サイバー犯罪に加担してしまった! 罪種や刑罰と解決に向けた対処法

2021年03月16日
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サイバー犯罪に加担してしまった! 罪種や刑罰と解決に向けた対処法

千葉県警察はホームページ上で、コンピューターウイルスの注意喚起や詐欺サイトの情報といった、サイバー犯罪対策に関するさまざまな情報を配信しています。また、通報のお願いも掲載されており、千葉県警察がサイバー犯罪の抑止と取り締まりを強化している状況がうかがえます。

警察庁が公表しているデータによると、令和元年のサイバー犯罪検挙件数は9519件で、前年比プラス479件という状況でした。
現代の犯罪はインターネットを利用したものが多く、被害が全国へと広がるおそれもあるため、警察がサイバー犯罪への警戒を強めているのは間違いありません。

そこで、本コラムでは、どのような行為がサイバー犯罪にあたるのかという概要に触れながら、サイバー犯罪に加担してしまった場合の解決策について、柏オフィスの弁護士が解説します。

1、サイバー犯罪とは

「サイバー犯罪」という言葉は知っていても、具体的にどのような犯罪を指すのかを知らない方も多いのではないでしょうか。
まずは、サイバー犯罪の定義や具体的な類型をみていきましょう。

  1. (1)サイバー犯罪の定義

    サイバー犯罪とは、コンピューターやインターネットを悪用した犯罪の総称です。
    従来は「ハイテク犯罪」と呼ばれていました。

    加害者と被害者が顔をあわせることがないため匿名性が高いことに加え、犯罪の痕跡が残りにくいため、犯人を特定しにくいという特徴があります。
    また、場所や時間を問わず、被害が全国・不特定多数にまで及ぶケースが多いという点も特徴的です。

  2. (2)具体的なサイバー犯罪の類型

    サイバー犯罪は、一般的に、大きくわけると次の3類型に分類されます。

    ●不正アクセス禁止法違反
    インターネット上で他人のIDやパスワードなどの識別符号を入力し、他人のコンピューターに侵入する、不正アクセスを助長するといった行為です。

    ●コンピューター犯罪
    金融機関などのオンライン端末を不正に操作する、プロバイダのホームページを改ざんする、ウイルス攻撃などによってサーバーシステムをダウンさせるなど、コンピューターまたは電磁的記録を対象とした犯罪です。

    ●ネットワーク犯罪
    特定の個人を誹謗中傷する記事を投稿する、脅迫や恐喝のメールを送付する、インターネット上でわいせつ画像を公開する、偽サイトを作って商品代金をだまし取るなど、インターネットを犯行の手段として用いる犯罪です。

2、サイバー犯罪で適用される罪種

警察が「サイバー犯罪」として扱う事件は非常に広く、さまざまな罪種が適用されると考えられます。サイバー犯罪で適用される罪種の例を、いくつかみていきましょう。

  1. (1)不正アクセス禁止法違反

    サイバー犯罪の3類型にも挙げられているのが「不正アクセス禁止法違反」です。
    正式には「不正アクセス行為の禁止等に関する法律」と言い、不正アクセス行為やこれらを助長する行為を禁止しています。

    不正アクセス禁止法違反にあたるものとしては、次のような行為が挙げられます。

    1. ① 他人のID・パスワードを悪用する行為(第2条4項1号)
    2. ② コンピュータープログラムの不備をつく行為(第2条4項2号・3号)
      ※①と②が法律上「不正アクセス行為」と定義されている行為です。
    3. ③ 他人のID・パスワードを不正に取得する行為(第4条)
    4. ④ 不正アクセスを助長する行為(第5条)
    5. ⑤ 他人のID・パスワードを不正に保管する行為(第6条)
    6. ⑥ ID・パスワードの入力を不正に要求する行為(第7条)


    ①および②の行為については、3年以下の懲役または100万円以下の罰金(第11条)が、③~⑥の行為については、1年以下の懲役または50万円以下の罰金(第12条)が科せられます。

  2. (2)コンピューター犯罪に関する罪の例

    ●電子計算機使用詐欺
    他人のクレジットカード情報を利用してインターネットショッピングで買い物をするなどの行為は、刑法第246条の2に規定されている「電子計算機使用詐欺罪」にあたります。
    偽サイトを作って商品代金の名目でお金をだまし取る行為や、不正データを作り出すことで口座の預金額を増やす行為なども電子計算機使用詐欺罪にあたる行為です。

    法定刑は10年以下の懲役で、罰金刑の規定がない重罪です

    ●電子計算機損壊等業務妨害罪
    他人のコンピューターデータを改ざん・破壊する、本来の目的に反する動作をさせて人の業務を妨害するといった行為は、刑法第234条の2に規定されている「電子計算機損壊等業務妨害罪」にあたります。

    法定刑は、5年以下の懲役または100万円以下の罰金です。

  3. (3)ネットワーク犯罪に関する罪の例

    ネットワーク犯罪に分類される犯罪は特に幅広い印象ですが、検挙状況を参考にすると、次のようなものがあります。

    • 児童買春・児童ポルノ禁止法違反
    • 詐欺罪
    • 青少年健全育成条例違反
    • わいせつ物頒布罪
    • 脅迫罪
    • ストーカー規制法違反
    • 名誉毀損(きそん)罪
    • 種の保存法違反
    • 商標法違反
    • チケット不正転売禁止法違反


