魚を逃したら器物損壊で逮捕? 器物損壊で逮捕される前に知っておくべきこと
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2017年8月、千葉県柏市の小学校で侵入者により窓ガラスが割られる事件が発生しました。柏警察署の発表によると、建造物侵入と器物損壊の疑いで30代の男性ら2名を逮捕したとのことです。
器物損壊は、軽い犯罪という印象があるかもしれません。しかしながら、れっきとした刑法犯罪です。また物を壊すこと以外にも、器物損壊等罪に該当する行為があります。また、器物損壊等罪で逮捕され有罪となった場合、たとえ罰金刑や執行猶予付き判決が出たとしても、前科がついてしまう点に注意が必要です。
器物損壊等罪に問われうる行為や罰則、早期解決のために必要な行動について、柏オフィスの弁護士が解説します。
1、器物損壊とは
器物損壊等罪とは、端的にいえば「他人の財産的価値のある物を壊した・傷つけた」ときに問われる罪です。具体的には、どのような行為が器物損壊等罪に該当するのか確認していきましょう。
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(1)器物損壊等罪の定義と法定刑
器物損壊等罪は刑法第261条に定められています。「他人の物を損壊し、または傷害した者は、3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料(かりょう)に処されます。
器物損壊等罪の対象物は物だけでなく、動物も含まれます。他人の所有物を壊すと「損壊」、他人の所有する動物を傷つけると「傷害」になります(動物傷害罪)。また、条文で示す「損壊」とは「物の本来の効用を失わせしめる行為」とされています。
なお、科料とは、1000円以上1万円未満の金銭を強制徴収する罰則です。 -
(2)器物損壊等罪に問われるケース
自分に所有権がなく、財産的価値のある物を壊したり傷つけたり、物の本来の効用を失わせた場合は、器物損壊等罪に問われます。
具体的には以下のようなケースで器物損壊等罪に該当する可能性があります。- 他人の家の生垣をわざと壊した
- 道や公共施設の案内板に、元の案内が読めなくなるほど落書きをした
- 商品をわざと水に濡らして商品価値を失わせた
- 他人のペットをわざと逃がした
- 他人の所有物を、許可なく勝手に廃棄した
ただし、他人の物を勝手に持ち出した場合、「不法領得の意思(自分のものにしてやろうという考え)」があれば、器物損壊等罪ではなく、窃盗罪に問われます。一方、自分のものにする目的でなく、嫌がらせとして持ち去ったり、廃棄したりする場合は、器物損壊等罪に該当する可能性が出てきます。
また、自己の物であっても、差押えを受け、物権を負担し、又は賃貸したものを損壊し、又は傷害したときは、器物損壊等罪に該当する可能性があります。 -
(3)器物損壊等罪に問われないケース
状況によっては、他人の所有物を破損したが、器物損壊等罪に問われないケースもあります。
●故意ではなかった
刑法は「故意がある行為を処罰するための法律」であるため、わざとではなく転んで物を壊したような場合は、刑法で裁かれる対象とはなりません。
●加害者が14歳未満だった
「14歳に満たない者の行為は、罰しない」と刑法41条に定義されています。したがって、器物損壊をした人物が14歳未満であれば、刑法によって裁かれることはありません。もちろん、無罪放免というわけではなく、14歳未満の少年が刑法犯罪をおかした場合、必要に応じて逮捕、もしくは保護されて取り調べを受けることになります。その後「触法少年」として、家庭裁判所の審判を受け、更生を図ることとなります。
●心神喪失状態だった
「心神喪失」とは、精神疾患や薬物中毒などで行為の善悪判断がつかなくなっている状態、またその判断にしたがって行動する能力がない状態を指します。刑法第39条において「心神喪失者の行為は、いかなるものであっても罰しない」と定められています。なお「酒に酔っていて覚えていない」といういわゆる「酩酊状態」は、過去の判例から心神喪失状態とはいえないと考えることが一般的です。
●被害者が告訴しなかった
器物損壊罪は親告罪のため、被害者が被害届を出し、さらに処罰をのぞむ「告訴」をして初めて立件されます。つまり、被害者が告訴しなければ、器物破損罪では逮捕されない、刑事罰として罪を裁かれることはないと考えてよいでしょう。もちろん、前科もつかないことになります。
ただし、いずれのケースにおいても、自分の行為によって何らかの被害が生じたならば、民事上の損害賠償責任は発生します。したがって、刑事事件として器物損壊等罪に問われるか否かに関わりなく、被害者から民事訴訟で損害賠償請求がなされる可能性があることは覚えておきましょう。
2、器物損壊罪での逮捕
器物損壊罪での逮捕のパターンはふたつあります。
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(1)現行犯逮捕
実際に物を壊している現場を目撃され、その場で犯人を取り押さえるのが現行犯逮捕です。
現行犯逮捕は、警察だけではなく民間人でも可能です。被害者や目撃者が、その場で犯人を取り押さえた場合も現行犯逮捕が成立します。 -
(2)通常逮捕
通常逮捕は、逮捕状による逮捕です。
被害が生じた後日に、被害者から刑事告訴された場合は、警察が捜査を開始します。捜査によって被疑者が判明し、逮捕に相当するとの判断がなされたら、警察から裁判所に逮捕状を請求します。これが認められた場合、捜査員は発行された逮捕状を持って被疑者の元に赴き、容疑と罪状を被疑者に述べた上で身柄を拘束(逮捕)することになります。
3、器物損壊事件の早期解決のために弁護士ができること
器物損壊事件を早期に解決するために、弁護士に依頼するメリットを解説します。重要な点は、器物損壊等罪は、親告罪であるということです。
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(1)示談を成立させ、告訴を回避する
最初にやるべきことは、被害者に対する示談交渉を行い、損害賠償責任を果たすことと考えられます。
「示談」とは、事件の当事者同士で話し合い、解決を目指すことを指します。示談が成立し、被害者が賠償内容に納得して刑事告訴を取り下げる、または告訴しなかった場合は、罪に問われず、逮捕されることもありません。
ただし、加害者と被害者が直接交渉をすることは非常に難しいものです。被害者の処罰感情にも配慮しつつ、加害者にも無理のない支払い方法で示談を迅速に取りまとめるには、弁護士の経験と知識が必須といえるでしょう。
示談交渉の経験豊富な弁護士に依頼すれば、示談を成立させ、告訴を回避できる可能性が高まります。 -
(2)早期釈放・在宅事件扱いを目指す
被害額が高額、処罰感情が強いケースでは、被害者から器物損壊等罪で告訴され、逮捕に至ってしまう事態もありえるでしょう。逮捕後は基本的に、家族であっても面会は許可されず、外部とは連絡が取れません。例外として、弁護士であれば、何度でも自由に接見することができます。
弁護士は被疑者の状況を把握した上で、意見書を作成し、捜査機関に対し、被疑者に証拠隠滅や逃亡のおそれがないことを主張します。その主張が認められれば、身柄は釈放され自宅に帰ることができます。
以降は「在宅事件扱い」となり、出頭要請に応じ取り調べを受けます。 -
(3)起訴の回避を目指す
告訴を受けて、警察や検察が取り調べを開始したあとも、弁護士は、取り調べの対応と平行して、示談交渉や被疑者の無実を主張する証拠を集めるなどの弁護活動を行います。
結果「嫌疑なし」や「嫌疑不十分」、または「被害者による告訴状の取り下げ」が行われた場合は「不起訴」となります。起訴が回避されれば、前歴は残りますが、処罰はされないため、前科がつくことはありません。もちろん身柄も直ちに解放されます。
4、器物損壊を否認する場合も、弁護士のサポートは必須
器物損壊の事実はないと主張する場合であればなおさら、弁護士の助けは必須といえるでしょう。捜査機関が逮捕に踏み切る場合は、相応の証拠や疑うに足る根拠があるのが通常です。そのため、警察や検察は、罪を認めるよう長時間にわたって厳しい言葉を浴びせかけてくる可能性もあります。ひとりで黙秘や否認を続けるには相当な精神力を要します。
弁護士は、接見で被疑者と十分にコミュニケーションを取り、精神的にもサポートを行います。動けない被疑者に代わって無実を証明するための証拠を集めるなど、自分の代わりに動いてもらうことができます。
もちろん、裁判での弁護も引き続き依頼することができます。
5、まとめと器物損壊罪のリスク
器物損壊等罪はれっきとした犯罪です。万が一、有罪となり、前科がついてしまった場合、結婚や就職といった人生の大事な場面で大きな不利益を被る可能性は否定できません。
このようなリスクを回避するためにも、器物損壊事件に関わってしまったかもしれないと不安な場合には、すぐにベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士に相談してください。過剰に重い処罰を受けないよう、状況に適した弁護活動を行います。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています