夫が電車で置き引きをして逮捕!? 量刑や逮捕後の流れは?

2019年03月27日
  • 財産事件
  • 置き引き
  • 電車
夫が電車で置き引きをして逮捕!? 量刑や逮捕後の流れは?

千葉県下ではもちろん、全国各地で毎日のように発生しているのが置き引き事件です。平成29年11月にも、JR取手駅に停車中の電車内で置き引き事件が起き、自称無職の男が我孫子警察署で逮捕されています。

そこで、今回は置き引きで逮捕された場合、どのような罪に該当するのかなどの基礎知識から、量刑、逮捕後の流れなどを、柏オフィスの弁護士が解説します。

1、置き引きって何?

置き引きとは、置いてある誰かの所有物を持ち去ることを指します。置き引きが発生しやすいのは、電車・バスなどの公共交通機関を中心とした人や車両の通行が多い場所や、店舗など荷物から手を放して何かをする可能性がある場所です。

置き引きは、「置いてあるもの」を盗むという手口の犯罪です。他人の家に侵入して盗難する空き巣や、他人が持っているカバンなどを奪う「ひったくり」などと比較すると、罪の意識が生まれにくいといわれています。

平成29年の警視庁の統計によると、置き引きの検挙人数は6237名と、他人の家などに侵入しないで行われる窃盗のなかでは「万引き」に次いで多くの被疑者が検挙されていることが明らかになっています。

2、置き引きで問われる可能性がある「窃盗罪」とは?

置き引きは、状況によって「窃盗罪」か「占有離脱物横領罪」のどちらかの罪に問われる可能性があります。まずは、「窃盗罪」の概要と量刑について解説します。

  1. (1)窃盗罪とは

    窃盗罪は、刑法第235条によって「他人の財物を窃取した者は、窃盗の罪とし」と規定された犯罪です。簡単にいうと、「人のものを盗んだら窃盗罪」ということになるでしょう。

    なお、「置き引き」が窃盗罪とみなされるケースは「持ち主が支配しているもの」を盗んだ場合です。

    たとえば「持ち主が電車内でバッグを床に置いて椅子に座り、うとうとしていた」という状態で、床に置かれていたバッグを持ち去ったとしましょう。このケースでは、バッグは持ち主の支配下にあると判断され、「窃盗罪」が適用される可能性があります。

    他方、「電車の網棚に置き忘れられていたカバンを勝手に持ち帰った」場合は、持ち主の支配下にないとみなされることが多い傾向にあります。つまり、窃盗罪には該当しないということです。もちろん、そのほかの刑法犯に該当することになるため、持ち帰っていいということではありません。

  2. (2)窃盗罪の量刑

    窃盗罪の量刑は、刑法第235条によって「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する」と規定されています。

    置き引きを行い、窃盗罪が成立してしまうと、懲役、罰金共に重い量刑となってしまうと考えておいてよいでしょう。

3、置き引きで問われる可能性がある「占有離脱物横領罪」とは?

置き引きで問われる可能性があるもうひとつの罪が「占有離脱物横領罪」です。「置き引き」という行為が、前述の窃盗に該当しないケースがあります。そのとき、「占有離脱物横領罪」に問われる可能性があります。

  1. (1)占有離脱物横領罪

    占有離脱物横領罪は、「遺失物、漂流物その他占有を離れた他人の物を横領したものは」と刑法第254条で規定されています。

    前述のとおり、「窃盗罪」は、他人の支配下にあるものを盗んだ場合に該当しますが、「占有離脱物横領罪」は、他人の手元から離れて管理下にないものを盗んだ場合に適用されるのです。窃盗罪の項で一例とした「電車の網棚に置き忘れられたカバンを勝手に持ち帰った」場合は、「占有離脱物横領罪」が適用される可能性が高いでしょう。

    ただし、窃盗罪と占有離脱物横領罪の境界線は、曖昧な部分もあり、どちらを適用するかについて、争いになることもあります。最終的に「占有しているか」「持ち主の支配下にあるか」などは、持ち主との距離感や、手元を離れている時間にも関係することになるのです。つまり、状況に応じてどちらが適用されるかをその都度判断する必要があるでしょう。

  2. (2)占有離脱物横領罪の量刑

    占有離脱物横領罪の量刑は、刑法第254条では「1年以下の懲役又は10万円以下の罰金若しくは科料に処する」と規定されています。

    お気づきでしょうか? 窃盗罪の量刑は「10年以下の懲役又は50万円以下の罰金」と規定されています。つまり、占有離脱物横領罪が成立するのか、もしくは窃盗罪が成立するのかによって、懲役の年数の幅も、罰金刑で科されることになる額も、大きく異なることになるのです。

    だからこそ、置き引きの被疑者として逮捕された場合は、「どちらの罪が問われ、起訴されるのか?」が非常に重要になります。状況によって判断がわかれるところですが、どのような対策をすべきか、どちらになる可能性が高いかなどをあらかじめ知っておきたい方も多いでしょう。その際は、刑事事件に対応した実績が豊富な弁護士に相談することをおすすめします。

