離婚しないで不倫相手にだけ慰謝料を請求したい! 注意点や手順を解説
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裁判所が公開している「令和元年(平成31年)司法統計年報」によると、千葉家庭裁判所管内においての婚姻関係事件数は3093件でした。そのうち、すべてのケースにおいて離婚が成立しているわけではなく、婚姻継続となっているケースもあります。
配偶者に不貞行為(不倫や浮気)をされたとき、傷つき許せない気持ちがあったとしても、離婚はしたくない、ただ不倫相手には慰謝料請求をしたいと考えることもあるでしょう。
本コラムでは、離婚をせずに不倫相手に慰謝料請求をすることは可能なのか、そして慰謝料請求する際の注意点や手順について、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説します。
1、離婚しなくても慰謝料請求は可能?
配偶者が不倫をしたとしても、離婚を選択したくないケースもあるでしょう。しかし、不倫相手には慰謝料を請求したいと考えた場合、離婚をしていなくても請求することはできるのでしょうか。
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(1)慰謝料は配偶者と不倫相手に請求できる
配偶者以外との不貞行為(性行為)の事実があれば、夫婦が守るべき「貞操義務」に違反したと見なされます。その場合、民法709条における「不法行為に基づく損害賠償請求」として慰謝料請求が認められています。
離婚するか、しないかは関係なく、婚姻関係を継続していても請求は可能です。
また、不貞行為は法律上の解釈では「共同不法行為」であり、配偶者と不倫相手双方に責任があります。したがって、両方に請求することも、片方だけに請求することもできます。
ただし、離婚をしない場合は、配偶者に慰謝料を請求したとしても、同じ世帯内で賠償金を支払うことになるため、夫婦の共有財産の観点からもあまり意味がありません。
そのため、離婚をしない場合には、特殊な事情がない限りは、不倫相手にのみ請求することとなるでしょう。 -
(2)慰謝料請求をする前に確認したい3つのポイント
不貞行為に対して慰謝料請求を考えている場合は、次にあげる3つのポイントに該当するのかを確認しておきましょう。
●不法行為の事実があった
不倫が「不法行為」と認められるのは、配偶者以外との不貞行為があった場合です。そして、一般的に、不貞行為とは、性行為を指すものと考えられています。
そのため、一緒に出掛けた、キスをした、好きだと言ったという事実だけでは不貞行為(不法行為)にあたらないとされる可能性が高いので注意が必要です。
●不倫と損害に因果関係がある
不法行為と、その行為によって受けた被害に因果関係があることが必要です。
不貞行為が原因となって、平穏・円満な共同生活を送る権利を侵害され、精神的損害を受けた場合に、損害賠償として慰謝料の請求が認められます。
たとえば、不貞行為の事実がある前から長期間にわたり別居をしていた場合や、家庭内別居のような状況だった場合は、すでに夫婦関係が破綻していたと見なされ、損害賠償が認められない可能性があります。
●損害賠償請求権の時効が完成していないか
不法行為による損害賠償請求権には、時効が定められています。【民法 第724条】
被害者またはその法定代理人が損害及び加害者を知った時から3年間
不法行為の時から20年間行使しないとき
したがって、配偶者の不貞行為を知ってから3年以上経過した場合や、不貞行為があってから20年以上経過した場合は、慰謝料を請求することはできません。
悩んでいる間に、慰謝料請求の時効が過ぎてしまわないように注意する必要があります。
2、不倫相手にのみ慰謝料を請求するときの注意点
配偶者の不法行為に対して慰謝料を請求する場合、配偶者の不倫相手にのみ請求することは可能です。
ただし、離婚をせず不倫相手にのみ慰謝料を請求する場合は、「連帯債務者間の求償」に注意しなければなりません。慰謝料を支払った不倫相手は、慰謝料を支払わなかった者(不倫をした配偶者)に対して、負担額の一部を請求する(求償する)ことが認められています。
つまり、不倫相手に慰謝料を請求し支払ってもらったとしても、不倫相手が配偶者に対して求償を求めれば、結果的に家計からお金を支払うこととなってしまう可能性があるのです。
3、慰謝料の相場
不倫に関する慰謝料の金額について法的な規定はありません。そのため、話し合いにおいて合意できるようであれば、基本的にはいくらになったとしても問題はありません。
ただし、社会常識に照らしてあまりにも高額な金額である場合には、仮に当事者間で合意ができたとしても、公序良俗に反する合意として無効となってしまう可能性があります。
なお、調整や裁判になった場合は、当事者の状況を総合的に考慮したうえで金額が判断されるため、相場を提示することは難しいでしょう。
しかしながら、弁護士であれば知見や裁判例などを元にして、おおよその目安をたてることはできます。どの程度の費用を請求できるのかを事前に把握したい場合は、弁護士へ相談することをおすすめします。
4、不倫相手に慰謝料を請求する手順
不倫相手に慰謝料を請求する場合、どのような手続きが必要なのでしょうか。
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(1)不貞行為の証拠を集める
まずは、不貞行為の証拠を集めることが非常に重要です。具体的には、性行為の事実を第三者にも証明できるような証拠を集める必要があります。
具体的には、次のようなものが証拠となり得るでしょう。
●不貞行為の写真や動画
配偶者と不倫相手との裸の写真や動画があれば、動かぬ証拠となるでしょう。
また、LINE、メールなどで、ふたりが性交渉のために会う約束のやりとり、性交渉の感想のやりとりがあれば、スクリーンショットで残す、印刷するなどしておきましょう。
ただし、これらの証拠を集めるにあたって、プライバシーを侵害するおそれがあります。どのように証拠を確保するべきかについては、弁護士のアドバイスを受けることを、おすすめします。
●ラブホテルに出入りする写真や動画
性行為を目的としたホテルにふたりで入り、一定時間以上過ごしている事実が認められれば、不貞行為があったことが相当程度推認されるので、現場を押さえた写真も証拠になるでしょう。
ただし、ホテルの近くをふたりで歩いている写真や、個人を特定できないものは不貞行為の可能性を示唆するに過ぎず、証拠として認められない可能性が高いので注意が必要です。
●自白の音声データ
配偶者が不貞行為を認めた音声などがあれば、重要な証拠となります。
夫婦で話し合うときは、携帯電話のボイスレコーダー機能やICレコーダーで録音しておきましょう。
●その他の証拠
他には、次のようなものも証拠になる可能性があります。- ETCの記録
- 不貞行為に関する第三者の証言
- 不貞行為に及んだホテルの領収書
慰謝料請求において、証拠は非常に重要です。しかし、証拠を集めたいという気持ちが強すぎるあまりに、プライバシーを侵害する、違法行為に手を染めるといったことがあっては、せっかくの証拠が認められないばかりか、自身が罪を背負うことにもなりかねません。
証拠集めに関しては、弁護士に相談したうえで適切に行うことが大切です。 -
(2)内容証明郵便で慰謝料請求を行う
不貞行為に関する証拠がそろったのち、相手に対して慰謝料請求の意思を伝えます。
このとき、内容証明郵便で請求書を送付するとよいでしょう。
内容証明郵便は、郵便局が第三者として郵送した事実と内容を証明してくれる特殊郵便です。内容証明郵便を利用することで、相手が「聞いてない」、「受け取っていない」などの言い逃れをすることを防ぐことができます。
この時点で相手が請求に応じた場合は、示談書を作成して支払いについて取り決めを交わしましょう。
相手が内容証明郵便を無視したり、慰謝料の減額を要求したりした場合は、話し合いの場を設けることになります。当事者間で合意が得られない場合は、調停または裁判を行うことを検討することになります。 -
(3)調停
調停では、調停委員が当事者の間に入って慰謝料の請求や請求額について話し合いを行います。話し合いがまとまれば、調停調書が作成されます。
しかし、相手が応じる気がない場合や、金額で合意がとれないような場合は、訴訟で解決を図ることになります。 -
(4)裁判
裁判では、お互いの主張や客観的な証拠を元に、裁判官が慰謝料の有無や請求額について判決を下します。
慰謝料の支払いを命じる判決が下されたにもかかわらず、相手方が支払いをしない場合には、預金口座や給料等の差し押さえも可能となります。
ただし、裁判は話し合いや調停での解決に比べて、時間と費用がかかります。また、必ずしも自分の主張が通るとは限りません。
訴訟になった場合は、離婚問題の経験が豊富な弁護士のサポートを得ることが望ましいでしょう。
5、まとめ
配偶者が不貞行為をした場合、婚姻関係を継続したまま不倫相手に対して慰謝料を請求することは可能です。
慰謝料請求を行うにあたっては、証拠を集めて交渉をする必要があります。しかし、不倫相手との交渉は精神的な負担も大きいものです。その点、弁護士であれば代理人として交渉することが可能です。不倫相手と一切顔を合わせることなく交渉を進めることができるのは、大きなメリットと言えるでしょう。
また、離婚せずに不貞相手にのみ慰謝料請求を行う場合、「連帯債務者間の求償」の問題がありますが、弁護士が交渉を行うことで、この問題についても解消できるような交渉を進めていくことが望めます。
配偶者の不倫相手へ慰謝料を請求したいと悩まれている方は、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士にお任せください。しっかりと状況を伺った上で、証拠の集め方から慰謝料の請求の手続きまでしっかりとサポートします。
ひとりで抱え込まず、まずはご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています
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