ナイフを持ち歩くと銃刀法違反? 刃渡り何センチまでなら許されるか

2023年09月26日
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ナイフを持ち歩くと銃刀法違反? 刃渡り何センチまでなら許されるか

キャンプブームの流れもあり、ツールナイフなどに興味を持つ方は少なくないでしょう。しかし、正当な理由がないのに一定以上の刃渡りを持つナイフを所持していると、取り締まりの対象になりえることをご存じでしょうか。なお、千葉県警察のウェブサイトでは、ナイフなど葉物の携帯規制について解説したページを設けています。

では、料理人など仕事で包丁を持参する場合や休日にキャンプで使用するためキャンプ用ナイフを持参した場合は銃刀法違反になるのでしょうか。どのような場合に銃刀法違反になるのか、また、万一、逮捕された場合にはどうすればよいのかについてベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説します。

1、銃刀法とは

銃刀法とは、「銃砲刀剣類所持等取締法」の略で、銃や刃物を正当な理由なく所持することを禁じている法律です。銃砲、刀剣類等の所持を規制することで危害を予防することを目的としています。街にいる人たちが銃や刀を所持していたら、とても危険なので規制しているわけです。

包丁を手に持って街を歩いていれば、すぐに通報されて逮捕されるのは想像できると思いますが、料理人が出張して料理する場合に包丁を所持する場合やキャンプで使うためナイフを所持する行為も捕まるのでしょうか。

この点について、銃刀法では、刃体の長さが6センチメートルを超える刃物については、「何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、これを携帯してはならない。」と定めています。

ここでいう業務とは、社会生活上の地位に基づき、反復継続して刃物を使用することがその人にとって仕事であり、刃物を使うことが業務にあたる場合をいいます。

料理人は、包丁を反復継続して仕事として業務で使う人なので、取り締まりの対象にはなりません。

では、キャンプで使うためナイフを所持する場合についてはどうでしょうか。キャンプにおいて料理をすることは当然想定されることであり、自宅などからキャンプ場まで移動しなければならないので、包丁を携帯することは正当な理由といえます。ただ、キャンプを理由にすればナイフ等の携帯が認められるとすると、不当な目的を持った人が、「キャンプに行くため」と主張することが考えられます。

そのため、単に「キャンプに行くため」という理由だけではなく、キャンプ道具の有無、キャンプ場の予約状況、同行者の状況などを総合的に考量して判断されます。たとえば、ナイフ以外のキャンプ道具は何も持っておらず、具体的な行き先やキャンプを一緒にする人が挙げられないなどという場合、正当な理由のある携帯と主張しても認められないでしょう。

その他、正当理由にあたる例としては店舗で包丁を購入し、自宅に持ち帰る場合などがあります。

2、銃刀法違反の基準について

銃刀法にいう、銃砲刀剣類とはどのようなものをいうのでしょうか。銃刀法第2条では、用語について定義しています。「銃砲」とは、けん銃、小銃、機関銃、砲、猟銃その他金属性弾丸を発射する機能を有する装薬銃砲および空気銃をいいます。

また、「刀剣類」とは、刃渡り15センチメートル以上の刀、やりおよびなぎなた、刃渡り5.5センチメートル以上の剣、あいくちならびに45度以上に自動的に開刃する装置を有する飛び出しナイフをいいます。

これら銃砲刀剣類については、警察官のように職務上所持する場合や、一定の許可を得た場合でなければ所持することができません。「所持」というのは、事実上の支配下にあることを指しますので、たとえば、倉庫や別荘に置いてあるというのも所持にあたります。要するに持ち歩かずに家に置いておくことも許されないということです。銃や日本刀を家に置いておく必要性がないからです。

これに対し、包丁などはどの家にもあるように、所持することは禁止されていません。生活をする上で、必要な道具だからです。

ただ、包丁の所持が許されるからといって、包丁を持って街を歩かれたら危険なので、刃体の長さが6センチメートルを超える刃物については、「何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、これを携帯してはならない。」と規定されています。

携帯とは、自宅や居室以外の場所で刃物を持ち歩いていたり、車の中に入れてあったりする場合をいいます。

刃物とは、その用法において人を殺傷する性能を有し、鋼またはこれと同程度の物理的性能を有する材質でできている片刃または両刃の器物で、刀剣類以外のものをいいます。

したがって、刃体の長さが6センチメートルを超える刃物を正当な理由なしに携帯していれば逮捕される可能性があります。刃体とは、刀剣類以外の刃物における刃の部分をいいます。刃物の種類としては包丁、ナイフ、カッターナイフなどがあります。

ただし、刃体の長さが8センチメートル以下のはさみもしくは折りたたみ式のナイフまたはこれらの刃物以外の刃物で、政令で定める種類または形状のものについては携帯が許されています。

テレビで警察24時などを見ていると、警察官に職務質問されてナイフが発見されると、たいてい容疑者は「護身用に持っていた」と主張します。護身用であればナイフの携帯ができるのであれば、誰でもナイフを携帯できることになってしまいますので、このような主張は正当理由とは認められません。

他方で、刃体の長さが6センチメートル未満の刃物であっても、それを隠して携帯することは、軽犯罪法に違反する可能性があるので注意が必要です。軽犯罪法では、「正当な理由がなくて 刃物、鉄棒その他人の生命を害し、または人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を 隠して携帯」することを禁止しています。

つまり、銃刀法では6センチメートル以下の刃物は携帯しても構わないけど、それを隠して携帯していた場合には軽犯罪法違反になる可能性があるということです。堂々と刃物を出しておく分には問題ないけど、隠していたらダメということです。

ダッシュボードの上にナイフを置いておけば問題ないけど、ダッシュボードの中にナイフを入れていたら隠していたと判断されて逮捕というのも釈然としませんが、刃物をむやみに持ち歩かないということです。

3、銃刀法違反における罰則

銃刀法は、けん銃や刀を取り締まる法律なので、これらに関する細かな内容が規定されています。罰則についてもかなりの数がありますが、けん銃や刀を所持した場合についての罰則について興味がある人はあまりいないと思いますので、刃物を携帯した場合の罰則についてだけ解説します。

これまでも説明してきたとおり、銃刀法第22条は、「何人も、業務その他正当な理由による場合を除いては、内閣府令で定めるところにより計つた刃体の長さが6センチメートルをこえる刃物を携帯してはならない。」と規定しています。これに違反した場合には、「2年以下の懲役、または30万円以下の罰金」となります。

また、軽犯罪法1条では、「正当な理由がなくて刃物、鉄棒その他人の生命を害し、または人の身体に重大な害を加えるのに使用されるような器具を隠して携帯していた者」は、「拘留または科料に処する」と規定されています。拘留というのは、1日以上30日未満、刑事施設に拘置される刑罰です。科料というのは、1000円以上1万円未満の金銭を強制的に徴収する刑罰です。拘留や科料も一見軽く見えますが「前科」となるので、決して軽いものではありません。

4、銃刀法違反で逮捕された場合

警察に逮捕された場合、そこから48時間の拘束が認められます。そのため、警察は必死になって取り調べを行います。刃物を携帯したことで捕まった場合、なぜ刃物を持っていたのかしつこく聞かれ、警察によって調書が作られます。調書の内容に納得がいかない場合には、絶対にサインしないようにしてください。

逮捕されると複数の警察官の中で、自分ひとりで対峙(たいじ)しなければならないので、精神的にかなり追い詰められます。逮捕後は家族との面談もできないので、そんなときに唯一自分の味方になってくれるのが弁護士です。

弁護士であれば、逮捕後すぐに接見できるので、取り調べを受ける際の注意点や今後の流れなどについて説明を受けることができます。何より、自分の味方と話せるというのが精神的に救われるはずです。

5、まとめ

刃物は普段持ち歩いたりしないように心がけることが重要ですが、キャンプや作業のためなど必要性があってツールナイフなどを持ち歩くこともあると思います。正当な理由があれば、刃物を携帯することは問題ないのですが、職務質問や検問などで嫌疑を掛けられ、不当な扱いをされる危険性があります。

そのようなとき、身元引受人が必要になるので、あらかじめ誰にお願いするか決めておくことは重要です。急な場合に誰に頼んでいいかわからないことが多いからです。

また、刑事事件の場合、初動が大事なので、自分が身柄拘束を受けた場合に連絡できる弁護士を準備しておくことも有効です。財布などに弁護士の名刺を入れておくと安心です。

ベリーベスト法律事務所 柏オフィスには、刑事弁護についての知見が豊富な弁護士による接見対応が可能です。まずはご相談いただくこともできますので、まずはお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています