刑事事件の身元引受人になるための条件や知っておきたいこと

2019年09月26日
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刑事事件の身元引受人になるための条件や知っておきたいこと

千葉県警の統計によると、平成30年中の刑法犯の認知件数は千葉県全体では4万6698件で柏市においては3200件とされています。
刑法犯として逮捕された場合には、身元引受人を親族などに引き受けてもらって釈放や保釈などが許されることがあります。
しかし、ある日突然警察から電話があり、あまり親しくない間柄の人のために「身元引受人」になってほしいと頼まれた場合にはどうすればよいのでしょうか。
「身元引受人になるためにはどのような条件があるのか」「身元引受人になったらどのような責任を負わなければならないのか」「身元引受人になることを断ることもできるのか」などと、さまざまな疑問が生じることでしょう。
本コラムでは、身元引受人になる条件や責任などついて、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説していきます。

1、刑事事件における身元引受人とは?

身元引受人とは、一般的には対象となる人の身元を引き受けて責任を負う人のことをいいます。
身元引受人は、有料老人ホームなどへの入居の際などに必要とされる場合があります。このような身元引受人は、一般的には入居者とともに連帯して利用料など支払ったり亡き後の身柄の引き取りを行うなどの責任を負います。
一方、本コラムでご説明する刑事事件における身元引受人は、事件の被疑者や被告人の釈放後の身柄を引き受けてその生活や行動を監督する役割を担う人のことをいいます。

2、身元引受人になるにはどのような条件がある?

身元引受人になるには、どのような条件があるのでしょうか。
結論からいえば、身元引受人の条件について法律の規定はありません。そのため親族でなくても、身元引受人になることは可能です。しかし、身元引受人は、被疑者の生活や行動を監督できる人物であることが求められます。

  1. (1)親族

    もっとも多いケースは、親や配偶者や兄弟などの親族が身元引受人になるケースです。
    親族は同居している場合も多く、釈放後の生活や行動を適切に監督しやすい立場にあります。

  2. (2)会社の上司や同僚など

    「一人暮らしで実家も遠方にある」「身元引受人になってくれそうな親戚がいない」などという場合には、会社の上司や同僚が頼まれて身元引受人になるケースもあります。

  3. (3)友人など

    「ルームシェアをしている友人がいる」「恋人がいる」などといった場合には、友人や恋人も身元引受人としてふさわしいと判断されるケースもあります。

3、身元引受人の具体的な役割とは? 役割を果たせなかったらどうなる?

身元引受人となった場合には、具体的にはどのような役割を期待されるのでしょうか。法律で定義されているわけではありませんが、身元引受人の具体的な役割としては主に次のようなものが挙げられます。

  1. (1)証拠隠滅や逃亡を防ぐように監督する

    被疑者が逮捕後勾留されるのは、証拠隠滅や逃亡のおそれなどがある場合です。
    しかし、身元引受人がいる場合には、このようなリスクが生じにくいと判断され釈放される可能性が高くなります。そのため身元引受人には、証拠隠滅や逃亡を防ぐように監督するという役割が期待されているといえます。

  2. (2)捜査機関への出頭や裁判所への出廷について監督する

    警察や検察の取り調べ要請に対して被疑者が出頭するように監督したり、公判期日に被告人が裁判所に出廷するように監督したりすることも身元引受人に期待される具体的な役割になります。このような役割を果たせると期待できるからこそ、捜査機関などは身元引受人を付けた上で釈放し、在宅事件として認めることができるといえます。

  3. (3)役割を果たせなかったらどうなる? 

    身元引受人をお願いされて受けるかどうか迷っている場合には、役割を果たせなかったときの責任について気になるものだと思います。
    身元引受人になった場合でも「被疑者が逃亡してしまった」「証拠隠滅を図ろうとした」「警察の出頭要請にも応じようとしない」と結果として監督の役割を果たせない場合もあります。
    しかし、身元引受人が監督の役割を果たせなかった場合でも、刑罰などによって身元引受人の責任は問われることはありません。そのため身元引受人を引き受ける場合でも、その点については心配不要です。
    ただし、監督の役割を果たせなかったことが明らかになる以上、当然のことながら再度身元引受人となることは難しくなります。

