オレオレ詐欺で未成年の子どもが逮捕! 早期に弁護士を選任すべき理由
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千葉県柏市では振り込め詐欺等被害防止等条例を制定するなど、オレオレ詐欺を含む振り込め詐欺に対して、独自の対策を打ち出しています。しかし、令和2年1月には、柏警察署が「振り込め詐欺多発警報」を発令しており、継続的に被害が発生しているのが現状です。
オレオレ詐欺などの犯罪では、逮捕者の低年齢化も問題となっており、未成年者が逮捕されるケースも少なくありません。
本コラムでは、オレオレ詐欺に加担したことで、未成年の子どもが逮捕された場合の流れと、早期に弁護士に依頼すべき理由をベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説していきます。
1、オレオレ詐欺を行った場合の刑罰とは
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(1)オレオレ詐欺グループでの役割
オレオレ詐欺を行った場合の刑罰や量刑は、詐欺グループ内での役割によって異なります。
未成年者の多くは、詐欺グループの中心ではなく末端の役割に加担することがほとんどです。末端の役割としては、主に次のようなものがあります。- かけ子……被害者に電話をかけてだます役割を行う者
- 受け子……被害者からだました現金を受け取る役割を行う者
- 出し子……被害者をだまして入金された現金を、口座から引き出す役割を行う者
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(2)オレオレ詐欺で問われる可能性がある刑罰
オレオレ詐欺で逮捕された場合、どのような刑罰に問われる可能性があるのでしょうか。まずは、成人が事件をおこした場合に問われる可能性がある刑罰を、役割ごとに解説します。
●かけ子
かけ子には、詐欺罪が成立します。
詐欺罪の刑罰は、10年以下の懲役刑です(刑法246条)。
詐欺罪の刑罰には罰金刑はなく、懲役刑のみです。有罪となった場合、執行猶予がつかなければ刑務所に収監されます。
●受け子
受け子は、かけ子と同様に詐欺罪が成立します。
現金を受け取れず未遂に終わった場合には、未遂罪に問われます。未遂罪の場合、刑が軽減されることがあるものの、罪には問われることに変わりはありません。
●出し子
出し子は、窃盗罪が成立します。
窃盗罪の刑罰は、50万円以下の罰金または10年以下の懲役です(刑法235条)。
オレオレ詐欺などの振り込め詐欺の場合、罰金刑になることは少なく、懲役刑が科せられる可能性が高いでしょう。 -
(3)オレオレ詐欺に対する量刑の方針
オレオレ詐欺による被害は、社会的にも大きな問題となっています。したがってオレオレ詐欺に加担した者への判断は非常に厳しく、初犯であっても実刑判決が言い渡されることがあります。
2、オレオレ詐欺を未成年者が行った場合
未成年者は、オレオレ詐欺グループの末端として受け子などの役割を担うケースが多いものです。
判断能力が十分とはいえない未成年者は、原則として刑罰には問われず、少年法に基づき処分が決定されることになります。
少年法は、少年を保護し更生させることが目的ですが、オレオレ詐欺に加担した場合には重い処分を行う傾向にあります。オレオレ詐欺の受け子として逮捕された場合などには、初犯であっても少年院送致の処分になることも少なくありません。
3、少年事件における逮捕後の流れ
では具体的に未成年者が逮捕された場合の逮捕後の流れについて、解説します。
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(1)逮捕
未成年者であっても、14歳以上であれば成人と同じく逮捕されます。
オレオレ詐欺などの特殊詐欺事件に関する犯罪については、中心的な役割を担っていなくても捜査の必要性から逮捕・勾留される可能性が高いでしょう。
逮捕されるとまず、警察により詐欺の全容などを明らかにするための取り調べなどが行われます。警察は、逮捕時から48時間以内に検察官へ送致するかを決定します。 -
(2)検察官送致・勾留
検察は、送致をうけてから24時間以内に、勾留請求をするかを決定します。
勾留は原則として最大10日間ですが、さらに10日間延長されることもあるので、最大20日間にわたって、身柄を拘束される可能性があります。 -
(3)家庭裁判所送致
成人の事件の場合、不起訴になることもありますが、少年事件は原則としてすべての事件が家庭裁判所へ送致されます。これを「全件送致主義」といいます。
家庭裁判所では、少年の性格や日ごろの行動、育った環境などの調査を行い、更生方法などを探っていきます。 -
(4)少年審判
