年収700万円の夫と離婚。養育費の相場はどれくらい?

2021年10月14日
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年収700万円の夫と離婚。養育費の相場はどれくらい?

柏市公式の『くらしの手続きナビ』というホームページでは、複数の質問に回答するだけで、ライフイベントに際して必要な手続きを知ることができます。離婚する際には、離婚届の提出以外にも、さまざまな手続きが必要になるため、同サイトを利用して確認しておくと安心です。

離婚を決めた場合、離婚届を提出する前に、夫婦間で離婚条件を取り決めるべきといえます。特に、未成年の子どもがいる場合は、養育費について、しっかりと話し合っておくことが大切です。
親権を持つ親は、親権を持たない者に対して、相場に応じた養育費を請求する権利がありますが、どの程度の金額を請求することができるのでしょうか。

本コラムでは、子どもがいる夫婦が離婚する際、専業主婦(主夫)の方が、年収700万の配偶者に対して請求できる養育費の相場や、養育費不払いへの対処法などについて、柏オフィスの弁護士が解説します。

1、養育費の相場と決め方

未成年の子どもがいる夫婦が離婚するにあたっては、離婚前に決定しなければならないことが多々あります。

  1. (1)離婚までに決めるべき事項とは?

    • 子どもの親権
    • 父または母と子どもの面会および交流
    • 子の監護に要する費用の分担(養育費)


    いずれの場合も、民法第766条第1項によって「子の利益を最も優先して考慮しなければならない」と条文に明記されています。

  2. (2)養育費の内容

    親には、未成熟子の扶養義務と、子どもが離婚後も今までと同等の生活ができるようにする「生活保持義務」があるとされています。たとえ親権を持たない親であっても変わりません。この生活保護義務に従って支払う費用が「養育費」です。

    養育費には、子どもの成長に必要な生活費、教育費、医療費、習い事などの費用などが含まれます。養育費は、子どもが離婚前と同等の生活を送るための費用です。親権を得た元配偶者に支払う慰謝料や財産分与などとは異なる性質をもちます。

  3. (3)年収700万の養育費の相場

    養育費は原則、話し合いで決められます。

    話し合いで決まらないときは、親の年収、子どもの年齢、子どもの人数を勘案し、裁判所が公開している「養育費・婚姻費用算定表」が広く使われています。この算定表はあくまで参考であり、法的な拘束力はありません。しかし、裁判所での調停や審判、裁判においては非常に重視されます。

    では、算定表を元に、具体的なケースにおける相場を確認してみましょう。

      【ケース】
      すべての子どもの親権者が母親の場合
      父親:会社員/年収700万
      母親:専業主婦/年収0万

    • 子ども1人(14歳以下)……8~10万円
    • 子ども1人(15歳以上)……10~12万円
    • 子ども2人(どちらも14歳以下)……12~14万円
    • 子ども2人(14歳以下、15歳以上1人ずつ)……14~16万円
    • 子ども2人(どちらも15歳以上)……14~16万円


    配偶者の年収が700万円で、一方に収入がない場合の養育費の相場は、8~16万円ということがわかります。また、子どもの人数や年齢によって、どの程度違いがあるのかも、確認しておくべきポイントでしょう。

    ベリーベスト法律事務所では、裁判所基準の算定所に基づいた試算ができる『養育費計算ツール』をご用意しています。ぜひご活用ください。
    ※養育費計算ツールはこちらからご利用いただけます。

  4. (4)養育費はいつまで払うか

    養育費の支払期間についても法律上の定めはありません。一般的には、子どもが20歳になるまで支払う義務があると考えられますが、20歳未満でも子どもが就職して経済的に自立した場合はこの限りではないでしょう。

    逆に、子どもが大学に通っているなど、20歳を超えても経済的に自立していない場合は、大学を卒業するまで養育費をもらい続けるよう取り決めることも可能です。また、子どもに障害や病気があり、経済的な自立が難しい場合、20歳以降も養育費を続けることができる可能性があります。

    いずれにしても、状況に応じて、双方の話し合いが必要となります。

2、養育費の不払い対策は弁護士へ

離婚後に養育費の支払いが滞ってしまったら、子どもを文化的健康的な生活をさせるためには多くの支障が出るでしょう。子どものためにも、このような事態を防ぐためにも、できるかぎり離婚前の時点で弁護士からアドバイスを受けることをおすすめします。

  1. (1)公正証書作成のサポート

    養育費の不払い対策としては、親権や養育費について双方が話し合って決めた内容を「離婚協議書」として書面にし、さらに「公正証書」として残しておくことが挙げられます。

    公正証書とは、公証役場で公証人が作成した文書をいいます。作成された公正証書の原本は公証役場に保管されますので、紛失のおそれがありません。また公証人立ち会いのもと、内容が確認されているため、あとで「言った」「言わない」の事態に陥る可能性を防ぐことができます。

    さらに「強制執行認諾約款」を盛り込んだ公正証書にすれば、養育費などの不払いがあったときに、すぐ強制執行の手続きをとれます。「強制執行」とは、債権者が裁判所に申し立てて、支払い義務のある人の債権(給与や預貯金)、不動産などを差押さえてもらい、支払われなかった分にあてる制度です。

    強制執行をするには裁判を起こす必要がありますが、強制執行認諾約款つきの公正証書があれば、速やかに手続きを進められます。この公正証書の元となる離婚協議書の作成を弁護士に依頼することで、取り決めに抜け漏れがなく、支払いをより確実なものにできる可能性が高まります。

    なお、協議離婚ではなく調停離婚の場合は、離婚が成立すると「調停調書」という書類が作成されます。調停調書があれば、養育費の未払いなどが生じた場合に裁判をせずに差押さえができるため、別途、公正証書を作成する必要はありません。

  2. (2)内容証明郵便の送付、交渉

    養育費の不払いがあったとき、支払いの督促状を「内容証明郵便」で相手に送付しましょう。このとき、弁護士に依頼して弁護士名義で送付すれば、相手によりプレッシャーを与える効果が期待できます。

    なお、養育費は原則として、毎月分割で支払われるケースが多いものです。その場合、養育費の債務は毎月発生します。養育費の時効は、通常の離婚協議書や離婚公正証書であれば5年、裁判による確定判決によって定まった養育費であれば10年が原則です。

    しかし、督促状を送付し、それに対して相手が書面などで支払い義務を認めた場合は、時効は中断します。口頭だけでの回答では時効の中断は認められないので注意が必要です。養育費の不払いがあってしばらく経過しているケースは、すぐに弁護士に相談することをおすすめします。弁護士に依頼することで、自分が相手と交渉するストレスから解放されるのも大きなメリットです。

  3. (3)履行勧告・強制執行のサポート

    調停調書があれば、養育費の不払いが起こった際に裁判所から「履行勧告」を出してもらうこともできます。それでも養育費が支払われないならば、強制執行に踏み切ることになります。

    強制執行のメリットは、これから支払いの期限が到来する将来の養育費についても一括して強制執行の申し立てをできるということです。そして、この強制執行の申し立てが裁判所に認められた場合には、相手方の給料から天引きによって養育費の支払いをうけることができるようになるでしょう。

    これらの手続きは、経験が豊富な弁護士にサポートしてもらうことで、より迅速な解決が見込めます。

3、養育費の変更

養育費は、子どもが成長するまでの長い間支払われるものです。したがって、もしも養育費を定めたときと大きく事情が変わった場合は、養育費の変更を請求することも可能です。

これらの場合、裁判所に対し、養育費の変更を求める調停を申し立てることが通常です。

  1. (1)養育費の増額請求

    子どもが大きな病気をした、私立大学に進学したなどという事情により、あとから子どもの生活に多額の費用がかかる事情が発生した場合、養育費の増額変更が認められることがあります。

  2. (2)養育費の減額請求

    逆に、親の失業などによって、養育費の減額を請求されることもありえます。養育費の支払い義務を負っている親が失業したり、再婚して新たに子どもをもうけたりした場合、養育費の減額が申し立てられるケースが多いでしょう。

    しかし、減額を安易に受け入れてしまうと子どもの不利益にもつながります。そこで、養育費変更にあたっては、裁判所の調停員との話し合いを行うことになるでしょう。もし相手が収入減少を理由とするならば、源泉徴収票などで根拠をしっかり確認することをおすすめします。

4、まとめ

厚生労働省が発表している「平成28年度全国ひとり親世帯等調査結果報告」によると、そもそも養育費の取り決めをしないで離婚してしまった世帯が過半数を占めています。子どもがいる夫婦が離婚をする場合、相場に応じた養育費の金額と支払いの取り決めは、弁護士を介して確実なものとしておくべきでしょう。

そもそも、養育費は子どもの権利です。元配偶者に対してさまざまな感情があることは理解できますが、自分だけではなく、子どもの将来のためにも、経済的に困窮することのないよう、早めの対策をすることが重要です。それは、年収が700万であっても、それより低い状態であっても関係ありません。

養育費の支払いが心配な方は、まずはご連絡ください。ベリーベスト柏オフィスでは、離婚問題に対応した経験が豊富な弁護士が、あなたの不安を解消するために力を尽くします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています