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希望退職制度を正しく運用するポイントと導入にあたり注意すべき点

2020年11月12日
  • 顧問弁護士
  • 希望退職制度
希望退職制度を正しく運用するポイントと導入にあたり注意すべき点

帝国データバンクが公表している倒産情報によると、千葉県における令和2年上半期の企業の倒産件数は114件で、前年同期よりも減少しているという結果になりました。新型コロナウイルスの影響を受けた倒産が増えていると言われているため、意外な結果とも捉えられますが、これは緊急事態宣言の発令によって、法的手続きが滞留したことが影響したと考えられています。そのため、下半期の件数は前年よりも増加する可能性があるでしょう。

新型コロナウイルスによる企業への打撃が広がり、人件費を削減するために、希望退職制度の運用を検討する企業も増えています。早期退職制度は、会社の経営を健全化させるための制度ですが、対応を誤ると従業員から不当解雇などと主張され、トラブルになる可能性もあります。

早期退職制度をうまく導入するにはどのような点に注意すべきなのか、今後の経営立て直しに役立つポイントを、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が詳しくご説明します。

1、希望退職制度の概要

希望退職制度とは、業績の悪化等により人件費の削減などを目的として一定の期間に限定して実施するものです。退職を希望する従業員に対して、自主的に退職する場合よりも有利な条件を会社側が提示することが多いです。

類似した制度として、早期退職優遇制度がありますが、早期退職優遇制度とは、会社の制度として設けられ、労働者個人の生涯計画の選択肢として利用されるもので、業績の悪化により実施されるものではありません。

なお、この二つの制度に共通する大事な点は、仕事を辞めるという選択自体が、あくまで労働者の意思によるもので、会社側からの退職勧奨や整理解雇とは異なるということです。

しかし、希望退職制度は、しっかりと準備をした上で運用をしなければ、労働者側から実質的に不当解雇であるなどと主張され、場合によっては訴訟などの労働トラブルに発展する恐れがあります。また、会社側の意図とは異なり、辞めてほしくない重要な人材が流出してしまうケースもあります。未然に従業員とのトラブルや不測の事態を防ぐためにも、制度を導入する際は慎重な対応が必要でしょう。

2、希望退職者を募集する流れ

まずは、希望退職制度を実施するにあたっての、具体的な流れを解説します。

  1. (1)経営状態の把握・検討

    まず、会社の経営状態と今後の見通しの分析を行います。希望退職者制度は、今後の経営をより合理的に、かつ健全な状態で進めるために行います。したがって、希望退職者を募る前に、経営状態の現状と今後の見通し、人員削減による影響や効果をさまざまな観点から検討する必要があるでしょう。
    つまり、希望退職者制度は会社の経営計画と切り離して考えることはできないということです。その上で、過剰雇用の合理的算定をして、希望退職制度の設計を進めていくことになります。

  2. (2)対象者や条件の決定

    希望退職者を募集する場合は、対象となる労働者の年齢、勤続年数、職級などに加えて、募集する人数、募集期間、退職予定日などの条件を明確にしておく必要があります。
    希望退職者を募集する期間としては、一般的に2週間から1か月程度が妥当でしょう。

  3. (3)希望退職者の受付開始

    希望退職制度に関する条件の決定ができたら、次は従業員への説明を行います。説明会を設けるほか、個別の相談窓口を設置するなど、労働者および労働組合に希望退職制度について納得を得られるように十分な説明の機会を設けましょう。

    しっかりと説明を尽くしたあとで、いよいよ希望退職者の受付を行います。募集を終えて希望退職者が決定したら、希望退職者に対して退職辞令を発令します。退職者に対しては、条件どおりの退職金の支給や離職にともなう社会保険の喪失手続きを行うことになります。

3、希望退職者制度を運用する上での注意点

希望退職者制度の導入は、今後の会社の人事政策を決定づける重要な機会です。適切に導入し効果的に運用するためには、制度設計はもちろん、書面の作成、社員への十分な周知、応募への対応など、あらゆる面で法的にチェックしておくべきポイントがあります。
以下に、人事政策として重要な点を挙げていきます。

  1. (1)応募条件を具体的に定める

    希望退職者制度の導入は、会社がより良い形で存続していくために行うものです。ということは、希望退職者制度の導入によって、想定以上の人数の退職者が出て人手不足になったり、会社にとって不可欠な人材が流出したりしては、かえって会社経営に打撃をもたらします。こうした事態を回避するためにも、あらかじめ応募条件設定の段階からリスク対策を実施すべきでしょう。
    対象年齢・部署や職種・勤続年数など、対象となる応募者の条件を具体的に定めて限定し、会社にとって有用な人材をできるだけ残す方向性を検討します。

    なお、募集をかけても、実際に何人が希望退職制度に応募してくるかはやってみないとわからないところがあります。思いのほかたくさんの人数が応募したとすると、募集期間の途中で予定人員に達してしまう可能性があるでしょう。この場合、募集期間の途中で募集を打ち切るのかそれとも期日通りに続けるか、希望者全員を退職させるのか、といった選択肢も事前に決めておく必要があります。

    逆に、応募者が少ない場合もあり得ます。定員に満たなかった場合、さらに追加募集を行うかについても明確に決めておいたほうがよいでしょう。

  2. (2)従業員への説明

    希望退職者制度の導入することで、従業員が不安を感じる可能性が考えられます。また、会社に対して不信感が芽生えるきっかけにもなりかねません。全員が退職するわけではないので、今後も在職して、より一層のやる気をもって仕事に取り組んでもらう人も必要です。退職者を募りながらも、従業員の士気は維持して経営を進めていくためにも、制度の導入については丁寧な説明が必要と言えます。

    具体的には、経営側の思いや従業員に対する気遣いなどを示し、経営上必要な処置であることを理解してもらいましょう。この段階で従業員の十分な理解を得ることが、その後のトラブルを回避することにもつながります。

  3. (3)会社の承諾を退職条件とする

    経営者としては、希望退職制度によって人件費を削減しながらも、会社にとって有用な人材が流出してしまうことは避けたいと考えるのは当然と言えます。そのため、希望退職者制度の応募に対して、会社の承諾が必要であることを明記しておくことが必須です。いわゆる逆肩たたき条項と言われるもので、辞めてほしい人の肩をたたくのではなく、辞めてほしくない人を引き留めるための条項をいれておくということです。

  4. (4)退職後の守秘義務

    希望退職制度によって退職する場合のみならず、退職後の従業員の守秘義務については十分な注意が必要です。具体的には退職時、誓約書や秘密保持契約書を作成し、守秘義務を負わせるようにします。
    特に希望退職制度の対象者は、定年退職者と比べて、今後、他社に転職する可能性が高いと言えます。また、長年会社に勤務している対象者は、重要な企業秘密を握っていることも十分に考えられます。こうした点は、企業秘密の漏えいというリスクに直結しているということを念頭にいれて対応することが大切です。

4、必要な人材から応募があったときは拒否できる?

会社は、従業員から希望退職の申し出があっても、それを拒否することができると、過去の裁判例でも認められています(大阪地裁 平成12年5月12日判決など)。

ただし、会社側の都合で拒否するためには、前述したように最終的には会社側の判断で、承諾か却下かを決める旨を事前に明示しておくことが重要です。

また、希望退職制度という優遇条件による退職は認められなくても、退職したければ自己都合退職を選択することができます。
逆に、希望退職制度による優遇条件による退職が認められないなら会社に残りたいという人もいるでしょう。その場合、退職の意思表示をしたことで会社から何か不利益な対応をされる可能性があると、希望退職者制度に応募すること自体をためらうかもしれません。それでは希望退職制度がうまく機能しないので、希望退職制度への応募による不利益はない旨も、明確にしておく必要があるでしょう。

5、まとめ

希望退職制度は経営を健全に進めていくために重要な制度です。適切に実施して運用ができれば、その後の経営を立て直す大きなきっかけになるでしょう。一方で、希望退職制度は、従業員の離職につながる仕組みですから、条件の設定や従業員への説明などのポイントをおさえずに実施すると、思わぬトラブルの元となることがあります。会社の健全化に向かうための制度である希望退職者制度が、トラブルに発展して経営陣の悩みの種にならないよう、しっかりと事前準備をしておくことが大切です。

トラブルを回避して希望退職制度をうまく機能させたい、どのように進めればよいか迷っているなどの疑問や不安がある場合は、制度設計の段階から企業法務の経験豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 柏オフィスには、企業法務の知見が深い弁護士が在籍しています。一社一社の実情に合わせたご提案を行っていますので、希望退職者制度の導入をご検討の企業経営者の方や担当者の方は、柏オフィスの弁護士へぜひご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています

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