    主にわいせつ犯罪や財産犯罪が多い傾向ですが、なかにはストーカーや知的財産権に関するものもあり、罪種としては多種多様です。近年では、医薬品や衛生用品の販売・転売にからんで、医薬品医療機器等法や国民生活安定緊急措置法の違反事件でも検挙事例が報告されています。

3、サイバー犯罪の被疑者として逮捕された場合の流れ

サイバー犯罪の被疑者として警察に逮捕されると、原則として次のような刑事手続きを受けます。

【逮捕】
身柄を拘束されたうえで警察署の留置場に置かれ、捜査官による取り調べを受けます。

【送致】
逮捕から48時間以内に、身柄を釈放するか否かの判断が行われます。その結果、身柄付きで検察官へ送る必要があると判断された場合には、身柄と関係書類が検察官に引き継がれます。

【勾留請求】
送致を受けた検察官が身柄拘束の延長を請求する手続きです。送致後、24時間以内かつ逮捕から72時間以内に請求する必要があります。勾留請求をしない場合、検察官は、被疑者の身柄を釈放する必要があります。

【勾留】
裁判官が勾留を認めると、原則10日間の身体拘束がなされることとなります。その後、さらに延長する必要があると判断された場合には、最大10日間の勾留延長がなされます。

【起訴】
検察官が「刑事裁判で罪を問うべきだ」と判断した場合、勾留が満期を迎える日までに裁判所に起訴されます。
起訴されない場合は不起訴処分となり、釈放されます。

【刑事裁判】
原則として公開の裁判で裁判官の審理を受けます。
最終的に判決が下され、有罪・無罪が、そして有罪であれば量刑が言い渡されます。

4、サイバー犯罪に加担してしまった場合にするべきこと

サイバー犯罪の多くはインターネットを利用するため匿名性が高く、被害が発覚してもすぐに誰の犯行なのかはわからないケースが少なくありません。しかし、アクセスログなどの証跡をたどれば特定できる可能性は高く、逃れ続けるのは難しいでしょう。

サイバー犯罪に加担してしまった場合に、するべきことをみていきましょう。

  1. (1)弁護士に相談する

    まずは、刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士への相談を急ぎましょう。弁護士に相談すれば、自分の行為がどのような犯罪にあたるのかを判断できます。

    グループの一端として加担してしまった、自らが主犯となって犯行に及んでいたなどによって量刑も大きく変わる可能性がありますが、弁護士に相談することでこれらの事実関係を法的な観点から整理することができます。

  2. (2)自首する

    サイバー犯罪に加担してしまった場合の解決策として考えられるのが「自首」です。

    自首とは、罪を犯した者が捜査機関に発覚するよりも前に自ら申告する行為を言います。自らの犯行を明かすことになるので捜査対象になってしまう事態は免れませんが、刑法第42条1項の定めによる刑の減軽の可能性が生じるという利点があります。

    また、すすんで捜査に協力する姿勢を示すことで、逃亡・証拠隠滅のおそれを否定すべき事情のひとつとすることができるので、逮捕の回避にもつながることが期待できます。

    弁護士に依頼すれば、自首の同行も可能です。
    弁護士が同行することで、正しく自首の受理が行われるよう促すことができます。また、任意捜査の段階であれば、取り調べに弁護士の立ち会いを申し入れることや、立ち会いが認められない場合でも近くで弁護士が待機することによって、必要に応じて取調室から出て外で待機している弁護士にアドバイスを求めることができます。

    自首が有効な状態なのか、自首をすべきなのかの判断についてもアドバイスが得られるので、まずは弁護士に相談するべきでしょう。

  3. (3)被害者との示談交渉をすすめる

    逮捕や重い刑罰の回避を目指す場合に有効な方策となるのが、被害者との「示談」です。
    被害者に対してしっかりと謝罪をして被害弁償を行うことで、被害者に許しをもらい、警察への被害届や告訴を取り下げてもらえるよう努めます。

    被害者との示談交渉は、逮捕されてしまったあとでも不起訴処分の獲得や減軽・執行猶予の獲得に大きく影響します。

    ただし、被害者と直接交渉することは困難な場合がありますさらなるトラブルに発展する可能性もあるため、弁護士を介して交渉を行うことが望ましいです

5、まとめ

サイバー犯罪の多くは、パソコンなどの端末とインターネットさえ整備されていれば犯行が可能で、しかも匿名性が高いため「自分が犯人だとバレることはないだろう」と軽視しがちです。しかし、インターネットに接続して犯行に及んでいる以上、何らかの形で証跡が残っている可能性は十分にあります。サイバー犯罪に加担してしまった場合は解決に向けてアクションを起こしたほうが良いでしょう。

サイバー犯罪に加担してしまい、逮捕や刑罰に不安を感じているなら、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスにご相談ください。
刑事事件の解決実績を豊富にもつ弁護士が、どのような犯罪にあたるのかの判断や、解決に向けた方策を提案し、全力でサポートします。

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