息子がバイト先の店長を殴って逮捕! 暴行罪の量刑や弁護士ができること
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ある日突然、あなたの息子がアルバイト先の店長を暴行したとして逮捕されてしまったら……?
親御さんとしては寝耳に水であり、どうしたらいいのか、今後どうなるのか不安でたまらなくなることでしょう。
ここでは、暴行罪がどんな犯罪なのか、逮捕されたらどうなるのか、弁護士に依頼したら何をしてくれるのかなどを弁護士が解説します。
1、暴行罪とはどんな犯罪か。
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(1)暴行罪とは?
そもそも暴行罪の「暴行」とは何でしょうか。
これは、他人の身体に対する不法な有形力の行使のことをいいます。
不法な有形力(物理力)の行使というと、少しわかりにくいかもしれませんが、たとえば殴る、蹴る、突き飛ばすなど相手にケガを負わせてしまうような行為が典型的なものでイメージしやすいと思います。
ただ、ケガを負わせる可能性がなくても、相手の身体に有形力が加えられた場合には暴行罪に当てはまる可能性があることに注意が必要です。たとえば、相手の洋服を引っ張ったり、つばを吐きかけたり、食塩をふりかける行為なども判例で暴行罪が成立すると判断されています。
相手を殴るなどの暴行を加えた場合、傷害罪が成立することもあります。暴行罪と傷害罪は何が違うのでしょうか。
簡単に言いますと、傷害罪は、何らかの方法によって人を傷害した場合、つまりは相手にケガを負わせた場合に成立するものです。
相手に暴行を加えた結果、ケガを負わせるには至らなかったときには暴行罪が成立しますし、ケガを負わせてしまうと傷害罪が成立します。
そのため、暴行罪なのか、傷害罪になるのかは相手方のケガの有無がポイントとなります。 -
(2)暴行罪の刑罰
刑法208条では暴行罪について「暴行を加えた者が人を傷害するに至らなかったときは、2年以下の懲役もしくは30万円以下の罰金又は拘留もしくは科料に処する」とあります。
これは暴行罪が成立すると、1カ月以上2年以下の懲役か、1万円以上30万円以下の罰金か、拘留または科料が科せられるということです。
拘留や科料という言葉はあまり聞きなれないかもしれません。
拘留は懲役・禁錮と同じ自由を奪われる刑罰です。懲役・禁錮に比べると軽い刑罰ですし、科料は罰金と同じくお金を払わせるものですが1000円以上1万円未満ですのでこれも軽い刑罰といえます。
暴行罪は、懲役刑のほかに罰金刑、拘留、科料が定められていることからすると刑罰としては比較的軽い犯罪となっています。
暴行罪で初犯であれば、罰金か、懲役刑でも執行猶予が付くことが多い傾向にあります。
先ほど相手にケガを負わせてしまった場合は傷害罪が成立すると説明しましたが、傷害罪では1ヶ月以上15年以下の懲役または1万円以上50万円以下の罰金が科せられるので、暴行罪と比べると量刑の幅が広く、重くなっています。
相手が死亡してしまった場合には、傷害致死罪が成立し、さらに重い刑罰が科せられます。
2、逮捕まで・逮捕後の流れ
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(1)どのように逮捕されるか?
相手に暴行を加えてしまった場合、どのように逮捕されることが考えられるでしょうか。 逮捕には、現行犯逮捕、通常逮捕、緊急逮捕の3つがあります。
緊急逮捕というのは重大犯罪にのみ認められる逮捕ですので、暴行罪で逮捕されるのは現行犯逮捕か通常逮捕のいずれかになります。
もっとも、逮捕に至るにはさまざまなきっかけがありますので一概には言えませんが、たとえば街中で見知らぬ者同士でつかみ合いのけんかとなってしまった場合、通行人が110番通報をすることがあります。通報を受け警察が直ちに現場に到着し、暴行の事実が認められた場合には逮捕状なしで現行犯逮捕をされる可能性があります。
あるいは、暴行を受けた被害者が警察に被害届を提出することで警察が捜査を開始し、加害者に暴行罪を犯したと疑うに足りる相当な理由があるときは裁判官が発付した逮捕状により警察が加害者を逮捕(これを通常逮捕といいます)することがあります。つまり、暴行を加えたその場で逮捕されなくても、後日、逮捕されることもあるのです。
このように逮捕されると、身柄が警察に拘束されてしまい、家族とも連絡を取ることができなくなってしまいます。 -
(2)逮捕後の流れ
逮捕された後の手続きについて簡単に説明します。
被疑者(加害者)は、逮捕されると検察官のもとへ送致され、検察官が勾留請求するかどうかの判断をします。これは逮捕から72時間以内に行われます。
勾留は、原則10日間の身柄拘束であり、延長されると最大20日間にも及びます。
勾留期間中に被疑者は捜査機関から取り調べを受けますし、事件の捜査が行われます。そして、勾留期間が終わるまでの間に、検察官が刑事裁判を請求するかどうかを判断します。
そして刑事裁判として請求されると(これを起訴といいます)、身柄拘束がさらに長期間に及ぶ可能性があります。 -
(3)未成年の場合
暴行を加えた加害者が20歳未満であった場合には、少年事件となりますので、成人の刑事事件とは手続きが異なっています。
これは少年法が、少年の犯罪に対しては刑罰によらずに、あくまで少年の更生を目指し、生活環境の調整などの保護処分を行うことを目的としているためです。
そのため、14歳以上の少年が暴行事件を起こした場合には、家庭裁判所に送致され、通常は保護事件として審判の対象となります。
保護事件として審判が開始された場合には、保護観察や少年院送致の保護処分などの処分が決定されます。
3、弁護士に依頼したら、何をしてくれるのか?
暴行罪での逮捕、ましてや刑事裁判を受ける可能性が出てくるとなると、前科はつくのか、いつ釈放されるのか、などと被疑者のご家族は多くの疑問や不安を抱くことでしょう。
被疑者の早期釈放に向けて、ご家族ができることは何でしょうか。
まずは弁護士に相談することをおすすめします。
弁護士に相談すれば、今どのような手続きが行われているのかを知ることができますし、今後の見通しについて適切な助言を受けることができます。
弁護士に相談した結果、弁護士を被疑者の弁護人に選任することもできます。弁護人は被疑者の利益のために、最善の活動(これは後ほど詳しく説明します)を行います。
特に逮捕直後はご家族であっても被疑者と面会することはできませんし、事案によってはその後も面会が制限されてしまうことがあります。しかし、弁護人には被疑者との面会(接見といいます)を行う権利が保障されていますので、直ちに被疑者と面会し、現状を把握することができますし、被疑者自身に取り調べを受けるうえでの助言などを行うことができるのです。
ここでは、弁護士に相談・依頼した場合、どのような活動ができるのかを説明します。
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(1)早期釈放に向けた活動
逮捕された場合、当然のことながら会社にも学校にも行くことはできません。身柄拘束が長期間になればなるほど、被疑者の社会生活に大きな影響がでてくるおそれが高まります。
そのため、被疑者が逮捕され身柄が拘束されている場合、まずは身柄の早期釈放に向けた活動が重要です。
先ほど逮捕後は検察官に送致されると説明しましたが、軽微な事案であれば送致されずに微罪処分としてすぐに釈放されることがあります。この場合、起訴もされませんので前科がつく心配がありません。
どのような場合に微罪処分となるのか、はっきりとした基準はありませんが、暴行自体の悪質性が低いなどの場合には、被害者との示談や被疑者の反省を示すことによって微罪処分となる可能性があります。
このような微罪処分にならなくても、勾留請求がされずに処分保留で釈放されることもありますし、あるいは起訴をしない(不起訴処分といいます)で釈放されることもあります。
このような処分で終われば、比較的早い段階で被疑者の身柄が解放されます。
弁護士はこのような早期釈放に向けて、被害者と示談に向けた交渉を行うとともに、ご家族の身元引受書や上申書、被疑者の反省文を収集し、弁護人の意見書を提出するなどの活動を行います。
勾留された場合には、勾留に対する準抗告、勾留取り消し請求を行って勾留の理由や必要性がないことを争うことが考えられます。
あるいは最終的に裁判になる場合でも、通常の裁判ではなく、略式命令や即決裁判にするように検察官に働きかけることが可能です。 -
(2)被害者との示談
暴行事件では、被害者との示談の成立が処分を決めるうえで重要です。
通常、警察は加害者に被害者の連絡先を教えることはないため、被疑者の家族から被害者に直接連絡を取ることは困難です。しかし、弁護士を選任すれば、多くの場合、弁護士から被害者に連絡を取ることが可能となりますので、示談に向けた話し合いを行うことができます。
示談金の金額について特に決まりはありませんが、刑事事件の経験が豊富な弁護士であれば暴行の態様や被害の程度などによっておおよその目安となる金額について助言することも可能です。
示談書に書くべきポイントもありますので、弁護士に相談してみることをおすすめします。 -
(3)家族など外部との連絡
先ほども説明したとおり、被疑者は逮捕されると外部と連絡が取れなくなりますが、弁護士は選任されると直ちに被疑者と接見できます。そのため、弁護士は被疑者から事件について話を聞くことができることはもちろん、被疑者の様子を知ることができますので、ご家族にもお伝えすることが可能になります。
被疑者が勾留に加えて接見禁止処分を受け、勾留中に家族と面会できない場合には、この処分に対して準抗告・抗告を申し立てることで、ご家族と被疑者との面会の実現に向けた活動を行うことが可能です。
4、時効について
相手に暴行を加えてしまっても、時効が成立すると検察官は加害者を起訴できなくなります。暴行罪の時効は、3年で成立します(刑事訴訟法250条2項6号)。
なお、被害者から加害者に対する損害賠償請求については民事事件であり、刑事事件の時効とは異なります。
5、まとめ
いかがでしたか。
刑事事件では、逮捕後72時間が、被疑者の処分を決するうえで特に重要です。もしも息子さんが暴行罪で逮捕されてしまったならご家族だけで悩まずに、まずはベリーベスト法律事務所・柏オフィスまでご相談ください。被疑者と被疑者のご家族を全力でサポートいたします。
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