前科があると就職できない? 前歴との違いや日常生活への影響とは

2025年03月26日
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前科があると就職できない? 前歴との違いや日常生活への影響とは

事件を起こして警察に捕まったときに心配になるのが、前科がつくことによって日常生活や就職において不利になることでしょう。事件を起こしても前科がついてしまう事態は回避できる可能性があるので、あきらめずに最善を尽くしましょう。

本コラムでは、前科が日常生活や就職に与える影響についてベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説します。


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1、前科の意味と前歴との違い

前科という言葉は広く認識されていますが、法律用語ではないため、法律上明確な定義はありません。一般的に使われている意味合いとしては刑罰を受けた経歴を指すでしょう。
日本における刑罰は、次の6種類です。

  • 死刑
  • 懲役
  • 禁錮
  • 罰金
  • 拘留
  • 科料


これらの刑罰が言い渡された経験がある人は「前科がある」と呼ばれる状態です。
実際に刑に服したかどうかは問わないので、判決で「執行を猶予する」と言い渡された場合でも前科があることになります。

なお、令和7年6月1日からは、懲役と禁錮が「拘禁刑」に一本化されます。

  1. (1)前科と「前歴」の違い

    前科とよく似ているのが「前歴」です。前歴も、前科同様に法律上で定義されているわけではありませんが、一般的には捜査機関に被疑者として検挙された経歴を指します。

    たとえ不起訴処分になったとしても、警察が被疑者として検挙したのであれば、前歴として捜査機関のデータベースに登録され、全国の捜査機関で共有されます。

  2. (2)検挙されても必ず前科がつくわけではない

    犯罪事件の被疑者として検挙されたとしても、必ず前科がついてしまうわけではありません。
    たとえば、万引きや自転車盗、怪我のない暴行など、犯情軽微で被害僅少な事件であれば、微罪処分として処理される可能性があります。微罪処分になると検察庁への報告が行われるのみで、前科はつきません。

    また、逮捕された場合でも、証拠不十分などの理由で検察官が不起訴処分を下した場合も、前科はつきません。

    一方で、相手に怪我を負わせてしまった交通事故等では罰金刑が下されることがありますが、このようなケースでは逮捕されていなくても前科がついてしまいます。

2、前科があると就職できない? 前科が就職に与える影響

刑罰がつく可能性がある方や、すでに刑罰を受けた経歴がある方は「就職に影響があるのでは?」と不安に感じるでしょう。前科がついていることが就職先に知られてしまった場合、内定が取り消されたり、不採用になってしまったりする可能性はあるのでしょうか?

  1. (1)賞罰の欄がなければ申告する必要はない

    採用の選考において提出する書類に「賞罰」の欄がある場合は、刑の言渡しの効力が失われるまで(刑法34条の2)は前科がある事実を自己申告することになります。また、服役していた期間などがあると、履歴書上で空白の期間ができてしまうため、面接などを通じて事実を確認される可能性はあるでしょう。
    なお、賞罰欄がない場合には、自己申告をする必要はありません。

    たとえ虚偽申告をして採用されたとしても、事実が知られてしまった場合は、懲戒解雇になる可能性もあることを心得ておくべきです。

  2. (2)前科の影響を受ける職業

    基本的に、一般の人がある個人について「前科があるのか」を調べる方法はありません。
    前科は非公開の情報であり個人情報なので、企業などが調査によって知ることができる情報ではないのです。
    つまり、前科があるということを企業側が知り得てしまう可能性は低いと考えられます。

    なお、一定の職業については、前科に関係する資格制限があります。
    次に挙げる職業は、罰金以上の刑罰を受けた状態では職に就くことができません(刑の言渡しの効力が失われるまで)。

    • 医師
    • 歯科医師
    • 薬剤師
    • 看護師 など


    また、次に挙げる職業は、禁錮以上の刑罰を受けた状態では職に就くことができません(刑の言渡しの効力が失われるまで)。

    • 裁判官
    • 検察官
    • 弁護士
    • 教員 など


    また、以下の職業では、禁錮以上の刑に処されてその執行が終わり、または執行を受けることがなくなって3年が経過しないと職には就けません。

    • 司法書士
    • 公認会計士
    • 税理士 など


    さらに、国家公務員・地方公務員では禁錮以上の刑に処された場合、その執行が終わる、または執行を受けることがなくならないと職に就けません。
    規定のうえでは刑務所から出所するか、あるいは執行猶予の期間が満了すれば就職できますが、公務員の採用には年齢制限があるので、刑を受けた年齢によっては公務員になるのは難しいでしょう。

  3. (3)多くの未成年犯罪は就職に影響しない

    未成年の頃につい出来心で万引きや自転車盗などの罪を犯してしまい、警察に検挙されていたとしても、未成年による犯罪の場合には前科がつきません。家庭裁判所には非行歴として記録が残りますが前科としては扱われず、刑罰を受けないため賞罰として申告する必要もありません。

    ただし、一部の重大犯罪の場合で、家庭裁判所が検察官に送致し、刑事裁判を受け、有罪判決となると前科として残ることとなります。その場合には、刑の言渡しの効力が失われるまでは、賞罰として申告する必要があると考えられます。

  4. (4)前科によって被る可能性がある就職以外の不利益

    前科がついてしまうと、職業の制限を受けるほか、次のような不利益を被るおそれがあります。

    • 再犯の際に量刑が重く傾くおそれがある
    • 海外渡航の際、国によっては渡航が制限される可能性がある
    • 配偶者が離婚訴訟を提起した場合に「その他婚姻を継続し難い重大な事由」として法定離婚事由が認められる可能性がある

3、犯歴情報は消えるのか?

過去に犯罪事件を起こしてしまった場合には、捜査機関のデータベースに記録されます。これらの記録は時間がたっても消えないのでしょうか?

  1. (1)一定期間が過ぎれば「刑の言い渡し」の効力は消滅する

    刑法第34条の2によると「刑の言い渡し」の効力は、刑の執行が終わるか、執行の免除を得た者が罰金以上の刑に処されずに下記期間を経過すれば、消滅する

    • 禁錮以上……10年
    • 罰金以下……5年
  2. (2)捜査機関のデータベースからは消えない

    しかしながら捜査機関のデータベースに記録されている犯歴情報は、死亡するまでデータが削除されることはありません(犯歴事務規定18条参照)。
    つまり、刑事罰を受けたという履歴は、データベース上に一生涯残ることになります。

  3. (3)ネット上の情報を削除するには弁護士へ相談を

    事件の様態によっては、逮捕報道がなされたり、実名が公開されたりすることもあります。特に、ネット上で掲載されてしまった逮捕報道などの情報は、サイト管理者が情報を削除しない限り、いつまでも公開状態が続きます。

    また、ニュースサイトなどが情報を削除しても、ネット掲示板やSNSなどで拡散されていれば末端の情報まで追いかけていくことは困難と言わざるを得ません。事件の内容がセンセーショナルであるほど、ネット上の情報を削除するのは難しいと考えておくべきでしょう。

    なお、自身にまつわる情報を見つけた場合は、掲載先に削除を依頼することになりますが、多くの場合において、法的根拠に基づき削除申請を行う必要がありますので、個人で対応することは難しいでしょう。削除したい情報を見つけた場合は、弁護士へ依頼することをおすすめします。

4、前科をつけないためにできること

前科がついてしまうと、さまざまな不利益が生じます。
職業によっては就職にも悪影響を及ぼすため、犯罪事件を起こしてしまった場合は「前科をつけない」ことに力を注ぐべきと言えます。

事件の内容によって、不起訴処分を獲得するために必要な活動は異なりますが、被害者がいる場合は示談を成立させることが重要になります。また、捜査機関への働きかけといった弁護活動も重要です。
刑事事件は、初動が重要になるため、事件を起こしてしまった場合は、すぐに刑事事件の対応実績が豊富な弁護士に依頼することが大切です。

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5、まとめ

前科がついてしまっても、その情報が一般に公開されることはありません。しかし、一定の職業では制限がかかってしまうほか、一般企業での採用においても、インターネット上の情報などから、不利益を被ってしまうおそれがあります。

現在、事件を起こしてしまい警察の取り調べを受けているといった状況であれば、前科がつくのを回避するために、不起訴処分獲得などを目指した弁護活動が必要です。また、すでに前科がついており、ネット上の情報によって不利益を被っている場合は、削除に向けた対応策を講じる必要があります。

前科がついてしまう事態を回避したいとお悩みの場合は、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士にお任せください。
刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が、不起訴処分の獲得を目指して全力でサポートするだけでなく、ネット上に拡散された情報の削除に向けて最善を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています