「妻の親族と相性が合わない」は離婚理由にできる? 柏オフィスの弁護士が解説
- 離婚
- 離婚
- 親族
- 柏
ふたりで添い遂げようと思って結婚したものの、さまざまな理由から離婚を選ぶ夫婦がいます。家族生活を送る中で、相手との性格の不一致が原因であれば、話し合いなどで関係を修復することも可能かもしれません。そのようなときでも、家庭裁判所の調停を利用することができます。夫婦がふたりとも柏市にお住まいの場合は、千葉家庭裁判所 松戸支部で調停を行うことになるでしょう。
しかし、離婚を考える理由が、夫婦だけの問題ではないこともあるでしょう。たとえば、配偶者の両親や家族との不仲が原因で、結婚生活の継続に支障をきたすこともあるのです。将来的な介護や同居などを考えると、親族との不仲は大きな壁となるはずです。今回は、配偶者が離婚に応じず調停や裁判になった際、親族との不仲が法定離婚事由として認められるのかについて解説します。
1、離婚の原因と離婚に必要な理由とは?
結婚生活を送っているあいだに、何らかの理由で相手との離婚を考えることは誰しもあることです。離婚も結婚と同様、配偶者と同意すればすぐに成立させることができます。しかし、配偶者が同意していない場合、離婚調停や裁判にもつれこむ可能性が高まり、ときには義理家族も巻き込む騒動になることも予想されます。
もし、裁判になっても離婚したいと考えるのであれば、民法で定められた法定離婚事由に該当することをあなた自身が証明する必要があります。とはいえ、いきなり裁判ができるわけはありません。その前の段階で話し合いを行うことになるため、配偶者や両親などに話をする前に、離婚に必要な理由などについて知識をつけておくことをおすすめします。
-
(1)離婚理由に配偶者の家族との不仲はあり?
結論から申し上げると、配偶者の親族との不仲が原因の離婚は、民法上における「法定離婚事由に該当する」とはいいにくい部分があります。
結婚は個人同士の合意さえあればできますが、親類縁者が増えるものでもあります。育ってきた環境が違うことによる価値観の違いは、往々にして起こります。その違いすら夫婦で楽しみ、ふたりだけの価値観を構築していくこと自体が結婚の面白さともいえるのかもしれません。
しかしながら、それができないケースもあるでしょう。配偶者はもちろん、配偶者の家族もしょせん他人です。いざこざによって一度溝ができてしまうと、それを埋めるのは難しいことも事実です。つまり折り合いが悪いと感じている側からすると、そのまま家庭生活を維持していくのはストレスがつきまとい、やがて苦痛でしかなくなるときがくるかもしれません。
その状態を、後述する法定離婚事由のひとつ「婚姻を継続し難い重大な事由」だと証明することができれば、離婚は可能です。ただし、それを立証するには十分な証拠が必要となるため、離婚調停経験が豊富な弁護士に相談したほうがよいでしょう。 -
(2)民法上に定められた離婚成立に必要な理由
前述のとおり、裁判において一方的な離婚が認められる離婚原因、「法定離婚事由」については、民法770条1項に定められています。裏返せば、法定離婚事由のいずれかひとつを満たしていない状態であれば、離婚裁判において、離婚が認められません。
民法上に定められた離婚成立に必要とされる理由を確認しておきましょう。
●配偶者に不貞行為があったとき
不倫や浮気などで肉体関係を伴う不貞行為があった場合です。ただし不貞行為前にはすでに婚姻関係が破綻していたケースや、不貞行為の証拠を提示できないケースは、離婚の請求が認められないことがあります。
●配偶者から悪意で遺棄されたとき
結婚した夫婦は、互いに「同居義務」・「協力義務」・「扶養義務」を負っています。しかし、理由なく同居を拒否する、生活費を渡さない、家事に協力をしないなど、結婚に伴い発生する3つの義務を放棄した行動をしたとき、悪意の遺棄とみなされることになります。
●配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
配偶者が生きているか、死んでいるかを確認できない状態が3年以上続いたときは婚姻解消できる可能性があります。
●配偶者が重度の精神病を患い回復の見込みがないとき
夫婦間の協力義務を果たすことができないほど、重度の精神病を患っているケースがこれに当たります。
●婚姻を継続し難い重大な事由が認められるとき
一般的には、酒、ギャンブル、高価なものを浪費する癖、借金などの金銭トラブルや、大幅な性格の不一致、身体的および精神的な暴行および虐待(DVやモラハラなど)、セックスレスなど、性生活にまつわる問題などが該当します。
ただし、民法770条1項の解釈によっては、婚姻を継続し難い重大な事由の中に、配偶者の親族との不仲も該当する可能性があります。しかし一般的には、結婚とは個人同士の意思に基づいて行われるものであるため、配偶者の家族との不和だけを理由として「婚姻を継続し難い重大な事由」とすることは難しいこともあります。配偶者が自身の家族との不和状態を知りつつ放置した、配偶者も一緒になって虐待のような対応をしたなどの事実があれば、認められる可能性が高まります。
なお、繰り返しになりますが、離婚調停や協議離婚をする場合は、法定離婚事由がなくとも双方が合意さえすれば離婚は成立します。 -
(3)離婚を考える前に知っておきたいこと
離婚を思いつけば、つらい思いをしていればしているほど、今よりもよくなるのであればすぐにでも離婚したいと思い込んでしまうものです。しかし、感情的に進める前に、まずは深呼吸をしましょう。離婚時に行動するだけで、離婚後の生活が大きく変わることもあるのです。
●慰謝料請求
相手との結婚生活においてDVなど肉体的ダメージを受けた、浮気をされたことで精神的ストレスを受けたといった相手に責めるべき要素があるとき、慰謝料請求できる場合があります。
●財産分与
結婚していると財布がひとつであることも多いものです。たとえあなたが専業で家事や育児を担っていたとしても、あなたが家事や育児を担っていたからこそ、配偶者は仕事に集中できたといえます。夫婦で協力して形成した資産について、ふたりで築き上げてきたものも含め、それぞれの貢献度に応じて分配を求める権利があります。
●子どもの親権
未成年の子どもがいる場合、親の責任として子どもを養育する義務があるので、離婚する際にどちらが親権を持つかを決める必要があります。
●養育費
親権を持った親は、子どもを育てる上で金銭的負担も負うこととなります。子どもが不自由なく生活できるため、必要な養育費の取り決めも必要です。
結婚とは異なり、離婚は、処理すべき出来事が多々発生します。自分では判断できないことや、法律的な問題がでてくることもあるでしょう。あとのトラブルや後悔を避けるためにも、弁護士に相談しながら離婚を進めることを強くおすすめします。
2、配偶者との離婚の手続きとその後
実際に配偶者と離婚をするとなった場合、どのような手続きが必要で、どんな流れで進めていくのかを確認していきましょう。あわせて、離婚後もまったく無関係とは言いづらい親族との関係性や付き合い方についてもご紹介します。
-
(1)配偶者との離婚までの流れ
配偶者との離婚手続きと流れは離婚の種類によっても変わりますが、以下の流れに沿って離婚が進められます。
●協議離婚
夫婦間の話し合いで離婚が決められるケースで、日本の離婚件数のうち約9割がこれに当たります。離婚届を役所に提出するだけで成立しますが、未成年の子どもがいるときは親権者を決めて記入する必要があります。
●調停離婚
家庭裁判所で行われる調停制度を利用して、合意に至ったときの離婚方法です。調停委員を交えた上で離婚についての話し合いを行います。どちらかが離婚を拒んだ場合や、話し合いができないとき、親権や養育費など離婚に伴う条件などが合意できなかったとき、調停を行うことになります。
●離婚裁判