少年審判では調査結果に基づき、保護処分(少年院送致・保護観察など)・検察官送致・都道府県知事または児童相談所長送致のいずれかの処分が下されます。なお、少年の更生が期待できると判断された場合は、不処分・審判不開始となり少年審判は開かれず、ここで手続きは終了します。
●保護処分
「保護観察」「少年院送致」「児童自立支援施設等送致」のいずれかに処されます。
保護観察は、社会の中で更生できると判断された場合に家庭などで生活しながら保護観察官などの指導を受ける処分です。
少年院送致となるケースは、社会での更生が難しく少年院での矯正教育が必要と判断される場合になされる処分です。
児童自立支援施設等送致は、開放的な施設で生活指導が行われます。比較的低年齢の少年に対して下される処分です。
少年院送致と保護観察では、生活の場や日常生活への制約も大きく異なることになります。
オレオレ詐欺などの特殊詐欺事件に加担した場合には、前歴や補導歴がなくても保護処分として少年院送致になることも少なくありません。
●検察官送致
14歳以上で刑罰を科すのが相当と判断された場合は、成人事件同様に検察官へ送致されます。送致されると起訴・不起訴が判断され、起訴された場合は刑事裁判にかけられます。
●都道府県知事または児童相談所長送致
家庭環境などを鑑みた結果、児童福祉機関の指導に委ねるのが適当と判断された場合は、都道府県知事、または児童相談所長に事件が送致されます。送致された後、児童福祉施設への入所や、里親への委託などが検討されます。
4、弁護士は誰がいつ選任するのか
少年事件においても、成人事件と同様に弁護士を選任することができます。
少年や保護者が弁護士へ依頼をしなければ、国選弁護人といって国が選んだ弁護士がその対応に当たります。国選弁護人は、基本的には勾留された段階で選任されます。つまり、逮捕され取り調べを受けている段階から弁護活動は行うことはできません。ただし、国選弁護人は費用が掛からないという大きなメリットがあります。
一方、本人や保護者が依頼した弁護士のことを私選弁護人といいます。
私選弁護人の選任のタイミングは決まっておらず、自由に判断することができます。国選弁護人とは異なり費用は発生しますが、逮捕直後の早期から弁護活動を行うことが可能です。
なお、少年審判手続では弁護士は弁護人という名称ではなく、付添人として活動します。付添人は弁護士に限定されていませんが、大半のケースにおいて弁護士がその役割を担います。
5、早期に弁護士を選任すべき理由とは
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(1)取り調べに対するアドバイスが可能
逮捕後72時間は、原則としてご家族でも本人に面会することはできません。
その期間に、唯一面会が許されるのは弁護士だけです。
オレオレ詐欺で逮捕された場合には、詐欺グループから教えられたうその供述内容を繰り返し述べていることも多いものです。また、不安や投げやりな気持ちから、してもいない行為についても認めてしまうといったことも少なくありません。
弁護士は取り調べでの適切な対応方法を見極め、本人にアドバイスすることが可能です。また、ご家族からのメッセージを伝えるなど、精神的なサポートも行います。 -
(2)被害者との示談交渉
基本的に、被害者の連絡先を加害者やご家族が知ることはできません。
弁護士であれば、捜査機関などにはたらきかけ、被害者の連絡先を入手できる可能性があります。
連絡先がわかれば、示談交渉を進めることが可能です。示談が成立すると、被害者が許しており処罰感情がないと評価されるため、不処分になることや処分内容に考慮されることを期待できます。
弁護士は、示談交渉と並行しながら、有利な証拠を収集して捜査機関等に提示したり、家庭裁判所に意見書を提出したりといった弁護活動も行います。
最善の結果に導くためにも、早期の弁護活動は必要不可欠といえるでしょう。
6、まとめ
本コラムでは、オレオレ詐欺で未成年の子どもが逮捕された場合の流れと早期に弁護士に依頼すべき理由を解説しました。
オレオレ詐欺は、少年審判でも重い処分が下される傾向にあります。
本人が犯してしまった罪を十分に理解し反省するのはもちろんのこと、被害者の方に謝罪し更生の道を進むことは責務です。一方で、保護者の方は、将来への影響をできるだけ最小限に抑えたいと思うことでしょう。
少年事件は、早期の弁護活動がその後の流れを左右するといっても過言ではありません。未成年の子どもが逮捕されてしまった、または逮捕されそうだと不安に感じている場合は、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスへご連絡ください。
刑事事件の経験豊富な弁護士が、解決にむけて尽力します。
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