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ハトの餌やりは違法? 損害賠償が請求できる可能性やトラブルの相談先

2021年04月26日
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ハトの餌やりは違法? 損害賠償が請求できる可能性やトラブルの相談先

平和の象徴として知られているハト(鳩)は、公園などの憩いの場でも見かけることの多い身近な動物です。ところが、近年ではベランダなどでハトが勝手に巣を作る、ふん尿によって住宅の屋根・壁などが汚染されるといった被害が増加しています。
市民による餌やりや生ゴミをあさるなどした結果、都市部でハトが激増しており、ハト公害という用語も広く認知されるようになりました。

柏市のホームページでは「よくあるご質問」として、ハトによる被害への方針が示されていますが、柏市による駆除は実施していないため、個人での対策を勧めているのみです。実際にハトによる被害を受けている方にとっては根本的な解決策とはいえず、対処に困っている方も多いでしょう。

このコラムでは、ハトに関するトラブルを引き起こす要因のひとつとなっている「ハトの餌やり」への対処法について、柏オフィスの弁護士が解説します。

1、ハトの餌やりは違法?

従来の感覚でいえば、ハトの餌やりが特に問題になると考えている人は少ないかもしれません。しかし、ハトは1年に5回程度の産卵を行い、雑食で強い帰巣本能を持つ鳥です。人間から栄養価の高い餌を得ることで繁殖力が増したハトは、自然環境から市街地へと生活の場を移して居着いてしまいます。

ハトが持つ性質や現状でも多発している被害の状況をみると、ハトの増加に影響する餌やりが問題になるのも当然だといえるでしょう。

  1. (1)動物愛護法との関係

    動物への無責任な餌やり行為は「動物の愛護及び管理に関する法律(通称:動物愛護法)」に違反する可能性があるのでしょうか。

    令和2年6月に施行された「改正動物愛護法」の第25条では、動物の不適正飼養によって生活環境が損なわれていると認められる場合に、都道府県知事による立ち入り検査・指導・勧告・命令が実施できるようになりました。
    原因者が命令に違反した場合は、50万円以下の罰金が科せられます。

    改正前にも不適正飼養に関する規制は存在していましたが、対象は「多数の動物の飼養」に限定されており、さらに勧告に加えて「任意の立ち入り検査」が認められているのみでした。令和2年の改正で、動物の数の制限はなくなり強制の立ち入り検査も可能になっています。

    動物愛護法における対象動物は「自然環境の下で自活する純粋な野生動物を除いた動物」とされており、一見すると野生のハトは対象外と考えられます。しかし、都市部において餌付けされているハトなどに関しては、一般的な野生動物とは異なり同法に該当するとして、対策を講じる自治体も存在しています

    つまり、たとえ対象が1羽であっても、ハトへの餌やり行為で周囲の生活環境が損なわれている場合は、不適正飼養として動物愛護法の処罰対象となる可能性があるといえます。

  2. (2)自治体の条例との関係

    自治体によっては、ハトを含めた野鳥や野生動物に対する餌やり行為を禁止する独自の条例が定められています。

    たとえば、世田谷区では平成30年4月に「世田谷区環境美化等に関する条例」が施行され、ハトを含めた野鳥への餌やり行為を区内全域において禁止しています。

    また、大阪市では令和元年12月に「大阪市廃棄物の減量推進及び適正処理並びに生活環境の清潔保持に関する条例」が改正されました。
    動物への餌やり行為そのものは規制対象外ですが、同法第26条4項において、給餌者に対して残った餌や、餌に集まった動物のふん尿などについて清掃の義務を課しています。

    なお、柏市では「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」に基づき、ハトの捕獲は行っておらず、ハトへの餌やりを規制する条例も現時点では存在していません。
    柏市のホームページでも、被害を防ぐためにはハトを近づかせない、巣を作らせないことが必要として、ネットによる進入防止やベランダなどの整理、こまめな清掃を勧めているにとどまります。

2、ハトによる被害・トラブルが減らない理由

ハトによる被害やトラブルは、法律による規制を設けても依然として減らない状況が続いています。被害・トラブルが減らない理由としては、法律による規制の難しさと、立証の難しさという2つのハードルが関係しているようです。

  1. (1)法律による規制が難しい

    前述したように、ハト被害に関する法律の整備はいまだ発展途上の段階にあります。令和2年に改正動物愛護法が施行されましたが、依然として強い規制が敷かれているとまではいえません。また、ハトへの餌やり行為を条例によって規制している自治体も限られており、対策が手薄な地域も数多く存在します。

    さらに、ハトは「鳥獣の保護及び管理並びに狩猟の適正化に関する法律」によって保護を受けるため、無許可の捕獲や卵の採取が禁じられています
    迷惑に感じているからといって個人で駆除をしていると違法になってしまうおそれがあるという点も、被害・トラブルの解消に向けて大きな障壁となっているのです。

  2. (2)立証が難しい

    ハト被害を拡大させないためには、人間による餌やりを止めることが大切です。しかし、餌やり行為の当事者に対して行政指導や刑事処分を加えるためには、実際に餌やり行為をしていたという事実の立証が必要です。

    餌やり行為を立証するには行為者の行動を監視する必要がありますが、行政機関や捜査機関が積極的に対応してくれる可能性は低いでしょう。また、餌やりによってハトによる被害が増加していると断定するには、因果関係も立証する必要があるので、詳しい調査も欠かせません。しかし、それらを個人で行うのは簡単なことではないでしょう。

    たとえ法律が整備されても、その法律を適用させるための立証ハードルが高いため、積極的な運用が期待できないという現実もあるのです。

3、ハトへの餌やりトラブルの相談先

近隣の住人がハトに餌を与えていることに気づいた、ハトによる被害が続いているなどのお困りごとは、誰に相談すればよいのでしょうか。

  1. (1)自治体の相談窓口

    まず相談すべきは、お住まいの自治体が設けている相談窓口です。対応するのは環境に関する部署ですが、まずは全般的な相談窓口への連絡でも問題はないでしょう。個人が注意をすると近隣同士のトラブルに発展するおそれがあるため、自治体が間にはいることで穏便な解決が期待できます。

    柏市では、市役所本庁舎内の環境部環境政策課が公害苦情相談を受け付けているようです。
    来庁相談のほか、電話やメールによる相談も可能としているので、都合のよい方法で相談してみましょう。

  2. (2)地域を管轄する警察

    餌やり行為がエスカレートし、嫌がらせなどに発展しているような状況では、刑事事件として扱ってほしいと考えるかもしれません。そのような場合、相談先はお住まいの地域を管轄する警察署です。

    刑事事件とまで重大に考えていない場合でも、警察への相談で被害・トラブルが解消できる可能性があります。
    警察は刑事事件の捜査・検挙を受け持つと同時に、犯罪の防止も責務とする機関です。違法行為について注意・警告を加えてことも可能なので、自治体からの注意では効果がみられなければ警察からの注意も検討してみましょう。

  3. (3)ハト駆除の専門業者

    ハトが自宅のベランダや軒先に巣を作ってしまいふん尿で汚染されている、羽音や鳴き声などの騒音に悩まされているといった状況があれば、駆除を検討する必要があります。ところが、鳥獣保護法による規制があるため、無許可の個人では駆除行為が違法となってしまいます。

    ハトによる被害を物理的に解消するためには、自治体の許可を受けた専門業者の力を借りることになるでしょう。

4、ハト被害で損害賠償請求は可能か?

餌やり行為によってハトの被害が発生した場合は、餌やり行為の当事者に対して損害賠償を請求することはできるのでしょうか。

  1. (1)被害の状況次第では損害賠償請求も可能

    相手の不法行為によって生じた損害については、賠償請求が可能です。
    そのため、無責任なハトへの餌やり行為によって、次のような損害が生じた場合は損害賠償を請求できる可能性があります。

    • ふん尿や羽毛によってベランダや屋根・外壁などが汚染され、修繕が必要になった
    • ハトを駆除するために費用を負担して駆除業者を利用した
    • 羽音や鳴き声などの騒音で健康を害した
    • ハト被害によって精神的苦痛を受けた


    基本的には、まずは当事者同士の交渉で解決を図ることになりますが、無責任に餌やりを続けるような状況であれば、話し合いを進めることは難しいかもしれません。さらなるトラブルに発展する可能性もあるため、弁護士への相談・依頼をおすすめします

  2. (2)ハト被害で損害賠償請求が認められた実例

    では、実際に損害賠償請求が認められた事例について確認していきましょう。

    【東京地裁 平成7年11月21日/建物明渡等請求事件】
    この事例は、分譲マンションの住人によるハトへの餌やりが問題となったものです。
    最初はベランダに餌箱を設置していただけでしたが、その後はベランダの窓を開放して室内でも餌やりをするなどし、飛来するハトの数は50羽を超えていたそうです。周囲はふん尿・羽毛・死骸が散乱して汚染や悪臭、ダニの発生のほか、羽音や繁殖期の鳴き声などによって平穏な生活が害される状況でした。
    さらに、不動産業者の口から「物件の価格が下落した一因はハト被害である」との発言も飛び出しており、管理組合や理事会は再三にわたって餌やりの中止を申し入れましたが、被告人の女性はこれを聞き入れませんでした。

    判決では、実際にハトによる被害が著しいことを認めたうえで、原告側が交渉による解決を目指していた状況も高く評価し、被告人の女性に対する物件からの退去と洗浄工事費用など200万円の支払いが命じられています。

5、まとめ

ハトによる生活環境の汚染は、精神的な苦痛だけでなく重大な健康被害をもたらすおそれがある問題です。たとえ善意であっても無責任に餌を与える行為は違法となるおそれがありますが、個人が注意をすることで住人同士のトラブルに発展してしまうおそれがあります。
ハトによる被害やトラブルが自治体などの各種相談窓口への相談でも解決できない場合は、弁護士への相談・依頼がおすすめです

ベリーベスト法律事務所 柏オフィスは、ハトの餌やり問題など、生活上のトラブル相談に対応しております。相手方への注意・警告や今後の被害を防止するための交渉だけでなく、損害賠償請求の手続きも可能です。
自治体や警察に相談しても被害・トラブルが解決しない場合は、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスへお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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