保険会社から交通事故の治療費打ち切りを打診された! 延長は可能?
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交通事故に遭ってケガをしてしまうと、病院に通いながら治療を受けることになるでしょう。交通事故によるケガは、外見上は回復しているようにみえても強い衝撃を受けているため回復が遅く、治療が長期化するケースもめずらしくありません。
ところが、まだ治療が必要な状況であるにもかかわらず、加害者側の保険会社から『治療費を打ち切りたい』と打診を受けることがあります。治療費の補償を受けられないと、安心して治療に専念できなくなるので、大変な不安や憤りを感じることでしょう。
本コラムでは、交通事故でケガを負い治療を受けているにもかかわらず、保険会社から治療費の打ち切りを打診された場合の対処法について、柏オフィスの弁護士が解説します。
1、保険会社が打ち切りを打診してくるタイミング
交通事故の被害に遭ってケガをした場合、加害者が任意保険会社に加入していれば、基本的には加害者が加入している任意保険会社の負担で治療を受けることができます。ただし、保険会社は被害者が満足するまで治療費を支払ってくれるわけではありません。治療を始めてからある程度の期間がたち、治療を続けても改善の見込みがない、いわゆる「症状固定」の状態にあると考えた段階で、治療費の打ち切りを打診してきます。
そこで、まずは症状別に、症状固定に至るまでの一般的な期間についてみていきましょう。
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(1)むち打ちの場合
交通事故によるケガのなかでも、非常に多いのが「むち打ち」です。
事故の衝撃を受けて頭や腰が大きく屈伸したために組織が損傷するケガで、診断書における傷病名としては「外傷性頸部(けいぶ)症候群」「頸椎(けいつい)捻挫」「頸椎損傷」などと記載されます。
むち打ちはケガが発生した原因の俗称であり、これらのケガを示す総称だと考えれば良いでしょう。
むち打ちは、外見上の変化やレントゲンなどから回復の状況が判断しにくいケガなので、治療を終了するタイミングが難しいという傾向があります。症状固定に至るまでは、早ければ3カ月程度、遅ければ9カ月以上かかることもあります。 -
(2)骨折の場合
「骨折」も交通事故によるケガの代表例といえます。腕や足のほか、ハンドルに強打することで胸を骨折することもあります。
骨折は、どの部位に生じたのかによって治療期間が異なります。また、筋力の低下や可動域の回復なども含めると、治療が長期化することもありますが、一般的にこれ以上の回復が難しいと判断されるのは6カ月程度が目安となります。ただし、ボルトの埋め込みによる固定が必要といった手術を伴うケースでは、さらに長期にわたる治療が必要になると考えられます。 -
(3)醜状障害の場合
顔面や頸部、手足の衣服に隠れない箇所といった人目につく部位に傷痕が残ってしまうケガを「醜状障害」といいます。傷痕だけでなく、顔面のまひや骨折による鼻のゆがみ、色素沈着などもこれに含むとされています。
醜状障害も負傷した部位や症状によって治療期間は大きく異なりますが、切り傷や裂傷の場合は、傷の創面同士がしっかりとついてから6カ月程度が、治療完了の目安と考えられます。 -
(4)高次脳機能障害の場合
「高次脳機能障害」とは、事故の衝撃で脳が損傷したために、記憶力の低下や感情の制御が難しくなるなどの症状が生じた状態のことをいいます。外見上の変化がないため、治療に必要な期間を判断しにくいのが大きな特徴ですが、一般的な症状固定の目安は1年~1年6カ月程度のケースが多いです。
2、症状固定とは?|誰が症状固定を決めるのか
前述したように、保険会社が治療費の打ち切りの判断を下す際に非常に重要な概念が「症状固定」です。では、症状固定とは、具体的にどのような状態を指すのか、みていきましょう。
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(1)症状固定の概要
「症状固定」とは、これ以上、治療を継続しても症状の改善が見込めない状態に達したことを指します。症状が劇的に改善することもなければ、著しく悪化することもないので、『症状が固定された』と判断されるわけです。
症状固定の意味を理解するために、むち打ちを例に考えてみましょう。
むち打ちは、事故の直後から治療がはじまり、徐々に症状は改善されていきます。ところが、ある程度の治療を続けたあたりから、治療の効果が薄れてくる、改善したように感じていても、すぐに症状が戻るといった状態を繰り返すようになります。
このような状態になると、これ以上の治療を続けても症状の改善は見込めないため、「症状固定」と判断されることになります。 -
(2)症状固定は誰が判断するのか
症状固定は、医師の判断が第一に優先されるものですが、最終的には裁判所が判断することとなります。とはいえ、治療が必要なのか、それともこれ以上の治療では改善が見込めないのかは、保険会社には判断できません。
そのため、保険会社は主治医に話を聞くなどして、症状固定といえるかどうかを判断することになりますが、なかには担当者限りの判断で強引に打ち切りを決めることもあるようです。
たとえ保険会社が「そろそろ症状固定では?」と打診してきたとしても、簡単に応じるのは得策とはいえません。主治医の見解が重要視されますので、まずは、主治医に判断をあおぐようにしましょう。
3、保険会社による治療費の支払期間の延長はできないのか?
保険会社が治療費の打ち切りを迫ってきた場合、受け入れずに治療費の支払期間を延長してもらうことはできるのでしょうか?
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(1)医師の判断が重要
繰り返しになりますが、治療の要否を判断するのは医師です。
治療費の負担を継続してもらうためには、主治医に対していまだに不調が続いていることをしっかりと説明し、保険会社の問い合わせにもその旨を伝えてもらう必要があります。 -
(2)保険会社との交渉のポイント
保険会社から治療費の打ち切りについて打診を受けても、安易にこれに応じて治療を終了するべきではありません。治療費の支払いが打ち切られたことによって治療を終了させてしまうと、完治せず長くケガに悩まされることになりかねません。
保険会社が強く打ち切りを迫ってくる場合は、主治医に相談して治療継続を必要とする合理的な理由についてアドバイスを受けるのが賢明です。また、保険会社にも、打ち切りとする根拠を提示するよう求めましょう。
それでもなお、保険会社が強引に打ち切りを迫ってくる場合は、弁護士に相談して交渉を一任することをおすすめします。
4、打ち切りになった場合の対処法
治療が必要であることを丁寧に説明しても、保険会社が強引に治療費の負担を打ち切ってくることがあります。このような場合は、どうすれば良いのでしょうか。
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(1)自賠責保険を利用する
自賠責保険は、加害者からの請求だけではなく、被害者が自ら賠償を請求することも可能です。ただし、保険会社の調査を受ける必要があるなど手続きが非常に煩雑であることにくわえ、補償の上限は、ケガの部分は120万円までですので、手間がかかるうえ、その補償範囲は限定的です。
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(2)弁護士に交渉を依頼する
弁護士が代理人として交渉することで、保険会社が治療費の打ち切りを再検討してくれる可能性がありますので、弁護士への依頼を検討してみてもよいでしょう。
慰謝料の金額などについても、弁護士に依頼することで大幅に増額できるケースも多いです。
5、まとめ
交通事故に遭ってケガをしてしまい、加害者の保険会社が治療費を負担している場合でも、加害者の保険会社は、ある程度の段階で治療費の打ち切りについて打診をしてきます。保険会社はできるだけ早く治療費の負担を打ち切りたいと考えているものですが、あくまでも症状固定の判断にあたっては医師の意見が重視されるので、保険会社の方針に直ちに従う必要はありません。
保険会社から強く打ち切りを迫られている、または強引に打ち切られてしまった場合は、交通事故案件について実績豊富な弁護士に相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 柏オフィスにご相談いただければ、交通事故に関係するトラブルの解決実績を豊富にもつ弁護士が、保険会社からの治療費の打ち切り打診への対処法についてもアドバイスします。
あなたの代理人として保険会社と交渉し、安心して治療が受けられるように全力でサポートします。治療にしっかりと専念するためにも、ぜひベリーベスト法律事務所 柏オフィスへご相談ください。
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