特別縁故者として遺産を相続したい! 必要条件や手続きについて解説
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柏市が公表しているデータによると、令和元年9月時点での柏市の高齢化率は25.8%でした。高齢化率とは、65歳以上の高齢者人口が総人口占める割合をさしますが、21%を超えると、超高齢化社会に該当します。
高齢社会がさらに進行するに連れて、相続が発生する件数も今後増えていくと予想されます。
長年被相続人を介護してきたなど、非常に親密な間柄だったとしても、法定相続人でなかったり、遺言によって遺贈を受けられなかったりしたために遺産を全く相続できないとすれば、納得できないと考える方も多いでしょう。
実は、非常に厳しい要件ではありますが、法定相続人ではないものの被相続人と縁が深かった人は、「特別縁故者」として財産を相続できる場合があります。
本コラムでは、特別縁故者が財産を相続するための要件や手続きについて、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説します。
1、特別縁故者とは?
配偶者・子どもなどの法定相続人ではないものの、生前の被相続人と関係が深かった人は、民法上の「特別縁故者」に該当する場合があります。
特別縁故者の要件や具体例について見ていきましょう。
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(1)特別縁故者の要件
民法第958条の3第1項は、特別縁故者に該当するための要件として、以下の3パターンを規定しています。
①被相続人と生計を同じくしていた者
被相続人と同居の上で共同生活を送っていた人や、完全に同居していたわけではないものの家計を共同にしていた人が該当します。
②被相続人の療養監護に努めた者
晩年の被相続人の介護などを行った人が該当します。
③その他被相続人と特別の縁故があった者
①や②と異なり抽象的な要件ですが、①や②に準ずる程度に被相続人と縁が深かったと認められる人が該当します。 -
(2)特別縁故者の具体例
具体的にどのような人が特別縁故者に該当するのか、具体例をいくつか紹介します。
●内縁の妻
正式に婚姻をしていない内縁の妻は、法定相続人に該当しません。しかし内縁の妻は、被相続人と同居をして生計を共にしているのが通常です。
そのため、特別縁故者に該当する可能性が高いといえます。
●被相続人の介護に尽力した義理の娘(子どもの妻)
被相続人の子の妻が被相続人の介護に尽力した場合、被相続人の療養監護に努めた者として、特別縁故者に該当する可能性があります。
●介護施設の運営者
被相続人に身寄りがなく、介護施設に入居していた場合には、介護施設の運営者が特別縁故者と認められる場合があります。
介護施設は業務の一環として介護サービスを提供しているため、通常のサービスの範囲で介護を行っていたにすぎない場合は、特別縁故者として認められる可能性は低いでしょう。
しかし、被相続人が非常に長期にわたって介護施設に入居していたり、通常のサービスの範囲を超えて手厚い介護をしていたりという事情がある場合には、例外的に特別縁故者として認められることがあります。
●長年にわたり被相続人と親密な交流があった親族
法定相続人ではなくても被相続人が長年かわいがっていたり、頻繁に被相続人のもとを訪れていたりした親族は、被相続人と特別の縁故があった者として、特別縁故者と認められる場合があります。
2、特別縁故者であれば必ず財産を相続できる?
特別縁故者に該当したからといって、必ずしも遺産を相続できるわけではありません。特別縁故者が相続を受けるためには、厳しい要件があります。
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(1)他に相続人としての権利を主張する者がいないことが必要
特別縁故者が財産を相続するためには、他に相続人としての権利を主張する者がいないことが必要です。
つまり、被相続人の配偶者・子ども・直系尊属・兄弟姉妹がひとりでもいる場合には、特別縁故者が遺産を相続することはできません。
なお、他に相続人としての権利を主張する者が本当にいないかどうかは、公告手続きにより相続人を捜索するなどのステップを経て確認されることになります。 -
(2)一定の期間内に家庭裁判所への請求を行う必要がある
特別縁故者が遺産を相続するためには、家庭裁判所に対して請求を行う必要があります(民法第958条の3第1項)。
家庭裁判所に対する請求を行うことができる期間は、相続人の捜索の公告期間(6ヶ月以上)が満了してから3か月に限られています(同条第2項)。
そのため、特別縁故者に該当する方は、公告手続きの進行状況を注視して、時期を逃さずに家庭裁判所への請求を行わなければなりません。 -
(3)全財産をもらえるとは限らない
他に相続人がいないからといって、特別縁故者が相続財産をすべて相続できるとは限りません。
実際には、家庭裁判所が特別縁故者と被相続人の関係の深さを認定・判断して、特別縁故者に対して与える相続財産の割合を決定することになります。
どの程度の割合が認められるかについては、数%程度の場合から全額(100%)が認められる場合まで、事案によってさまざまです。
3、特別縁故者が遺産を相続するための手続き
特別縁故者に該当する場合、どのタイミングで請求手続きを行えばよいのでしょうか。また、どのような手続きが必要になるのでしょうか。
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(1)家庭裁判所へ請求ができるようになるまでの流れ
特別縁故者が家庭裁判所に対して、相続財産の分与の請求を行うことができるようになるまでの流れをひとつずつ確認していきましょう。
●相続財産の管理人の選任・公告
相続人がいることが明らかではない場合、家庭裁判所は利害関係人または検察官の請求によって、相続財産の管理人を選任します(民法第952条第1項)。
相続財産の管理人が選任されると、家庭裁判所はその旨を公告します(同条第2項)。
●相続債権者および受遺者に対する弁済
相続財産の管理人の選任が公告された後、2か月以内に相続人がいることが明らかにならなかった場合は、相続債権者・受遺者に対する弁済の手続きが開始されます。
●相続人の捜索の公告
相続債権者・受遺者に対する弁済の公告期間が満了してもなお、相続人のあることが明らかでない場合は、相続人の捜索の公告手続きが行われます。
家庭裁判所は、相続財産の管理人または検察官の請求によって、相続人に該当するものがいる場合は、一定の期間内(6か月以上の期間を定める)にその権利を主張すべき旨を公告します(民法第958条)。
この相続人の捜索の公告期間中に、相続人としての権利を主張する者がいなかった場合に初めて、特別縁故者が家庭裁判所に対して、相続財産分与請求を行うことができるようになります。 -
(2)請求手続きの詳細
続いて、特別縁故者が家庭裁判所に対して相続財産分与請求を行う際の手続きについて解説します。
●申立期間
相続人の捜索の公告期間が満了した後3か月以内に、申し立てを行う必要があります。
●申立先
被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に対して申し立てます。
●申し立てに必要な費用
収入印紙800円分と、連絡用の郵便切手が必要です。
郵便切手の金額は、申立先の家庭裁判所に確認しましょう。
●申し立てに必要な書類
申立書と、申立人の住民票または戸籍謄本が必要です。
場合によっては、家庭裁判所から追加の書類の提出を求められる場合があります。
4、遺言書があれば財産の相続が可能
特別縁故者として遺産を相続する手続きは非常に厳格ですが、遺言書により遺贈を受けることができれば、被相続人から財産を譲り受けることが可能です。
遺言者は、遺言によって財産を処分することができます(民法第964条)。
その相手方は法定相続人に限られず、たとえば生前お世話になった人や、関係が深かった親族などに対して、遺贈により財産を与えることが可能です。
ただし、被相続人から過大な金額の遺贈を受けた場合、法定相続人がいると遺留分侵害額請求を受ける可能性があるので注意が必要です。
遺留分とは、法定相続人に認められた相続の最低保障金額で、遺留分侵害額請求をされた場合は、遺留分侵害額相当の金銭を法定相続人に対して支払う必要があります。
5、まとめ
特別縁故者として遺産を譲り受けるためのハードルは非常に高いですが、他に相続人がいないなどの条件が整っていれば、被相続人との生前の深い親交が報われる可能性もあります。
また、被相続人の生前に、あなたに財産を残したいというような話をしていた場合には、遺言書に遺贈する旨の記載がないかを確認してみましょう。
特別縁故者としての遺産相続に心当たりがある方は、ぜひベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士にご相談ください。相続に関する問題の対応実績が豊富な弁護士が、しっかりとお話を伺った上で、取るべき対応や手続きについて助言し、解決に至るまでサポートします。
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