児童買春で逮捕されたらどうなる? 逮捕後の対応方法を弁護士が解説
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柏オフィスがある柏市を管轄としている千葉地方裁判所で、2018年8月、児童買春・ポルノ禁止法違反と千葉県青少年健全育成条例違反の罪を問われていた男に、懲役3年、執行猶予4年の有罪判決が言い渡されました。男は、学生の頃からSNSなどを通じて複数の少女と知り合い、18歳未満であると知りながら、現金を渡してみだらな行為をしていたと報道されています。
未成年者と性的な接触があった場合、児童買春に問われ、このように非常に重い刑罰が科される可能性があります。インターネットやスマートフォンを使用する未成年者が増えている状況下で、安易にSNSや出会い系サイトを通じた交流を行っていると、思わぬ事態となるリスクがあるかもしれません。
どのような行為が児童買春や児童ポルノにあたるのか、またその刑罰、万が一逮捕された場合の対処などを柏オフィスの弁護士が解説します。
1、児童買春で逮捕されたときに問われる罪は?
法律上での「児童」とは、18歳未満の未成年者を指します。
かつて日本では、児童との性行為は児童福祉法や淫行条例において処罰されていましたが、児童買春が「年少者の健全な性道徳を破壊する」という観点から、1999年に「児童買春、児童ポルノに係る行為等の規制及び処罰及び児童の保護等に関する法律」(児童買春・児童ポルノ禁止法)が成立・施行されました。
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(1)児童買春とは
児童買春・児童ポルノ禁止法第2条第2項において、児童買春とは、「児童、周旋者または保護者もしくは支配者に対償を供与し、またはその供与の約束をして、当該児童に対し、性交等(性交もしくは性交類似行為をし、または自己の性的好奇心を満たす目的で、児童の性器等(性器、肛門又は乳首)を触り、もしくは児童に自己の性器等を触らせること)をすること」と定義しています。
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(2)児童買春罪
児童買春を行った場合、すなわち、対償を支払って18歳未満の児童と性行為を行った場合、児童買春・児童ポルノ禁止法における児童買春罪として「5年以下の懲役」もしくは「300万円以下の罰金」またはその両方を科せられます。
これは、仕事中にうっかり他人を死傷させてしまった方が問われる「業務上過失傷害罪(刑法211条1項。5年以下の懲役もしくは禁錮または100万円以下の罰金)」よりも重い刑罰が処されるということになります。 -
(3)児童ポルノ提供・製造罪
児童のわいせつな姿態を撮影する行為により、児童ポルノ提供・製造罪に問われるケースもあります。児童のわいせつな姿態とは、児童の性交渉やそれに類似する行為、児童の性器または性器を強調した下着姿、裸、半裸などを指します。
また、児童ポルノ提供罪とは、児童ポルノを他人に提供した際に問われる罪です。児童ポルノ提供・製造罪は「3年以下の懲役」または「300万円以下の罰金」に処せられます。
また、インターネット上など、不特定多数の人に対してこれらの写真や映像を提供し、あるいは閲覧できるような状況においた場合には、「5年以下の懲役」もしくは「500万円以下の罰金」に処せられ、またはその両方が科せられることがあります。 -
(4)児童ポルノ所持罪
児童ポルノ所持罪とは、児童のわいせつな画像・映像を所持している場合に罰せられる罪です。「1年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」に処せられます。
児童買春の事実はなくとも、児童買春の捜査上で、携帯電話や自宅PCから児童のわいせつ画像が見つかることで、児童ポルノ所持罪に問われるケースもあるでしょう。冒頭の事件でも、男は児童ポルノも所持していたことから、児童買春罪に併せて、児童ポルノ所持罪にも問われました。 -
(5)青少年健全育成条例違反
児童買春や児童ポルノに関係する事件の多くでは、各地方自治体により制定されている「青少年健全育成条例」も適用されます。「青少年」とは小学校就学の始期から18歳に達するまでのものと規定されています。
千葉県青少年健全育成条例では、第20条第1項において、「青少年に対し、威迫し、欺き、または困惑させる等青少年の心身の未成熟に乗じた不当な手段によるほか、単に自己の性的欲望を満足させるための対象として扱っているとしか認められない性行為またはわいせつな行為をしてはならない」という定めがあります。
この条例に違反した場合には、「2年以下の懲役」または「100万円以下の罰金」に処せられます。なお、性行為やわいせつな行為をした相手が「青少年」であれば、罪に問われます。 -
(6)強制わいせつ罪・強制性交等罪
強制わいせつ罪・強制性交等罪は、13歳以上のものに対しては「暴行または脅迫」を用いてわいせつな行為や性交等を行った場合に成立しますが、被害者が13歳未満であった場合には、暴行や脅迫がなくとも(たとえ合意があったとしても)成立します。
具体的に、相手の性器を触る、自分の性器を触らせる、衣服を脱がせる、抱き着くといった、わいせつな行為をした場合には、強制わいせつ罪(刑法176条)として、「6ヶ月以上10年以下の懲役」に処されます。さらに、性交渉まで至った場合には、強制性交等罪(刑法177条)として「5年以上20年以下の懲役」に処されます。
強制わいせつ罪、強制性交等罪ともに罰金刑は設定されておらず、懲役刑のみとなっておいます。非常に重い罪が問われる犯罪といえるでしょう。
2、相手が18歳未満だとわからなかった場合は?
児童買春罪は、2段階の行為によって構成されているのが特徴です。すなわち、児童に対して、まず「対償の供与あるいはその約束を行う」そして「性交等を行う」ことが必要です。また、児童買春罪が成立するためには、対償の供与の時点と、性行為の全体にわたって故意が認められることが必要です。
ですから、対償の約束をした段階で18歳未満であることを知らず、疑う余地もなかった場合には、児童買春罪は成立しません。他方で、「もしかしたら18歳未満かもしれない」と思いながら、対償の約束をして、買春行為に至った場合には、故意があったものとみなされ、児童買春罪が成立します。
ただし、知らなかったという事実を立証するのは容易ではありません。証言を裏付けるための証拠が相当数、必要になります。無実を立証するには、刑事事件の経験豊富な弁護士に依頼することが必須といえるでしょう。
3、児童買春を解決するために
「児童買春がどれほど重大な犯罪であるか」については、その量刑を見れば一目瞭然です。
万が一逮捕された場合は、警察の取り調べで48時間、検察に身柄送致された場合さらに24時間身柄を拘束されます。その間、裁判所から身柄を拘束して取り調べを続ける「勾留(こうりゅう)」が認められれば、最長で、逮捕から23日間も身柄を拘束されます。
そのあいだ、家庭や職場を長期間不在にすることとなります。罪状が周囲の方に知られたとしたら、仕事だけでなく、人間関係にも大きな影響が出ることも考えられます。配偶者がいる場合は、離婚にまで至る可能性もあるでしょう。
児童買春を早期に解決するためには、何ができるのでしょうか。
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(1)示談
児童買春の事実を認めるのであれば、最初にとるべき対応は、すぐにでも示談交渉を行うことです。「示談(じだん)」とは、事件の当事者同士が話し合い、解決を図ることを指します。 双方が示談内容に合意し、被害者が被害届を取り下げる、告訴しないなどの意思を示すならば、捜査機関による捜査や起訴を行う動機が低くなるため、不起訴処分となる可能性が高まります。
しかし、性犯罪である以上、当然ながら被害者の連絡先が加害者に直接開示されることはありません。弁護士が代理人として交渉を行う場合にのみ、捜査機関から弁護士に対して連絡先が開示されることがほとんどです。示談交渉を望むのであれば、すぐに弁護士に依頼しましょう。
示談内容を定めるうえでは、児童買春の態様や、被害者本人と保護者の処罰感情が大きく影響します。児童買春における示談の場合、交渉は被害者の保護者と行います。
示談においては、加害者は被害者に対して謝罪し、賠償を行います。一方、被害者は加害者を許し処罰を望まないという意味の「宥恕(ゆうじょ)の意思」を示すことが主眼となります。わが子が児童買春の被害にあった保護者が「処罰を望まない」という意思を示すことは非常に難しいのが現実です。
しかし、示談が成立しなかった場合でも、示談による解決を目指し働きかけた事実があります。弁護士による弁護活動によって、警察や検察に働きかけることができるため、減刑や執行猶予の判断材料になりえます。結果、示談交渉自体は無駄にはなりません。
また、被害者が補償を受け取らなかった場合、加害者側が反省を示すため、贖罪(しょくざい)寄付をするという選択肢もあります。いずれも、執行猶予の有無などの判断に影響する可能性はありますので、実刑判決を避けるためには一定の効果はあるといえるでしょう。
しかし、複数の被害者がいるなど悪質な場合は、示談が成立しても起訴される可能性はあることは留意しておくべきでしょう。 -
(2)自首
捜査機関が犯罪を認知する前であれば、自首することも選択肢のひとつです。自首によって、自ら罪を告白することで、反省と贖罪の意思があるとみなされ、処分が軽くなる可能性が高まります。
ただし、すでに捜査中の事件で容疑者が見つかっていないという状態であれば、自首は成立しないので、注意が必要です。
18歳未満であるかどうかあいまいだった場合など、自首をすべきかどうか迷っている場合は、まずは弁護士に相談してみるとよいでしょう。弁護士には守秘義務がありますので、自首する、しないに関わらず、相談内容を捜査機関などに漏らすことはありません。
心当たりをすべて包み隠さず話せば、弁護士が過去の事例などを勘案したうえで、とるべき策を提案するでしょう。
4、まとめ
児童買春行為は、重大な犯罪です。自分自身や家族だけの力で解決できるようなことではありません。すぐに弁護士に相談し、解決の糸口を探りましょう。逮捕に至った場合、相手が18歳未満であることを本当に知らなかった場合には、それを裏付ける証拠があれば、不起訴処分となる可能性もありえます。
一方、故意に児童買春を行ってしまった場合であっても、被害者に対し十分な補償を行い、誠意をもって反省の意を伝えることができれば、示談成立も不可能ではありません。いずれにしても、弁護士に依頼するタイミングが早ければ早いほど、とる手段は多く、効果的になります。特に、逮捕に至った場合は72時間以内にどう動くかで、長期の身柄拘束を避けられるかどうかの命運が分かれてしまうともいえます。手遅れになってしまう前に、ベリーベスト法律事務所
柏オフィスへご相談ください。
また、逮捕にいたらなかった場合でも、このような行為を繰り返さないことが何よりも大事です。必要に応じて専門機関のカウンセリングを受けるなどの再犯防止策をとることを強くおすすめします。弁護士に相談すれば、相談機関へ紹介できることもあるでしょう。
刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士が、あなたの今後の人生にとって最善の結果となるよう、適切な対応を迅速に行います。
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