知らないうちに、詐欺行為にかかわっていた!? 逮捕されたらどうなる?

2019年04月05日
  • 財産事件
  • 詐欺罪
知らないうちに、詐欺行為にかかわっていた!? 逮捕されたらどうなる?

毎日のように報道されている「振り込め詐欺」をはじめとする特殊詐欺は、知能犯に分類されます。平成29年警察白書によると、千葉県下での知能犯は平成28年で2063件認知され、検挙人員は451名にのぼります。千葉県柏市でも、2017年11月、詐欺グループで「受け子」の統括をしていた男が逮捕されたという報道がありました。

組織的な特殊詐欺では役割を細分化し、もっとも逮捕される可能性が高い現金の受け取り役を「受け子」とするケースが少なくないようです。たとえあなたの家族が、犯罪行為にかかわっていることを知らずに受け子となっていたとしても、逮捕されるリスクは当然にあります。

それでは、詐欺罪の定義や、あなたの家族が詐欺罪で逮捕されてしまった場合にどうすればよいかを、柏オフィスの弁護士が解説します。

1、詐欺罪とは

詐欺被害のニュースは毎日のように報じられています。
それだけ多数発生している「詐欺」とは、いったいどのような行為で成立するのでしょうか。詐欺罪の概要や構成要件について解説していきます。

  1. (1)罪が問われる根拠

    詐欺罪は刑法第246条に定められています。

    簡単にいえば、人を欺いて財産上の利益を得たり、その利益を他の人に与えたりすることを犯罪と規定するとともに、その刑罰も規定しています。有罪となれば「10年以下の懲役」を科すとされています。また、詐欺罪は刑法第250条によって、未遂であっても同様に罰せられることになります。

    なお、詐欺罪には罰金刑はありません。財産を収めることでその罪を償うことができない、非常に重い刑罰が処されることになる犯罪です。

  2. (2)詐欺罪が成立する条件と未遂となるポイント

    犯罪が成立するための条件を「構成要件」と呼びます。

    詐欺罪が認められる場合には、だまされたという事実だけではなく、一連の流れ(条件)が必要となります。以下の構成要件4つすべてを満たした場合にのみ詐欺罪が成立します。

    ●欺罔(ぎもう)行為
    詐欺罪における「欺罔行為(ぎもうこうい)」とは、財産を引き渡すようにうそをつき誘導する行為のことを指します。この時点で詐欺の着手とみなされ、詐欺未遂罪に問われる可能性があります。

    ただし、財産の引き渡しの誘導を目的としていないうそであれば、欺罔行為とはされないでしょう。

    ●相手の錯誤(さくご)
    加害者の欺罔行為により、被害者が事実ではないことを事実と認識することを「錯誤(さくご)」といいます。加害者がだますことによって、被害者が財産を引き渡すきっかけになることが、詐欺罪における「相手の錯誤」です。

    財産の引き渡しの段階で被害者がうそだと見抜いている、つまり錯誤の状態にない場合は、詐欺未遂罪になります。

    ●財産の処分行為・加害者への利益の移転
    詐欺罪で用いられる「処分」とは、購入の契約や契約書への署名捺印など、被害者の意思に基づき財産に関する手続きをすることを指します。財産の処分や利益の移転の対象は金銭だけではなく、サービスの提供も含まれます。

    詐欺罪は、財産の引き渡しや処分、利益の移転が完了した時点で既遂となります。したがって、金品を渡す現場で取り押さえ逮捕された場合は、引き渡しが完了していないため、「未遂」とされます。

    ●因果関係
    上記の「欺罔」「欺罔による相手の錯誤」「財産の処分行為や移転」が、一連の流れとして因果関係がある場合に、詐欺罪が成立します。

    したがって、たとえば脅されて恐怖心により財産の引き渡しや処分をしたケースは、詐欺罪には該当しませんが、恐喝罪など別の罪状となる可能性があるでしょう。

    ●詐欺罪の故意
    詐欺罪の故意が必要です。人から財産をだまし取っていることを知っていることです。

    ●不法領得の意思
    不法領得の意思とは、他人の物を自分の物として利用・処分しようとする意思です。

2、詐欺罪の刑期はどのように決まるのか

前述のとおり、詐欺罪の刑期は「10年以下の懲役」と定められています。有期懲役の下限は1か月ですので(刑法第12条1項)、1か月以上10年以下の懲役となります。

ただし、最長の刑期は、損害額の大きさ、事件を起こした回数などで上限が変わるので注意が必要です。詐欺未遂罪も同様の量刑が設定されていますが、実際に詐欺行為によって金品を手にしているケースより量刑は軽くなるでしょう。

  1. (1)組織的犯罪の場合は、1年以上の有期懲役

    一般的に、組織的な詐欺は、個人で詐欺行為をはたらいたケースよりも悪質な行為であると判断されます。

    組織的に詐欺行為におよんだ場合は、「1年以上の有期懲役」と罪が重くなります(組織的な犯罪の処罰および犯罪収益の規制等に関する法律第3条第1項第13号)。 有期懲役の上限は20年ですので(刑法第12条1項)、1年以上20年以下の懲役となります。

  2. (2)併合罪は刑期の上限が1.5倍、累犯(るいはん)は2倍

    初犯で1回のみの詐欺の場合は、10年以内の懲役が言い渡されます。しかし、初犯であっても、複数回の詐欺事件についての裁判を受ける場合は、「併合罪」となり、刑期が1.5倍(15年)まで延びます。

    さらに、初犯ではなく、懲役に処せられた者が、刑の終了、または免除の日から五年以内に再び罪を犯して、有期懲役に処せられた場合は、「累犯(るいはん)」となり、刑期の上限が2倍(20年)まで延びることを覚えておきましょう。

  3. (3)詐欺罪でも執行猶予になる可能性はある?

    罰金刑の設定がないため、初犯でも懲役が言い渡されることになる詐欺罪ですが、執行猶予を言い渡されることもあります。

    以下の3点に該当するとき、執行猶予を獲得できる可能性が考えられるでしょう。

    • 被害額が少ない
    • 悪質ではない
    • 被害者との示談が成立している


    つまり、詐欺の態様が悪質ではない、被害者が罪を許していると判断されれば、執行猶予になる可能性は高まるということです。

    執行猶予付きの判決を言い渡されれば、有罪となるため「前科」はつきますが、直ちに刑務所へ収監されることはありません。裁判で言い渡された期間、特に問題を起こさず生活できれば、刑務所に入る必要もないでしょう。

3、詐欺罪で逮捕! その後どうなる?

詐欺罪で逮捕される場合の逮捕方法は、現行犯逮捕と通常逮捕の2パターンが考えられます。

  1. (1)現行犯逮捕

    現行犯逮捕とは、犯行中や犯行直後に、逮捕状なしに犯人の身柄を拘束することをいいます。警察官だけではなく、一般の目撃者などによっても行われることがあります。

    目撃者や被害者だけで取り押さえた場合は警察に通報し、そのまま警察官により警察署や交番に連行されることになるでしょう。

  2. (2)通常逮捕

    通常逮捕とは、逮捕状を示して逮捕する方式です。

    通常逮捕の流れは、犯罪が発覚したのちに、警察などの捜査機関が捜査によって罪を犯したと疑われる人物「被疑者(ひぎしゃ)」を特定します。被疑者として特定した上で、逃亡や証拠隠滅の可能性があると判断したとき、該当犯罪の証拠をもとに、裁判所に対して逮捕状の発行を申請することになるでしょう。

    裁判所は、その嫌疑が妥当であり、なおかつ、逃亡や証拠隠滅の可能性がある場合にのみ、逮捕状の発付をします。捜査機関は、発付された逮捕状をもって被疑者の元に向かい、逮捕状を示して、被疑者の名前と疑われている罪状を読み上げて、身柄を拘束します。

  3. (3)詐欺罪で逮捕された場合の拘束期間は?

    どちらの方式で逮捕された場合でも、逮捕後の流れは同じです。
    まず警察で48時間以内の取り調べを受けます。その後、検察に送致するかの判断がなされ、検察に送致された場合は、そこからさらに24時間以内の取り調べを受けます。

    検察は、身柄の拘束を続けて取り調べをする必要があると判断した場合は、裁判所に対し「勾留(こうりゅう)請求」を行います。ここで、勾留請求がなければ釈放されます。

    ただし、「釈放」といっても、無罪放免という意味ではありません。嫌疑がないという理由で釈放となった場合以外は、在宅事件扱いとして、起訴か不起訴か決まるまで被疑者は、これまでどおりの生活を送りながら、要請に応じて捜査を受け続けることになる可能性が高いでしょう。

    裁判所によって勾留が認められた場合は10日間、延長が認められれば最長でさらに10日間も拘置所で過ごし、検察の起訴・不起訴の判断を待つことになります。なお、起訴された場合には、勾留の執行停止や保釈が認められない限り留置場を出ることができないと考えておきましょう。

    裁判を受け、執行猶予の判決が言い渡されたなら拘置所を出ることができます。しかし、判決が出るまで、逮捕から数か月または1年以上におよぶ可能性もあります。執行猶予がつかなければ、そのまま収監され懲役刑に服することとなります。

4、詐欺罪で逮捕された場合はどう対応すべき?

もし家族や知り合いが詐欺の容疑で逮捕されてしまった場合、まずとるべき行動は弁護士に依頼することです。

  1. (1)逮捕から72時間以内に弁護士に依頼する

    逮捕後は、家族が被疑者と面会することは基本的にできません。ただし、弁護士であれば、自由に何回でも接見することができます。

    いち早く弁護士を依頼し、本人と取り調べの対応方針を相談、家族との連絡の仲立ちを依頼することで、日常生活に戻るための最善策をとることができるでしょう。

    前述のとおり、検察による「勾留」が認められると10日以上の身柄拘束となる可能性が高まります。早期釈放を目指すためには、勾留請求前、つまり逮捕後72時間以内の弁護活動がカギとなります。捜査に協力的で、かつ身元引受人が存在し、「逃亡と証拠隠滅のおそれがない」と判断されれば、釈放される可能性が高まります。

  2. (2)示談交渉を依頼する

    罪を認める場合は、弁護士を通じて、被害者に対し被害を賠償し謝罪する示談交渉を依頼することをおすすめします。

    刑事事件における示談では、弁護士は被害者から、罪を許し処罰を望まないという意思を示す「宥恕(ゆうじょ)文言」を得ることを目指します。示談が成立すれば、早期釈放や不起訴、執行猶予や量刑が軽くなる可能性が高まります。

    示談成立のタイミングが早ければ早いほど、その後の生活への影響を小さくすることが望めます。刑事事件に対応した経験や示談交渉の経験豊富な弁護士に依頼することで、短期間で示談が成立することが期待できるでしょう。

5、まとめ

詐欺罪で逮捕された場合、余罪の追及、組織的なつながりを解明するための捜査などで、取り調べが長期にわたる可能性があります。たとえ詐欺の全容を知らない立場であったとしても、有罪判決が下されるケースがあるのです。

詐欺と知っていたかの認識については、取り調べでの供述の仕方ひとつで有罪か無罪かが大きく左右されうることです。逮捕後ならずとも、嫌疑がかかった段階から、どのように対応すべきか弁護士と相談することを強くおすすめします。要望があれば、弁護士が任意聴取に同行することも可能です。

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