離婚で父親が親権を獲得したい! メリット・デメリットを解説
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柏市では、平成28年に694件の離婚がありました。この中には、未成年の子どもがいる夫婦の離婚もあるでしょう。未成年の子どもがいる場合、離婚する際に子どもの親権をどちらが行うかを決めなければなりません。
厚生労働省が発表した「平成30年 我が国の人口動態」によると、平成28年に離婚した夫婦のうち、妻が親権を行うケースは84.4%と非常に高い比率にありました。もちろん、父親が親権を獲得した事例もありますが、11.9%と非常に少ないといえるでしょう。
親権を争うことになったとき、裁判所では、どちらが親権を持つことが「子どもの福祉」にかなうかという観点で最終的な判断を下します。この観点から見て、なぜ父親が親権を獲得するのは難しいといわれているのでしょうか。
そこで今回は、父親が親権を持った場合のメリットとデメリットや、父親が親権を獲得するためにできることについて、柏オフィスの弁護士が説明します。
1、親権はどのように決めるのか
親権者を決定する方法は、離婚の方法によって異なります。それぞれのケースを順に解説します。
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(1)協議離婚の場合
協議離婚とは、当事者が互いに離婚に合意した上で離婚届を役所に提出して離婚する方法です。
離婚届には親権者を記入する欄がありますので、前述のとおり、どちらが親権を持つのかを離婚届の記入時までには決める必要があります。この場合、親権者の決定に特別な基準があるわけではありません。当事者間の話し合いで合意し、記入して提出するだけで親権者が決定されます。
注意点は、一度決めた親権をあとになって変更することは、とても難しいことです。 -
(2)家庭裁判所の判断を受ける場合
当事者間で離婚条件に合意できなかった場合は、家庭裁判所が調停や審判を通じて親権者を決定することになります。
父親と母親、どちらが親権者になったほうが、子どもの将来にとってよいのかを基準に親権者が決まります。離婚原因にもよりますが、夫婦のどちらかが有責配偶者かどうかは重要視されません。具体的には、次のような事情を考慮して決められます。
●父母の事情
そもそも親自身に子どもの親権がほしいと強く望んでいるかどうかなど、子どもに対する愛情を問われます。その上で、親自身の健康状態、経済力、時間的余裕、居住地域など、子どもを育てる体制や環境が考慮されます。
●子どもの事情
子どもの年齢や性別、兄弟姉妹の関係性、親族との関係性などが考慮されます。なお、ここでいう「母性」とは性別を指すわけではありません。父親であっても子どもの年齢に応じた十分な監護が可能であれば親権を認められることもありえます。
●監護の継続性の原則
普段、子どもの世話をしてきたのは両親のどちらなのかということが非常に重要視されます。子どもにとって、生活の変化は大きなストレスとなります。離婚しても子どもの今の生活がなるべく変わらないように親権を認めるべきと考えるためです。
●兄弟姉妹不分離の原則
兄弟や姉妹がいる場合は、なるべく離れ離れにならないように考慮します。
●子どもの意思の尊重
両親のどちらについていくか、子どもの意思が明確であれば尊重される傾向にあります。特に子どもが15歳以上の場合は、基本的に本人の選択によって親権者が決まります。子どもの年齢が小学校高学年、おおむね10歳以上の場合は、子ども自身の意思表示が可能とみなされ、必要に応じて判断材料になります。 -
(3)父親が親権を持つのが難しいとされる理由
一般的に、父親が親権を獲得するのは難しいとされています。大きな理由のひとつとして、親権の判断基準のひとつである「継続性の原則」がもっとも重要視されているためです。
多くの家庭では、父親が労働に従事し、妻が家事や育児に携わるスタイルを選択しています。共働きの場合でも、時短勤務制度を選択するのは母親が圧倒的に多い傾向があります。結果、子どもの保育園送迎、食事の準備、看病など、育児を主体的に行う者は母親のみであり、父親はあまり育児にかかわっていない、かかわれないケースが少なくないようです。
以上のことから、継続的な監護養育を与えるには、母親の方が親権を持つにふさわしいと判断されやすいのです。
2、父親が親権を持つ場合のメリット
もちろん、父親が親権を持つことも不可能ではありませんし、父親のほうが有利な点もあります。父親が親権を持つメリットを改めて確認していきましょう。
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(1)経済力が安定していることが多い
子どもにとって、父親が親権を持つ最大のメリットは経済力が安定していることが多いということがいえるでしょう。
育児には少なからず費用がかかります。統計上、同じ正社員であっても女性より男性のほうが高収入となっている現状からわかるとおり、母親よりも父親の収入が高い家庭が多いものです。つまり、進学なども考えた場合は、経済力がある家庭で育つほうが、子どもの将来の選択肢が広がるといえるでしょう。 -
(2)子育てを通じて成長できる
親権を行う者のメリットとしては、人間的な成長ができることでしょう。自分が親権を持ち主体的に子育てにかかわる経験を通じて、忍耐力や発想力、時間内に仕事を終わらせる段取り力も鍛えられます。その経験は、仕事での人材育成や企画にも生かせるはずです。また、仕事のあとに、自宅で子どもが待っていることは、父親にとって何ものにも代えがたい励みとなるでしょう。
3、父親が親権を持つデメリット
一方で、父親が親権を持つデメリットとは、どのようなケースが考えられるでしょうか。
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(1)母親からの養育費は少ない傾向にある
父親側のデメリットとしては、母親からの養育費支払いはあまり期待できないことです。
養育費とは、別居している親が子どもに対して、子どもが親と同じ生活・文化レベルを維持できるよう、子どものために支払うお金です。したがって、父親が親権を持った場合には母親が養育費を支払う義務があります。
しかし、母親の年収では、経済的に扶養する余裕がないと判断されるケースが少なくありません。したがって、養育費の金額も少なく設定されます。あなたと子どもの母親が同レベル、もしくはそれ以上の収入がない限り、生活費は基本的に自分自身で賄うことと考えておきましょう。 -
(2)子どもの悩みに気付きにくい
ひとり親として仕事と子育てを両立するのは、結婚時代・共働き時代とはまた違った厳しさがあるものです。親権者が男性だろうと女性だろうと、仕事と家事をこなすので精いっぱいになってしまい、現実問題として、子どもと向き合う時間というのは短くなりがちな傾向があります。
結果、子どもの変化や不調を見落として、病気、いじめ、不登校など大きな問題になるまで気付けない可能性があります。また、子どもが女の子である場合、第2次性徴や思春期のデリケートなことに、父親だけでどこまで対応できるのかというのも父子家庭における共通した悩みのようです。
しかし、これらのデメリットは行政や各種団体、自助グループなどのサポートを受けることによって軽減できる可能性が高いでしょう。ひとりで抱え込まないことがもっともよい解決法なのかもしれません。
4、父親が親権を勝ち取るには?
では、父親が親権の獲得を目指すにあたり、やっておくべき行動を具体的に例示していきます。以下の項目を、少しでも多く実行に移すことが大切です。
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(1)子どもの監護時間を増やす
現状、親権について裁判で争う際、「監護の継続性の原則」が最重要ポイントとなると考えられます。このポイントで有利な判断を得るためには、離婚前から、自分が子どもをどれだけ世話してきたか実績で示すことが最大の武器になります。
保育園や幼稚園の送り迎えの頻度、食事や入浴の担当、家事の分担など、できるだけ細かく記録しておきましょう。絶対的な時間数では母親に及ばなくとも、勤務時間との比率として母親と同等程度、子どもの監護を行っていたと主張できれば、監護の意欲は大きく評価されるでしょう。 -
(2)離婚後の子どもの監護体制を整える
自分だけで子どもの監護が十全にできない場合でも、サポート体制が整えっていれば評価されます。短時間勤務、在宅勤務などの制度を利用することや、ファミリーサポートやシッターなどを継続的に契約できる準備があることなども、アピールポイントとなりえます。さらには、実家の親に同居してもらう、または近所に住んでもらうことが可能であれば、大きなアドバンテージとなるでしょう。
また、離婚後も母親と子どもの交流を積極的に認めれば、子どもと母親の関係性継続を尊重する姿勢を見せることになり、父親に親権を認める後押しとなるでしょう。 -
(3)別居する場合は子どもと住むようにする
親権を争う妻が、同居で専業主婦だった場合、子どもの監護に費やす時間では勝てません。しかし、別居という生活形態になった場合は、同居している親が子どもを監護していると主張できます。
そのため、子どもを監護する自信があれば、父親が子どもを連れて別居することにより、父親が子どもの監護を主に担っているという事実を作るという策もあります。ただし、子どもの環境が変化することに対する配慮を欠いた強引な別居は、逆に「子どもの福祉に反する」と判断される可能性もあります。強引な別居は避けるべきです。
互いに合意した結果の上で別居したのち、父親と子どもだけで生活が成り立っているという実態が作れたのであれば、親権を決めるにあたり大きなアドバンテージとなります。 -
(4)望ましくない養育環境を回避する
母親が育児放棄や虐待など、養育者にふさわしくない行動をしているのであれば、父親が親権を持つことが望ましいと考えられます。しかし、すぐに仕事を辞めるわけにもいきません。望ましくない養育環境であることが明らかであれば、児童相談所など行政の窓口に相談してみましょう。
状況によっては、子どもを乳児院や児童養護施設などに一時的に保護してもらうことも可能です。ひとまずの安全を確保し、しかるべきのちに、子どもの監護環境を整え、親権を獲得する働きかけを行うことをおすすめします。
ただし、いずれのケースでも状況によっては悪手となるケースもあるかもしれません。弁護士のアドバイスを受けながら準備を進めることをおすすめします。
5、まとめ
子どものため、どちらが親権を持つべきなのかは各家庭の事情で変わってきます。育児と仕事の役割分担の流れから、母親のほうが親権を獲得しやすいという現状はありますが、父親も監護の事実を示すことができれば、親権を獲得できる可能性は高まります。
忘れてはならないのは、離婚と子どもは関係がなく、どれだけ夫婦がいがみあったとしても、子どもにとってはどちらも大事な存在だということです。親権争いが難航する場合は、第三者である弁護士に依頼することで、お互いに感情的にならず交渉することもできるでしょう。
監護環境に関する意見書を作成し、母親の存在にも配慮した交渉を行ったほうがよいでしょう。依頼を受けた弁護士は、まず、父親が親権を得ることに問題がないことを、裁判所に対して効果的にアピールすることを目指します。
親権に関してお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所・柏オフィスにご相談ください。家族がそれぞれの新たなスタートを切るために、離婚調停や親権問題に精通した弁護士が全力を尽くします。
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