調停離婚で夫婦間の話し合いが決着せず、それでもどちらかが離婚を望んでいる場合、法廷で決着をつける方法です。離婚できるかどうかの争点となるのが、前述した法定離婚事由に該当するかどうかです。慰謝料などの請求を行っているときも、ここで決定が下されることがあります。 -
(2)配偶者との離婚手続きを確認
それぞれの離婚までの流れごとの手続きをご紹介します。
●協議離婚
離婚が双方の合意で成立していますので手続きはスムーズです。するべきことは以下のとおりです。
- 離婚届を市町村役場などに受け取りに行く
- 離婚届に記入、署名、捺印し、証人となる人の署名と捺印ももらう ※未成年の子どもがいる際は、親権者を記載
- 夫婦の本籍地もしくは住所地の市町村役場に提出
ただし、話し合った内容を書面にする、公正証書にするなどの手続きを行わなければ、約束を反故にされてしまう可能性があります。
●調停離婚
- 家庭裁判所に調停の申し立てを行う
- 調停委員が妻、夫それぞれから意見を聞き、双方の調整を試みる ※回数にして6~10回、平均で4ヶ月以上続くのが一般的です
- 夫、妻ともに合意に至ると調停調書が作成され、調停成立
協議離婚に比べて時間がかかるのが特徴ですが、第三者が入ることで冷静に話ができるメリットがあります。また、調停離婚が成立したときは、話し合いで合意を得た離婚に伴う条件を記載した調停調書が発行されます。調停調書は法的な効力があり、万が一支払いがされないときなどは速やかに強制執行を行うことができます。
●離婚裁判
調停離婚が成立しなかった場合、訴訟の申し立てを裁判所に行います。調停を行わず、離婚裁判を行うことはできません。裁判では、夫、妻それぞれが裁判期日に、自らの主張と立証し、夫、妻に対する尋問が行われます。途中、裁判所より和解案が提示されることもあるでしょう。和解が成立しない場合、裁判所によって離婚が適当かどうかの判決が下るとともに、慰謝料などを請求しているときは、金額が判断されます。
なお、判決書の送達を受けた日から2週間以内であれば、裁判所の判決に不服な場合は控訴可能です。離婚裁判は離婚調停よりもさらに期間を要し、1年から2年程度かかるのが一般的です。 -
(3)離婚後の親族との関係性や付き合い方
離婚後の親族との関係をどうすればよいのかというのも悩みどころでしょう。法律的には婚姻関係が解消された時点で、親族とも縁が切れると考えられています。しかし子どもがいる場合などは、そのまま縁を切るのが難しいケースもあるかもしれません。義両親からすると孫に会いたい気持ちは捨てきれないものです。
考え方としては、DVやモラハラなどがある、金銭の無心をするタイプであるなど、子どもの精神的・肉体的な成長に大きな問題があると判断できれば、離婚後の付き合いはできるだけ避ける方が無難でしょう。裁判などで決着はついたとしても、のちのちトラブルを引き起こしかねません。
ただし、主観的な判断になってしまわないよう、子どもの気持ちに寄り添う必要があるでしょう。離婚をする前に、今後の付き合い方についても弁護士に相談しておくこともひとつの手です。
3、まとめ
離婚問題は泥沼化すると精神的にも大きなストレスとなります。それぞれの立場や心情が影響するため、どのように離婚を切り出していけばよいのかについての判断も難しいものです。特に同居をしていると、義理の家族にも気を使いますし、それ以上に、相性の合う、合わないが大きな問題となります。誰かに相談するヒマももらえない可能性もあるでしょう。
親族との不仲が原因で離婚をしたケースもありますが、裁判になった場合に離婚事由として必ずしも認められるとは限りません。法的観点から離婚が成立するか否かを検証する必要があるでしょう。
親族との折り合いが悪くて離婚を考えているのであれば、ベリーベスト法律事務所・柏オフィスへまずは相談してください。気持ちの整理を行うとともに、最善の策を模索しましょう。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています