業務委託契約書に収入印紙が必要なケース|印紙の金額や貼り方を解説
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企業間で業務委託契約を締結することになった場合には、契約内容を明らかにして、後日のトラブルを防止するために、業務委託契約書を作成することが一般的です。業務委託契約書を作成する際には、その内容に応じて収入印紙の貼付が必要になる場合があります。また、契約内容に応じて収入印紙の金額も異なってくるのです。
必要であるのに収入印紙の貼り忘れや金額の不足があった場合には、過怠税のペナルティーが課される可能性もあるため、業務委託契約書と収入印紙との関係を正確に理解しておくことが大切です。
本コラムでお伝えすることは、大きく以下の3つです。
・業務委託契約書に収入印紙が必要となるケース
・収入印紙の金額、業務委託契約書への貼り方
・業務委託契約書に収入印紙を貼り忘れると、脱税になる可能性がある
業務委託契約書の印紙についてお悩みの方へ、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説します。
1、業務委託契約書に収入印紙が必要なケースと金額
まず、業務委託契約書に収入印紙の貼付が必要になる場合や、収入印紙の具体的な金額について、概要を解説します。
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(1)業務委託契約書に収入印紙が必要なケース
収入印紙の貼付が必要な文書は「課税文書」といい、印紙税法によって細かく定められています。
業務委託契約書について収入印紙の貼付が必要であるかどうかは、契約書の実質的な内容によって判断されます。
業務委託契約書が以下の「請負に関する契約書(2号文書)」または「継続的取引の基本となる契約書(7号文書)」のいずれかに該当する場合には、課税文書となるのです。
① 請負に関する契約書(2号文書)
業務委託契約書のうち、請負に関する契約書については、印紙税法の2号文書に該当して、収入印紙の貼付が必要になります。
「請負」とは、「請負人が仕事の完成を約束し、注文者が結果に対して報酬を支払うことを約束する」という契約をいいます。
たとえば、建築工事請負契約、ホームページ制作契約、広告契約などが請負契約の典型例です。
これに対して、仕事の完成義務を負わず、役務の提供そのものに対して対価を支払う契約のことを「委任契約」といいます。
委任契約の場合には、印紙税法の課税文書には該当しません。
なお、「業務委託」という名称は法律で定められているものではなく、法律的には、請負契約又は委任契約のいずれかであることが多いです。
「業務委託」という名称のみからは、課税文書に該当する請負契約であるか否かは判断できませんので、契約の内容から実質的に判断されることとなるのです。
② 継続的取引の基本となる契約書(7号文書)
業務委託契約書のうち、継続的取引の基本となる契約書については、印紙税法の7号文書に該当し、収入印紙の貼付が必要になります。
継続的取引の基本となる契約書とは、以下の5つの要件をすべて満たす契約書のことになります。- 営業者間の契約であること
- 売買、売買の委託、運送、運送取り扱い、請負のいずれかの取引に関する契約であること
- 2つ以上の取引を継続して行うための契約であること
- 2つ以上の取引に共通して適用される条件(目的物の種類、取扱数量、単価、対価の支払い方法、債務不履行の場合の損害賠償方法または再販売価格)を定めていること
- 電気、ガスの供給に関する契約ではないこと
継続的な取引であることが前提となるため、契約期間が3か月以内であり更新の定めもない場合については、7号文書から除かれます。
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(2)収入印紙の金額
業務委託契約書が2号文書に該当するのか、7号文書に該当するのかによって、貼付すべき収入印紙の金額が異なってきます。
① 請負に関する契約書(2号文書)の場合
業務委託契約書が請負に関する契約書(2号文書)に該当する場合、貼付すべき収入印紙の金額は、契約書に記載された契約金額に応じて、以下の金額となります。契約書に記載された契約金額 収入印紙の金額 1万円未満 非課税 1万円100万円以下 200円 100万円を超え200万円以下 400円 200万円を超え300万円以下 1000円 300万円を超え500万円以下 2000円 500万円を超え1000万円以下 1万円 1000万円を超え5000万円以下 2万円 5000万円を超え1億円以下 6万円 1億円を超え5億円以下 10万円 5億円を超え10億円以下 20万円 10億円を超え50億円以下 40万円 50億円を超えるもの 60万円 契約金額の記載のないもの 200円
② 継続的取引の基本となる契約書(7号文書)の場合
業務委託契約書が継続的取引の基本となる契約書(7号文書)に該当する場合、貼付すべき収入印紙の金額は、一律で4000円となります。
2、業務委託契約書への収入印紙の貼り方
以下では、業務委託契約書に収入印紙を貼付する方法を解説します。
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(1)収入印紙を貼る場所
収入印紙を貼る場所については、法律上の決まりはありませんので、どの部分に貼っても問題はありません。
とはいえ、契約書の表題の左側の余白部分に貼るのが一般的になっています。
特にこだわりがなければ、その部分に貼付するとよいでしょう。 -
(2)消印が必要
印紙税法では、収入印紙の再利用を防止する目的から、課税文書に貼付した収入印紙については消印をすることが義務付けられています。
消印をする際には、「文書の作成者、代理人、使用人その他の従業員の印章または署名」によって行うことになっています。したがって、必ずしも文書の作成者全員の消印が必要となるわけではありません。
消印をする際には、契約書と収入印紙の模様部分にまたがるようにはっきりと押すようにしましょう。
3、業務委託契約書の収入印紙について知っておくべきポイント
以下では、業務委託契約書の収入印紙に関するさまざまな要素について解説します。
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(1)収入印紙の費用を負担する人は?
印紙税法では、課税文書を作成した人に対して印紙税の納税義務が課されることになっています。業務委託契約書は、通常は2人(2社)以上の当事者が関与して作成する文書でし。このような場合には、共同して作成した人が連帯して収入印紙の費用を負担することになります。
業務委託契約書を作成する場合には、当事者の数に応じた契約書を作成して、双方で保管することが一般的です。
収入印紙についても、当事者双方が1通ずつ負担するという扱いが一般的です。
収入印紙を貼付する際にはトラブルになることがないように、収入印紙をどちらがどの程度負担するかについては、あらかじめ当事者で話し合って決めておくようにしましょう。 -
(2)電子契約書の場合、収入印紙は必要?
電子契約書とは、電子データに電子署名をすることによって作成する契約書のことをいいます。
電子契約書を利用することによって紙の印刷が不要になり、コストの削減や管理の効率化などにつながることから、電子契約書を利用しているまたは利用を検討している企業は増えています。
このような電子契約書を利用して業務委託契約書を作成する場合には、収入印紙の貼付が不要となります。したがって、収入印紙のコストを削減するという効果も期待できるのです。 -
(3)契約書の内容を変更する覚書にも収入印紙が必要になる場合がある
業務委託契約書を作成した後、当事者間の事情変更などによって、契約内容が一部変更になることがあります。
この場合には、改めて業務委託契約書を作成することもありますが、契約内容の一部のみを変更する場合には、覚書といった書面が作成されることも多いのです。
このような覚書を作成する際、業務委託契約書の変更内容が重要な事項である場合には、覚書にも収入印紙の貼付が必要になることがあります。
覚書に変更前後の金額が記載されている場合には、差額分の収入印紙を貼付すれば足ります。しかし、変更前後の金額が覚書からは明らかではない場合には、変更後の契約金額を基準にした収入印紙を貼付する必要があるのです。
4、業務委託契約書に収入印紙を貼り忘れると脱税になる可能性がある
課税文書については、収入印紙の貼付が義務付けられています。
収入印紙を貼り忘れてしまった場合には、印紙税の納税をしていない状態となるため、過怠税が課されるリスクがあるのです。
「過怠税」とは、課税文書の作成時までに印紙税を正しく納税しなかった場合に課される税金であり、納付しなかった印紙税額の2倍が課されることになります。ただし、調査を受ける前に自主的に印紙税の不納付を申し出た場合には、過怠税の金額が印紙税額の1.1倍に軽減されます。
また、収入印紙に消印をしていなかった場合にも過怠税が課税されて、その場合の金額は本来の収入印紙の金額と同額が課されることになります。
なお、収入印紙を貼り忘れたからといって、業務委託契約書自体が無効になってしまったり、契約書としての証明力が減少したりするということはありません。
5、まとめ
業務委託契約書を作成した際、その内容が印紙税法上の2号文書または7号文書に該当する場合には、印紙税法で所定された印紙税を納める必要があります。
課税文書の判断は、契約の実質的な内容で判断されることになります。
「課税文書に該当するかどうかわからない」という不安がある場合には、専門家である弁護士に相談をしてください。
業務委託契約書などの法律文書の作成をお考えの方は、ベリーベスト法律事務所まで、お気軽にご連絡ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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