主婦が事故に遭ったら手当はどうなる? 休業損害と慰謝料を徹底解説

2020年11月27日
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主婦が事故に遭ったら手当はどうなる? 休業損害と慰謝料を徹底解説

令和元年、柏市では1158件の交通事故が発生しており、1336名の方が負傷しています。
交通事故の被害者になってしまった場合、まず優先すべきはケガの治療、その次に重要なことは加害者への損害賠償や慰謝料の請求です。
ひとくちに損害賠償といっても、その種類はさまざまです。そのうち、交通事故の被害に遭わなければ得られたはずの利益のうち、治療中の収入の減少について請求する「休業損害」という費目があります。実は、この休業損害については、労働による所得を得ていない専業主婦でも請求することが可能なのです。なお、パート・アルバイト等に従事している兼業主婦の方についても、基本的に同様に考えることができます。

そこで本コラムでは、交通事故の損害賠償請求の基本的な考え方と、専業主婦の方が請求できる休業損害について、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説します。

1、交通事故における損害賠償の考え方

交通事故などの損害賠償について、民法第710条は以下のように規定しています。

他人の身体、自由若しくは名誉を侵害した場合又は他人の財産権を侵害した場合のいずれであるかを問わず、前条(不法行為による損害賠償)の規定により損害賠償の責任を負う者は、財産以外の損害に対しても、その賠償をしなければならない

交通事故などで加害者から身体的・物的な被害を受けた場合、加害者に対して損害の賠償を請求することができます。もっとも、交通事故においては、被害者が受けた損害について加害者が全額賠償するケースはむしろまれです。交通事故の発生原因について被害者側に何らかの過失がある場合は、過失の割合に応じて「過失相殺」がされます。

2、交通事故における損害賠償の内訳

交通事故でケガを負ったり物が壊れたりしたときなどに加害者に対して請求できる損害賠償は、大きく区分すると、人的な損害が「積極損害」「消極損害」「精神的損害」3つに分類され、これに「物的損害」が加わります。このうち、休業損害は消極損害に該当します。

では、それぞれの損害について詳しく見ていきましょう。

  1. (1)積極損害

    積極損害とは、被害者が治療に要した費用や、病院に通院するために公共交通機関へ支払った交通費など、交通事故に遭ったことで支払う必要が生じた損害のことです。

    本人の治療に関わる費用だけではなく、家族などによる付き添い看護費や入院によって生じた雑費、加害者に損害賠償を請求するために要した弁護士費用の一部についても積極損害として請求できます。

    この他にも数多くの費目があるため、すべてを把握するのは簡単ではありません。後々、あれも請求できたのか……と後悔しないためにも、示談が成立するまでは、領収書などをすべて残しておくと良いでしょう。

  2. (2)消極損害

    交通事故に遭ったことで失われた、本来得られるはずだった利益に対する損害を指します。

    治療による休職の際の減収分を補塡(ほてん)するための「休業損害」、後遺障害にならなければ得られたはずの将来的な収入に対する「後遺障害逸失利益」、事故によって死亡しなければ得られたはずの収入に対する「死亡逸失利益」が該当します。

    ここで大事なのは、休業損害は勤務していなければ受け取れないと思われがちですが、専業主婦であった場合でも請求することが可能だということです。これは、家事労働については、実収入は発生しないものの金銭的に評価が可能と考えられているためです。

  3. (3)慰謝料

    交通事故でケガを負った場合、精神的・肉体的苦痛に対して請求できる慰謝料は、「入通院慰謝料」と「後遺障害慰謝料」の2種類があります。

    入通院慰謝料とは文字通り、入院や通院をした場合に請求できる慰謝料で、治療や入通院期間を元に算出されます。

    後遺障害慰謝料は、交通事故が原因で後遺症を負ったときに請求することができます。
    後遺障害慰謝料は、後遺症の種類に応じて第1級から第14級まで区分されており、認定を受けた後遺障害等級を元に金額が決まります。

  4. (4)物的損害

    交通事故により損害を受けた自動車やその積載品、身の回りの品の損害に対して請求できるのが物損損害です。

    損害賠償として請求できる修理費用は、修理業者に支払った実費もしくは合理的な方法により算出した金額とすることが一般的です。ただし、修理に関する損害賠償については、「経済的全損」という考え方が適用されるため、注意が必要です。
    たとえば、事故直前の価値が30万円の自動車を修理するのに100万円を要するとしても、基本的には30万円しか請求できないのです。これは、「損害賠償は事故直前の状態に戻す(原状回復)ために必要な限度において認められる」という考え方に基づくためです。

    もし修理不能な損害だった場合は、事故直前と同じ状態・価値の自動車等を購入した場合の金額が、損害賠償として請求できます。

3、専業主婦の休業損害の計算方法

では、専業主婦の方が休業した場合、具体的にどの程度の休業損害額になるのか、計算する方法を解説します。

基本的には、以下の計算式で算出します。

●保険会社が提示してくる基準
1日あたり6100円(※)×休業日数

(※)2020年4月1日以降に起きた、事故の場合の金額です。それ以前は5700円で計算します。

●裁判(弁護士)基準
1日あたりの損害額(日額基礎収入)×休業日数


「休業日数」とは、ケガが原因となり仕事を休むことになった日数のことです。
ただし、専業主婦の場合は、実際に勤務しているわけではないため、休業日数については実際に病院へ通院した日数などを元に判断されるケースが多いでしょう。

相手方保険会社としては、専業主婦の方が一日家事を休むと6100円の損害が生じると考えているということです。
他方、裁判所基準で算出する場合「1日あたりの損害額」については、厚生労働省が発表している賃金センサスの基礎収入がベースとなります。

具体的には、下記の計算式によって算出することができます。

賃金センサスにおける女性の平均賃金または年齢別平均給与額÷365日×休業日数


また、家事労働だけでなくパートやアルバイトなどをしている場合は、実際の収入で算出した休業損害と主婦業の休業損害を比較して、高額なほうで請求することが可能です。

具体的には、賃金センサスにおける女性の平均賃金は、平成30年の統計で382万6300円ですので、1日あたりの損害額は1万483円ということになります。

すなわち、弁護士に交渉を依頼すると、それだけで日額が6100円だったところが1万483円にアップするということです。

4、弁護士に相談すべき理由

上記のとおり、弁護士に依頼すれば、裁判所で採用されている考え方により休業損害を請求することができるようになります。

また、弁護士へ依頼することで、休業損害だけではなく慰謝料なども裁判所基準で算出することができます。特に慰謝料においては、自賠責保険基準か裁判基準かによって、慰謝料額が大幅に変わることがあります。

交通事故に関するトラブルの解決に経験と実績のある弁護士であれば、事故後の対処全般についての各種アドバイスや後遺障害の認定申請の代理、相手方保険会社との交渉も全て任せることができますので、精神的な負担を軽減できる点も、大きなメリットといえるでしょう。

5、まとめ

交通事故で被害に遭ってしまった場合、損害賠償請求はどのようにすべきなのか、保険会社とはどのようにやりとりすべきなのか……、など、いろいろとお悩みになることがあると思います。また、専業主婦は休業損害はもらえないと思い込んでいる方も少なくありません。

交通事故の損害賠償請求は複雑な上、交渉相手は加害者側の保険会社です。個人で対応するのは難しく感じる面もあるでしょう。そのため、しっかりと交渉するためにも、おひとりで悩まず弁護士へ相談することをおすすめします。

弁護士へ依頼する場合は、費用の面が心配になる方もいらっしゃると思います。その際、ぜひ確認していただきたいのが、ご自身が加入している保険に「弁護士特約」がついていないかという点です。弁護士特約がついていれば、基本的には自己負担なく弁護士へ損害賠償請求を委任することが可能です。また、弁護士特約がついていないケースでも、弁護士に依頼することで最終的に受け取れる金額が多くなる場合もあります。

交通事故の被害に遭ってしまった場合は、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士までご相談ください。柏オフィスでは、交通事故に関する初回のご相談は無料で受け付けております。弁護士特約がついていないという方も、まずはご相談ください。

生活の不安なく、安心して治療に専念できるよう、柏オフィスの弁護士が全力でサポートします。

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