露出行為は犯罪! 問われる罪と逮捕後の流れを弁護士が解説
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平成29年2月、電車内で陰部を露出していたとして、千葉県警柏署の巡査が公然わいせつ罪で書類送検されました。その後、一審では罰金刑が言い渡されたものの、故意ではなかったとして上告。東京高裁で行われた二審で故意ではないことが認められ、無罪となった事件がありました。
露出行為は、暴力とは異なり、物理的に身体を害するような罪ではありません。しかし、見たくもないものを無理やり見せられるという意味では、被害者の精神を傷つける犯罪だといえるでしょう。しかし一方で、冒頭で紹介した事件のように、冤罪が起こる可能性は否めません。
今回では、露出で逮捕されていた場合に問われる罪や、逮捕後の流れ、被疑者となった方やその家族がすべき対応などを解説します。
1、露出行為によって問われる罪の種類
「露出罪」のような明確な犯罪はありません。露出行為の罪が問われるケースでは、周囲の状況や露出した部位などによって、問われる罪が異なります。
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(1)卑わいな露出行為は、迷惑防止条例に該当
迷惑防止条例は、国によって定められているものではなく、各自治体によって設けられているルールです。そのため、都道府県ごとに多少の違いがあります。千葉県における迷惑防止条例の正式名称は、「公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例」です。
迷惑防止条例違反としてもっとも有名な犯罪は、痴漢行為や盗撮行為が挙げられます。これらの行為も状況や実際の行為によっては他の犯罪として処罰されることがありますが、迷惑防止条例違反として裁かれることも珍しくはありません。
なお、露出行為が千葉県の迷惑防止条例に該当する根拠は、痴漢行為と同様の条文が適用されます。内容は以下のとおりです。第3条第2項
「何人も、女子に対し、公共の場所又は公共の乗物において、女子を著しくしゆう恥させ、又は女子に不安を覚えさせるような卑わいな言動をしてはならない。男子に対するこれらの行為も、同様とする。」具体的な部位については記載されていませんが、公共の場所や公共の乗り物内で卑わいな行動をすることによって、罪に問われるということになります。
当然ながら、迷惑防止条例に違反したとみなされれば、逮捕されることになります。有罪となれば、「6ヶ月以下の懲役又は50万円以下の罰金」の処罰を受けることになります。そして、過去にも迷惑防止条例違反に該当する露出を繰り返していて、常習と認められれば「1年以下の懲役又は100万円以下の罰金」が処されることになります。 -
(2)尻や太ももなどの露出は軽犯罪法違反に該当
露出行為は、軽犯罪法によって罪が問われるケースもあります。具体的には、軽犯罪法第1条第20号の「公衆に嫌悪感を与えるようなやり方で臀部や太もも等の身体の一部を露出した場合」が該当します。
つまり、周囲の人が嫌悪するような形で尻や太ももなどを露出すると、軽犯罪法違反に問われる可能性があるということです。しかし、悪質度合いや状況によっても判断が異なります。露出した場所が尻だけだとしても、必ずしも軽犯罪法違反になるとは限りません。
なお、軽犯罪法の法定刑は「拘留または科料」と定められています。刑事訴訟法の取り決めにより、基本的に警察に逮捕され、身柄の拘束を受けることはありません。しかし、罪を犯したと疑われる「被疑者」自身の住所が不定だったり、出頭に応じなかったりするケースでは、逮捕される可能性があるでしょう。 -
(3)性器の露出は公然わいせつ罪に該当
もっともニュースなどで見かけることが多い罪名が「公然わいせつ罪」でしょう。
公然わいせつ罪は、刑法174条に定められた犯罪です。条文では、「公然とわいせつな行為をした者」と規定されています。迷惑防止法違反との差がわかりづらく、判断が難しいところですが、たとえば、公衆の面前で性器を露出したり、性行為をしたりしたケースが、公然わいせつ罪として検挙されています。
公然わいせつ罪の規定としては、「公然」と「わいせつな行為」を行ったことに対する罪です。冒頭の事件で故意かどうかが問われているとおり、自身がわいせつな行為をしていると認識している状態で露出行為をしたかどうかが問題となります。
なお、公然わいせつ罪を取り締まることによって得られる利益は、「性的な秩序」や「健全な性的風俗」であるとされています。よって、次のような行為でも逮捕される可能性があるでしょう。- スーパーの駐車場内に停車させた自家用車内で自慰をした
- 公園や公道で下半身を見せた
- ライブなどで盛り上がり、全裸になった
- 自慰や全裸となる様子を、インターネット上でリアルタイム配信した
公然わいせつの罪で有罪となると、「6月以下の懲役もしくは30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料」に処されることになります。
「懲役(ちょうえき)」は、刑務所に服役して労働を科されることで自由を拘束する自由刑です。「拘留(こうりゅう)」も身柄を拘束される自由刑ですが、労働は科されません。「罰金」と「科料(かりょう)」は、お金を払うことで罪を償う財産刑である点は共通ですが、科料は1万円未満の少額な罰金となります。
いずれも、前科がついてしまう点に変わりはありません。
2、露出で逮捕された後の流れと勾留期間
もし、露出の疑いで逮捕されてしまったときは、どのぐらいの期間、身柄を拘束されてしまうのか、ご存じでしょうか。基本的に、逮捕された場合は、刑事訴訟法にのっとり、どのような犯罪でも共通のプロセスで捜査が進められることになります。
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(1)逮捕から勾留まで
露出を疑われる被疑者となり、逮捕された場合、まずは取り調べを受けることになります。警察は、逮捕後48時間以内に身柄を検察に送致するかどうかを決めなければなりません。
もし送致されない場合は「微罪処分」としてそのまま釈放になります。前科がつくこともありません。
事件だけを送致されたときは、在宅事件扱いとして、自宅に帰ることができます。ただし、無罪放免というわけではなく、引き続き捜査は行われることになります。
一方、事件だけでなく身柄もともに検察に送られることが決まれば、さらに検察の捜査を受け、24時間以内にさらに身柄を拘束し続ける「勾留(こうりゅう)」を行うか否かの決定が下されることになります。検察の判断で、勾留不要という形になれば、やはり「在宅事件扱い」になるため、自宅に帰ることができます。
在宅事件扱いとなったときは、検察が起訴か不起訴を決めるまでは、呼び出しに応じながら捜査に協力する必要があります。 -
(2)勾留期間はどれくらい?