4、身元引受人が必要となるケースとは? 逮捕後の流れとともに解説

逮捕後に身元引受人が必要となる主なケースを流れにそってご説明していきます。

  1. (1)逮捕直後

    逮捕された場合には、通常被疑者は警察署で取り調べを受けて警察官は48時間以内に事件を検察官に送致するかどうかを判断します。
    しかし、たとえば万引きなどの犯行の事実が軽微であらかじめ検察官が指定した「微罪」の条件に当てはまる場合には、検察官に送致されることなく釈放される「微罪処分」になることがあります。「微罪処分」になれば、前科がつくことも刑事罰が科されることもなく日常の生活に戻れることになります。
    この「微罪」の条件にはさまざまな条件がありますが、初犯であることや被害者が加害者に罰則を望んでいないことなどのほかに「身元引受人がいること」が要求される場合があります。

  2. (2)検察官送致・勾留

    検察官に送致された場合、通常検察官による取り調べが行われます。検察官は、送致後24時間以内に引き続き身柄を拘束する「勾留」を裁判官に請求するかどうかを判断します。
    「勾留」が決定された場合には原則として10日間勾留されることになり、勾留延長が認められると勾留期間は最大20日と長期間にわたることになります。
    そのため職場などへの影響を最小限に抑えるためにも、「勾留」を阻止して早期釈放を目指すことは重要です。
    「勾留」は、被疑者が住所不定であったり逃亡や証拠隠滅のおそれがある場合に決定されます。そのため身元引受人がいれば、逃亡や証拠隠滅のリスクが少ないと判断され、勾留されず早期に釈放される可能性が高まります。
    この場合、釈放後は在宅事件として検察から呼び出しを受けて取り調べを受けることになります。

  3. (3)起訴されたら刑事裁判が開かれる

    検察官が事件を刑事裁判で裁く必要がないと判断した場合には、不起訴となり釈放されます。しかし、検察官が刑事裁判で裁く必要があると判断した場合には、起訴されることになります。
    起訴された場合には、そのまま身柄を拘束される「被告人勾留」が行われることも少なくありません。しかし「保釈」が認められた場合には、一定の金額を保釈金として裁判所に預ければ身柄の拘束から解放されます。
    この「保釈」を認められるための条件として、身元引受人が必要になるケースもあります。
    また刑事裁判の量刑についても、身元引受人の有無が影響することもあります。
    刑事裁判で有罪になった場合には、実際に刑務所で懲役刑などに服する実刑判決を受ける場合と直ちには刑務所に入らない執行猶予付き判決を受ける可能性があります。
    身元引受人がいることによって、執行猶予付き判決が得られる可能性も高くなります。

  4. (4)刑に服する

    刑事裁判で実刑判決を受けて刑務所で懲役刑や禁錮刑に服することになった場合でも、確定した受刑期間が満了する前に釈放され、社会の中で残りの期間を過ごすことを許可される制度があります。
    この制度を「仮釈放」といいます。「仮釈放」は、受刑者が犯した罪を十分に反省していたり、再犯の恐れがないなどと判断される場合に認められるものです。
    また、受刑者の出所後の生活や行動を監督する身元引受人がいるかどうかも「仮釈放」の許可の有無に重要な影響を与えます。

5、身元引受人を断ったり途中で降りることもできる?

身元引受人をお願いされたとしても、「日頃から被疑者との関係が悪い」「とても監督できる状況にない」「よく知らない間柄なので引き受けるのが不安だ」などといった事情がある場合もあるでしょう。
身元引受人を頼まれた場合には、引き受けることも断ることも自由にできます。
「親だから」「たった一人の身内だから」といって、必ずしも引き受けなければならないわけではありません。
また、身元引受人を引き受けていたものの以後引き受けられないといった場合には、途中で降りることも可能です。

6、弁護士に相談したほうが良い?

弁護士は、逮捕後から被疑者に面会して取り調べでの対応をアドバイスするほか、勾留阻止に向けた弁護活動などを行うことができます。身元引受人を頼まれた場合などには、まずは初回無料の相談などを利用して弁護士に相談してみるとよいでしょう。

7、まとめ

本コラムでは、身元引受人に関する疑問を解決するためにその条件や責任などの概要について解説していきました。
ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士は、身元引受人に関するご相談を含めて刑事事件に関するご相談をお受けしています。
迅速に最善の結果につながるように尽力いたしますので、ぜひご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています