身に覚えのない痴漢容疑で逮捕! 冤罪(えんざい)を証明する方法

2020年09月28日
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身に覚えのない痴漢容疑で逮捕! 冤罪(えんざい)を証明する方法

交通の中心となっている柏駅にはJR・東武鉄道が乗り入れており、多くの方の通勤・通学に利用されている状況です。
ラッシュ時になると満員の状態で乗車することになりますが、満員電車を利用していると「痴漢に間違われないか?」と不安になることもあるでしょう。

痴漢で捕まれば、社会的な地位や信用を失ってしまうだけでなく、重い刑罰を受けてしまうおそれもあります。
一方で、過去には痴漢と間違われて逮捕された青年の葛藤を描く映画もヒットするなど、いわゆる「痴漢冤罪」は社会の注目を浴びています。痴漢に間違われてしまった場合は正しい対処が必要と言えるでしょう。

このコラムでは、見に覚えのない痴漢容疑で逮捕されてしまった場合の対処法を柏オフィスの弁護士が解説します。
痴漢に間違われてしまったとき、その場でできる対処法もあわせて解説していきます。

1、痴漢に間違えられた場合の正しい対処法

総務省が公開している「性犯罪に関する総合的研究」という資料によると、平成26年中に認知された痴漢事件のうち、迷惑防止条例違反が3439件、電車内での強制わいせつ事件が283件でした。
迷惑防止条例違反は電車内以外で発生したものも含まれますが、電車内で認知されたものも少なくないはずです。

電車という狭く閉鎖された空間のなかは、痴漢が発生しやすい環境が整っているため、痴漢に間違われてしまうトラブルも多く発生しています。
もし電車内で痴漢と間違われてしまった場合は、どのように対処すればよいのでしょうか?

  1. (1)逃亡しない

    「この人痴漢です!」と腕をつかまれたり、大声を出されたりしても、絶対にその場から逃げてはいけません。
    たとえ「仕事で急いでいるので」と自分なりの理由を言い残して立ち去ったとしても、痴漢の容疑をかけられている場面では「逃亡した」とみなされるおそれがあります。

    痴漢に間違われてしまえば、焦るのは当然と言えます。しかし、逃亡したとしても事態は好転しません。その場で正しく対処をしましょう。

  2. (2)謝罪ととらえられる言動をしない

    日本人は自分が悪いと思える場面ではなくても、つい社交辞令のように「すみません」と言ってしまいがちですが、痴漢に間違われている場面では絶対に使ってはいけません。
    「すみません」という一言が「罪を認めて謝罪をした」ととらえられてしまうおそれがあるからです。
    どのような趣旨であっても、謝罪ととらえられかねない言動はしないように心得ておきましょう。

  3. (3)抵抗をしない

    被害を主張する人や、目撃者など周囲の人から腕や身体をつかまれてしまっても、強引な抵抗をしてはいけません。

    無理に手を振りほどいたり、相手の胸を突いたりすれば刑法第208条の暴行罪に、相手の顔にあたってケガをさせてしまったり、尻もちをつかせて打撲傷を負わせたりすれば、刑法第204条の傷害罪に該当するおそれがあります。

    また、公営鉄道会社の職員は公務員なので、駅員の業務を妨害してしまうと刑法第95条1項の公務執行妨害罪にあたります。

    痴漢容疑が間違いであっても、これらの犯罪が成立してしまえば別の事件として処罰されるおそれがあるので注意しましょう。

  4. (4)その場から離れない

    痴漢容疑をかけられてしまったら、駅員などから「人目が多いので事務室に行きましょう」などと移動をうながされても、同行することは得策とは言えません。
    駅の事務室などに移動してしまうと、駅のホームに戻ることができなくなりますので、大事な目撃者を探すことが困難になってしまいます。

    その場で、しっかりと身に覚えがないことを説明する、目撃者がいないか声をかける、必要に応じて駅員や被害者を訴えている人とのやりとりを録音するのも、その後の重要な証拠になり得ます。

2、警察に逮捕されそうになった場合の対処法

被害を主張する人や駅員などによる通報で警察官が現場に到着すると、逮捕のリスクが高まります。
警察に逮捕されそうになった場面では、どのように対処すればよいのでしょうか?

  1. (1)すでに現行犯逮捕されているケースが多数

    被害を主張する人に「この人、痴漢です!」などと腕をつかまれた時点で、実は現行犯逮捕が成立しています。
    「逮捕」と言えば警察官以外はできないようなイメージがあるかもしれませんが、現行犯逮捕に限っては、犯人の取り間違いなどが起きにくいため一般人にも認められているのです。これを私人逮捕(常人逮捕)と言います。

    はっきり「逮捕する」と告げられていなくても、取り押さえられた時点や逃げられないように取り囲まれたりした時点で逮捕が成立しています。
    逮捕した本人や逮捕されてしまった人でさえも「現行犯逮捕が成立している」という事態に気づいていなかったというケースも多数です。

  2. (2)任意同行には応じず弁護士を呼ぶ

    現行犯逮捕には至らなかった場合でも、警察は「ここでは詳しく事情を聞けないので警察署まで同行してください」と移動を求めてきます。これを「任意同行」と言います。

    任意同行はあくまでも「任意」なのでこれに応じる義務はありません。しかし、同行に応じない合理的な理由がない限り、警察による説得と「なぜ応じられないのか?」という質問が繰り返されることとなります。
    単に「行きたくない」と主張するだけでは、警察は任意同行することを諦めてはくれません。

    この時点で、すぐに連絡ができる弁護士がいる場合は、現場に来てもらいましょう。
    まだ逮捕には至っておらず、警察官に任意同行を求められている段階であれば「弁護士を呼んだのでこの場で到着を待っている」という主張が正当な主張になります。

3、痴漢冤罪を証明するための証拠

身に覚えのない痴漢容疑をかけられてしまうことを一般的に「痴漢冤罪(えんざい)」と呼びます。
本来、冤罪とは無実の罪で刑罰に処されてしまうことを指すため、容疑をかけられてしまっただけの段階や逮捕されてしまった段階は冤罪とは呼びませんが、マスコミなどの報道によって一般語として定着しています。

平成21年4月には、電車内の痴漢事件で強制わいせつ罪に問われた男性が無罪判決を受けた事例について、当時の警察庁長官が「目撃者の確保が難しく、被害を仮装する女性も極めて少数だが存在する」と捜査の難しさを指摘しました。

警察でさえ「捜査が難しい」という痴漢事件の容疑を晴らすには、どのような証拠を集めるべきなのでしょうか?

  1. (1)目撃者の証言

    トラブルが起きた時点で、周囲に「痴漢をしていない」と証言してくれる目撃者がいないかを探しましょう。隣に立っていた人や、目の前に座っていた人が証言をしてくれる可能性があります。
    また、同じ時間の電車を利用している家族や同僚などがいれば、「乗車中はずっと私と会話していた」、「片手はつり革をつかみ片手はスマホを持っていたので痴漢はできない」などの有力な証言が得られる可能性にも期待できます。

  2. (2)防犯ビデオカメラなどの映像記録

    路線によっては、電車内に防犯カメラを設置している可能性があります。
    JR東日本では、平成30年の夏以降、首都圏を走行する在来線の車両約8300両に車内防犯カメラの設置をはじめました。
    東急電鉄でも、令和2年7月までに全車両に発光ダイオード(LED)蛍光灯一体型防犯カメラを設置することを公表しています。

    電車内のセキュリティー強化を期待しての導入ですが、同時に水かけ論になりやすい痴漢冤罪に、確かな証拠を示す材料としても活用されることが期待されます。

4、痴漢に間違えられたら直ちに弁護士に相談

もし身に覚えのない痴漢容疑をかけられてしまったら、直ちに弁護士に相談してサポートを受けましょう。
相談が早ければ早いほど、不利益な状況を回避しやすくなります。

  1. (1)すぐに相談すれば逮捕が回避できる可能性がある

    容疑をかけられたその場で弁護士に連絡をして現場に急行してもらうことができれば、逮捕が必要ではないことを主張することで身柄拘束される事態を避けることができるかもしれません。

    弁護士が現場に臨場することができないとしても、逮捕を回避するためのアドバイスを弁護士から受けることで、逮捕を回避できる可能性もあるでしょう。逮捕を避けることができ在宅事件となれば、身柄拘束を受けることはありませんので、日常生活を送りながら取り調べなどに落ち着いて対応することができます。

    また、警察署に任意同行された場合でも、逮捕に至っていないのであれば警察署から帰ることも本来は自由です。しかし、警察も警察署まで任意同行した痴漢の疑いのある者をすんなりと帰宅させることはせず、任意と言いながらその場にとどまるよう強く説得します。
    そこで、逃亡のおそれや証拠隠滅の可能性がないことを主張するため、家族に警察署に来てもらって身元引受をしてもらうことで釈放されることもあります。

  2. (2)勾留前なら長期の身柄拘束が回避できる可能性がある

    逮捕されてしまっても、直ちに弁護士にサポートを依頼すれば、捜査機関に対して逃亡のおそれがないことなどを主張できるので、勾留を回避できる可能性があります。
    勾留が決定されれば、原則10日間、延長によって最長20日間の身柄拘束が続くので、勾留が回避できることは非常に重要です。

  3. (3)不起訴を目指した弁護活動

    もし勾留されてしまっても、弁護士が証拠を集めて冤罪を主張することで、不起訴の獲得が期待できます。
    わが国の司法制度では、検察官が起訴した事件の有罪率は99%以上だと言われています。
    これは、どんな事件でも有罪になるという意味ではなく、検察官が事前に検討をかさねて「確実に有罪を勝ち取ることができる」と確信した事件に限って起訴しているからです。

    そのため、完全に容疑を晴らすことはできなくても、冤罪の可能性を訴えるなどの弁護活動を続けることで、不起訴処分が下される可能性は高まるでしょう。

    なお、検察官が起訴に踏み切ってしまった場合は、刑事裁判で無罪を争うことになります。
    前述したように無罪を獲得することは、非常に難しいという現実があります。しかし、痴漢冤罪トラブルの解決実績が豊富な弁護士であれば、最後まであきらめることなく、あらゆる証拠を集めるなどして徹底的したサポートを継続します。

5、まとめ

痴漢事件は、客観的な証拠が残りにくく、被害を主張する人の供述を中心に捜査が進められることが多いため、冤罪が起こりやすいという問題があります。
容疑をかけられてしまえば無罪の証明は難しく、逮捕勾留によって長期の身柄拘束を強いられたり、無実の罪で刑罰を科せられてしまったりする可能性もあるのです。

もし身に覚えのない痴漢容疑をかけられてしまった場合は、直ちにベリーベスト法律事務所 柏オフィスにご連絡ください。柏オフィスの弁護士が迅速に対応し、無実であることを証明するべく全力でサポートします。

また、ベリーベスト法律事務所では「痴漢冤罪 顧問弁護士 緊急ダイヤル」のサービスも提供しています。
早朝から痴漢事件の弁護実績が高い弁護士が待機しているので、即時電話でアドバイスが可能です。現場へ弁護士が急行するサービスも無料で利用できるので、痴漢冤罪に巻き込まれてしまう事態に不安がある方はぜひご活用ください。

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