検察によって「勾留」が決定してしまうと、最大20日間にわたる勾留期間が設けられます。勾留中はもちろん外に出ることができませんので、外から何かを持ち込む際には、「接見」を通して持ってきてもらうことになるでしょう。
検察は、勾留中に起訴か不起訴を決めなければなりません。もし、起訴となれば、刑事裁判にかけられ、罪を問われることになります。
起訴にも種類があり、「公判請求」のときは、公開された裁判で裁かれることになるため、裁判が終わるまでは身柄を拘束され続けることになります。「略式請求」となったときは、書類のみの手続きで処罰が決まるため、身柄の拘束は解かれることになります。
いずれにせよ、逮捕から勾留が決まるまでの72時間は、家族とも連絡が取れなくなります。面会もできません。被疑者が外部の人間と接触できる時間は、唯一弁護士との接見のときだけとなります。
また、勾留が決まってしまうと、起訴が決まるまでだけでも最大23日間も身柄を拘束されることになります。留置場や拘置所で生活することになり、当然仕事や学校にも行けません。日常に支障が出る可能性が高いものとなります。
3、弁護士に依頼することで受けられる弁護活動
弁護士に依頼すると、「早期に身柄解放を望める」、「起訴を回避して、前科がつかないようにする」……など記述を読んだことがあるかもしれません。なぜ、弁護士に依頼すると、大きなメリットを得られるのか、ご存じでしょうか。
ここでは、弁護士に相談した際に受けられる弁護活動について解説します。
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(1)罪を認めた場合
被疑者が罪を認めるケースでは、将来に受けるだろう影響を顧みて、まずは、早期釈放と、起訴の回避を目指します。万が一、起訴されてしまったときは、いかに刑を軽くするかが焦点になるでしょう。
刑事事件の対応経験が豊富な弁護士は、次のような対応を行います。
●被害者との示談交渉を行う
明確な被害者が存在する場合、示談が成立し、被害者から「宥恕(ゆうじょ)文言」を得ているかどうかが重要視されます。「宥恕(ゆうじょ)文言」とは、「許している」、「罪を与えたいわけではない」などの意思表示をしてもらうことです。
示談交渉は、事件の当事者同士で話し合いを行い、解決を図ろうとするものです。しかし、露出行為は性犯罪です。そもそも、加害者や加害者の家族が被害者と交渉することは大変難しいと考えておいたほうがよいでしょう。
刑事事件における示談交渉は、弁護士に依頼することでスムーズに進むことが多々あります。もし、相手が示談を拒んだ場合も、その旨を警察や検察にも連絡するなどの弁護活動を行うため、無駄にはなりません。
●被疑者に反省や適切な行動を取るよう促す
露出行為によって逮捕された場合、被疑者に反省を促し、現場に近づかないように促すことも弁護士の仕事のひとつです。被疑者がしっかりと反省の色を見せること、そして現場や被害者に近づかないことを約束し、実行することは、起訴を回避する可能性を高めます。 -
(2)身に覚えがないのに逮捕された場合
冒頭の事件のように、身に覚えがないのに逮捕されてしまうケースもあるかもしれません。その場合には無罪を主張することになります。このようなときも、弁護士は全力で被疑者の味方となり、次のような行動をもって、身の潔白を証明できるよう弁護活動を行います。
●捜査機関のプレッシャーに負けないようにサポート
逮捕されるということは、捜査機関はそれなりの確証を得ているケースが圧倒的多数です。警察に逮捕された際は、家族とも連絡が取れなくなり、孤独な環境に身を置かれます。早く帰りたいがゆえに、つい、やってもいないことを「やった」と発言してしまうこともあるでしょう。しかし、その一言によって、疑いを晴らすことが難しくなる原因となってしまう可能性があるのです。
無実の罪によって逮捕されそうなときは、事前に弁護士に依頼しておくことで、そういったプレッシャーに負けないよう、バックアップします。基本的に逮捕後72時間ものあいだ、弁護士以外は接見できません。弁護士が接見を通じて、どのような対処をすればよいのかなどのアドバイスを行います。その間に味方の存在を認識できるか否かは大きな違いが生じることでしょう。
●場合によっては証拠を覆してくれることも
依頼を受けた弁護士は、被害者の供述の信用性を調査することもできます。人間の認識というのは常に不確かな部分がありますので、供述の信用性を再度調査するのです。事実と異なる証言があったことが明確になれば、無実の罪であることも明らかにできるでしょう。
4、まとめ
露出行為をした場合、程度や悪質性によって処罰されるべき法的根拠が異なります。露出行為をしないようにするのはもちろんですが、もし衝動的に行ってしまった場合は早々に弁護士に相談することをおすすめします。
逮捕されてしまう可能性がある場合、逮捕されるのが先か、親身になって対応する弁護士を見つけて依頼できるのが先か……というスピード勝負になる面があります。何よりも、長期にわたる身柄拘束を回避するためには、逮捕後72時間にどのような対応をするかによって、明暗が分かれることになります。
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