定相続人となり、親や兄弟は対象外になります。妻はいるけど子どもはいないというケースでは、第二順位の直系尊属が法定相続人となり、それも存在しない場合は兄弟姉妹が法定相続人になります。
ご自身の法定相続人の数を正確に把握しておかなければ、非課税枠を計算できませんので、必ず確認しておきましょう。把握できない方は弁護士などの専門家に相談してみると良いでしょう。
3、非課税枠を超えても相続税が課税されないケース
ここまで解説したように、被相続人が死亡保険の保険料の負担者かつ被保険者であり、受取人が法定相続人の場合は、死亡保険金は「みなし相続財産」となりますので、相続税が課税されます。非課税枠を活用すれば一定金額までは相続税は課税されませんが、保険の金額によっては非課税枠を超えてしまうケースもあります。
死亡保険金額が高額な場合は、非課税枠を超えても相続税が課税されないケースを把握し、支払う相続税を最小限に抑えられるようにしておくと、残されたご家族も安心でしょう。
相続財産には「基礎控除」が存在し、基礎控除の範囲内であれば相続税は非課税となります。死亡保険金がある場合は、死亡保険金と相続財産を合計したものが、(相続税上の)相続財産の合計です。そこから、基礎控除を差し引いた額が、課税額になります。
相続税の基礎控除は、次の計算式で算出できます。
たとえば、法定相続人が4人いる場合は、3000万+(600万×4人)となり、5400万円が基礎控除額であることがわかります。
このケースで死亡保険金は9000万円であり、相続財産は死亡保険金のみの場合では、どのくらい相続税が控除されるのかを考えてみます。
まず、死亡保険金の非課税金額を算出します。
500万×4人=2000万円
生命保険金の課税対象額は、次の通り算出できます。
9000万円-2000万円=7000万円
7000万円が課税対象となりますが、基礎控除額分は相続税を免除されますので、その分を差し引いた額である1600万円が、実際に相続税の対象となります。
7000万円-5400万円=1600万円
4、死亡保険金が相続税対策になる理由とメリット
●死亡保険金は非課税枠がある
繰り返しになりますが、死亡保険金には非課税枠があります。さらに、相続税の基礎控除もありますので、この二つを上手に利用することで節税対策になるでしょう。
●相続税を死亡保険金でまかなう
相続財産が、金融資産ではなく不動産や法人などがメインの場合、現金がなければ相続税が支払えず財産を処分しなければならない可能性があります。しかし、相続税に相当する額の死亡保険金をかけておけば、財産を処分することなく相続税を納税することが可能になります。
●遺産分割協議でもめずに済む
節税とは異なりますが、死亡保険金は遺産分割協議でのトラブルを防ぐことが期待できます。
たとえば、自宅や会社を長男だけに相続させる場合、他の子どもたちには、現金で分割しなければなりません。会社や自宅に高い価値がある場合は、その費用を捻出できず、相続のために手放さなければならない可能性があります。また資産を守るために、他の子どもたちが、相続放棄をしなければならないとすると、著しく不公平な状況が発生します。
しかし、生命保険に加入しておき、死亡保険金の受取人をほかの子どもたちに指定しておけば、不公平を解消できます。
●預貯金よりも取得のための手続きがスムーズである
死亡保険金は、遺産分割協議で分割割合を話し合う必要はなく、原則、事務的にあらかじめ指定しておいた受取人が受け取ることができます。
預貯金は遺産分割協議の対象となるため、遺産分割協議が整うまで一部の金額しか金融機関から引き出すことができません。死亡保険金は、預貯金に比べ、死後の取得の手続きをスムーズに行うことができます。
5、相続時に確定申告は必要?
相続税は毎年3月に行われる確定申告ではなく、「死亡してから10か月以内」に相続税の申告を行わなければなりません。ただし、非課税枠や基礎控除を超えて、課税される場合のみ申告が必要です。生命保険などでうまく調整して課税されないのであれば残された家族は、相続税の申告を行わずに済みます。
亡くなられた方以外の方が保険料を支払っていた場合は、所得税や贈与税が課税されますので、相続税の申告ではなく確定申告が必要です。確定申告の期間中に、忘れずに行う必要があります。
6、まとめ
死亡保険金は、受取人や保険料の負担者によって相続税や所得税、贈与税が課税されます。ただし、「みなし相続財産」に該当する場合は、非課税枠とともに相続税の基礎控除も適用できますので、支払う税金を大幅に抑えることができます。
また自宅や法人などの資産がある場合は、生命保険に加入しておくことで、相続時のトラブル防止になることが期待できます。相続税の課税額を抑え、円滑に相続を進めるためには生命保険の加入は非常に有効と言えるでしょう。
自身の死後、家族が困らないためにも、生前にしっかりと遺産対策をしておくことが何よりも大切です。相続の準備を始めたいと考えている方は、ひとりで悩まず弁護士などの専門家に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 柏オフィスでは、相続にまつわる相談を受け付けています。
相続問題の対応実績を豊富にもつ弁護士が、しっかりとお話を伺い、状況に応じたアドバイスを行います。また、税理士が同席することも可能です。さまざまなケースに対応できる体制を整えておりますので、ぜひご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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