4、置き引きで逮捕されたあとの流れ

置き引きで逮捕されたあとの流れを時系列とともに解説します。置き引きの被疑者として逮捕された場合、まずは48時間以内に警察の取り調べが行われます。そして24時間以内に検察に送致されます。

検察が、引き続き身柄を拘束したまま捜査を行う「勾留(こうりゅう)」が必要だと判断した場合は、最長20日間、留置署や拘置所で寝泊まりすることになります。もちろんそうなれば、仕事や学校へ行くことができません。逃走や証拠隠滅の恐れがないと判断された場合は「在宅事件扱い」といって勾留されず、自宅から取り調べなどに通うこともあるでしょう。

その後、「公判請求」として起訴されると、保釈が認められない限り、刑事裁判が終わるまで「起訴後勾留」が続きます。「略式請求」として起訴されたときは、身柄の拘束は解かれますが、書類手続きのみの刑事裁判が行われます。

なお、検察が「不起訴」とした場合は、身柄が解放されて、処罰を受けることもありません。前科はつきませんが、「前歴」といって警察や検察で捜査を受けた履歴は残ってしまいます。

万が一、あなたの家族が置き引きの容疑で逮捕されてしまったあと、弁護士に依頼すると、まずは長期にわたる身柄拘束を回避するよう行動しつつ、「不起訴」を目指すことになります。

ただし、起訴するのか、不起訴にするのかは「検察官」が決定します。たとえば罪を犯したことが明らかであっても、全件が起訴されるわけではありません。被害者が処罰を望んでいなかったり、被害者への賠償が済んでいたりと、さまざまな背景が考慮されます。最終的に情状が酌量され、検察官の裁量によって不起訴になることもあるためです。

検察官が起訴か不起訴かを判断する条件の1例は以下のとおりです。

  • 犯行内容や動機に悪質性があるかどうか
  • 被害金額の大小
  • 示談が成立しているかどうか(被害者が処罰を望んでいないと明言するなど)
  • 賠償責任を果たしているかどうか
  • 前科、前歴の有無
  • 反省しているかどうか


たとえば前科前歴がなく、反省していて被害者との示談が完了していれば「不起訴」になる可能性もあるでしょう。つまり、置き引きで逮捕されたら、逮捕されてから起訴されるまでの期間に被害者と示談することをおすすめします。

ただし、逮捕から勾留が決まるまでの最大72時間の間は、たとえ家族でも面会が制限されます。本人も身柄を拘束されてしまうため、加害者本人やその家族だけで示談を行うことは難しいものです。そこで、制限なく面会を行え、第三者として冷静な立場で交渉を行える弁護士に、弁護活動だけでなく「示談交渉」を依頼することをおすすめします。できるだけ早い時点で示談が成立すれば、起訴を回避できる可能性が高まるだけでなく、早期に身柄が解放されるきっかけともなりえます。今後の生活に受けるダメージを最小限に抑えることができるでしょう。

5、刑事裁判の流れ

取り調べや勾留後、窃盗罪や占有離脱物横領罪で起訴されることが決定すると「刑事裁判」で有罪か無罪かが問われます。日本では、刑事裁判の有罪率は99.9%と非常に高く、起訴されたらほぼ有罪になるといってもよいでしょう。

だからこそ、刑事裁判において重要なのは、「執行猶予」を獲得して、刑務所行きを回避することといえます。

刑事裁判に参加するのは、置き引きで起訴された「被告人」と被告人の弁護士、起訴した検察官、そして裁判官です。裁判の内容を記録する書記官や速記官も参加します。場合によっては、置き引きの被害者や証人が参加することもあります。

刑事裁判は以下の流れで進みます。

  • 冒頭手続き……本人確認や起訴状の朗読、黙秘権の説明などが行われます。
  • 証拠調べ手続き……検察官が「被告が犯人であること」を立証します。
  • 弁論手続き……検察官が事件の事実等を述べて求刑を行います。被告人側の弁護人も、事実等の意見を述べます。最後には「被告人の最終陳述」が行われます。
  • 判決宣告手続き……裁判官が判決を言い渡します。有罪か無罪かを述べるとともに、量刑もここで確定します。この判決に納得できない場合は、高等裁判所に控訴することになります。

6、まとめ

置き引きで逮捕されると、「窃盗罪」か「占有離脱物横領罪」に問われる可能性があります。どちらになるかは、置き引きの状況によって異なるのでケース・バイ・ケースで判断することになるでしょう。

置き引きのような刑事事件の場合、逮捕後「起訴」されるかどうかが重要です。日本では刑事裁判の有罪率は99.9%と非常に高く、刑事裁判で無罪を勝ち取るのは困難といわれています。しかし、逮捕後「不起訴」となれば、前科はつきません。

置き引きで不起訴になるために重要なのは、早い段階に被害者と示談をすることです。万が一あなたの家族が置き引きで逮捕された場合は、速やかに窃盗などの刑事事件に対応した経験が豊富な弁護士に相談し、適切な対策を練ることが重要です。

ベリーベスト法律事務所・柏オフィスでも、状況に応じてベストな対策をアドバイスいたします。お気軽に相談してください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています