配偶者の美容整形を理由に離婚することはできる? 柏オフィスの弁護士が解説!
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中国人の男性が、子どもの容姿が似ていないことをきっかけに妻が整形手術していたことを知り、離婚訴訟を起こし、離婚と慰謝料が認められたというニュースが話題になりました。
これは中国での話題でしたが、日本で同様のことがあった場合、法的に離婚は認められるのでしょうか。
本コラムでは、「整形は離婚理由になるのか」といったテーマを軸に、法律で認められている離婚理由について、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説していきます。
1、整形は離婚理由になるのか?
「君が整形していたとは知らなかった。離婚したい」などと言われた場合、離婚は認められるのでしょうか。
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(1)当事者間で合意すれば離婚は成立する
離婚は、当事者間で合意し離婚届を提出できれば、どのような理由であっても原則として成立します。
つまり、整形していたことを理由に相手から離婚を切り出された場合、自分が合意すれば離婚は成立します。
話し合いでは合意に至らず、それでも相手が離婚をしたいと思うようであれば、相手は家庭裁判所に離婚調停を申し立てることが考えられます。
離婚調停では、調停委員を交えて当事者で話し合いますが、調停でも合意に至らない場合は、離婚裁判へと展開します。 -
(2)裁判では整形は離婚理由として認められない可能性が高い
離婚裁判では、後にご説明する「法律で認められている離婚理由」に該当しなければ離婚は認められません。
整形していたという事実のみでは、法律で認められている離婚理由に該当する可能性は低く、裁判で離婚が認められる可能性は低いといえます。
2、法律で認められる離婚理由とは
日本では、次に挙げる離婚理由に該当する場合、裁判所によって離婚が認められます(民法770条1項)。
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(1)配偶者に不貞行為があったとき
不貞行為とは、夫婦の一方が他方とは別の人と性的関係をもつことです。
つまり、夫や妻が浮気をした場合です。
浮気をされた側からは、相手の不貞行為を理由として離婚が認められます。 -
(2)配偶者に悪意の遺棄があったとき
悪意の遺棄とは、正当な理由なく夫婦がお互いに負う同居義務や協力扶助義務や婚姻費用分担義務に反して、自己中心的な生活を営むことをいいます。
「生活費を渡してくれない」「勝手に家を出て行ってしまった」「無理やり家を追い出された」といった場合が悪意の遺棄にあたり、この場合、離婚が認められます。 -
(3)配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
「配偶者が突然家を出ていなくなり音信が途絶えてしまった」「遠方での仕事から帰らず行方が分からない」といった場合、3年以上生死が分からなければ離婚を請求することが認められています。
3年以上生死が分からないとは、生存または死亡どちらの証明もできないことを意味します。そのため所在不明でも生存が確かな場合には、離婚事由に該当するとはいえません。 -
(4)配偶者が強度の精神病にかかって回復の見込みがないとき
配偶者が正常な婚姻共同生活の継続を期待できないほど重い精神的障害にかかり、回復の見込みがない場合には離婚を請求することが認められるとされています。しかし、非常にセンシティブな事柄でもあるため、裁判所も慎重に判断するのが実際です。
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(5)その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき
実務上、離婚裁判では、この事由が主張されるケースが多くあります。
「婚姻を継続しがたい重大な事由」とは、主に次のようなものがあります。
●配偶者に対する暴力
いわゆるドメスティックバイオレンス(DV)です。DVには、身体的暴力だけでなく暴言を吐くなどの精神的暴力なども含まれます。
●浪費による多額の借金がある
「働けるはずなのに働かない」「浪費癖が治らない」「多額の借財がある」などの事情があり生活自体が困難になる場合は、離婚原因になることがあります。
●長期間の別居
それぞれのケースにもよりますが、別居期間は3年程度が一応の目安と考えられています。
ただし、有責配偶者(離婚原因を作り、結婚生活を破たんさせた配偶者のこと)からの一方的な要求によって別居に至ったような場合には、3年ではなく、もっと長い別居期間が必要とされています。
3、整形を隠していたことを理由に慰謝料請求される可能性はあるか?
慰謝料とは、不法行為によって精神的損害を被った場合に支払われる損害賠償をいいます。
つまり、不法行為が成立しない場合には慰謝料請求されることはありません。
そのため整形を原因として当事者の話し合いで離婚することになった場合でも、整形を隠していたことは原則として不法行為には当たらないので、慰謝料請求される可能性はないといえるでしょう。
また、そもそも裁判では整形の事実のみでは離婚が認められる可能性は低いため、離婚に際して慰謝料請求が問題となることもありません。
4、学歴や年収を偽っていた場合には離婚理由となるか?
学歴や年収を偽っていたことが発覚した場合にも、離婚理由となるかが問題とされることがあります。
学歴や年収を偽っていたという事実は、法律で認められる離婚理由のうち「婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」に該当するかが検討されます。
基本的には、学歴詐称の事実のみでは離婚理由に該当する可能性は低いと考えられます。しかし、年収を偽っていたような場合には、生活水準を偽りの年収と同レベルにするために、多額の借金をしているようなケースも考えられます。
そのような場合には「(5)その他婚姻を継続しがたい重大な事由があるとき」でご説明した「浪費による多額の借金がある」場合と同様に考えることができるので、離婚理由となる可能性があります。
5、離婚を拒否したい場合に相談できるところ
整形が発覚し相手から離婚を切り出された場合に、離婚を拒否したいのであれば専門家や専門機関に相談することも有益です。相談先には、次のようなものがあります。
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(1)離婚カウンセラー
離婚カウンセラーは、離婚問題を抱える夫婦の相談にのって、夫婦関係の修復や今後の道筋をともに考え、アドバイスをしてくれます。夫婦双方が離婚すべきかどうかの判断がつかない場合や離婚の危機を回避してやり直したいと考える場合には、離婚カウンセラーに相談することで気持ちも整理され、新しい道が開けるかもしれません。
ただし、離婚カウンセラーという国家資格はないので、悩みが解決するか否かは、カウンセラー個人の力量によるところが大きいでしょう。 -
(2)市区町村の無料相談
離婚問題に関しては、お住まいの市区町村で無料相談を受けられることもあります。たとえば柏市では、夫婦関係を含めた女性のさまざまな悩みごとに関して相談ができる「女性のこころと生き方相談(予約制)」という制度が用意されていますので、ご利用を検討されてみてはいかがでしょうか。
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(3)弁護士
弁護士は、離婚問題に関する手続きをはじめ、法的なアドバイスを行い、相手との交渉も行うことができます。
たとえば、離婚に際して夫婦の財産関係を清算する財産分与の問題や、子どもの親権や養育費の問題などについて、問題点を整理していきつつ、解決していきます。
たとえば、整形を理由に相手から離婚を切り出され、それに合意できない場合などは、弁護士があなたの代理人となって話し合ったり、交渉することができます。もし調停や裁判になった場合にも、弁護士は法的な知識や経験をもとに交渉が有利に進められるように弁護活動をしていきます。
6、まとめ
本コラムでは、「整形は離婚理由になるのか」といったテーマを軸に、法律で認められている離婚理由や相談先などについて解説してきました。夫婦間で離婚の話が出て、離婚が現実的になるならば、財産分与をはじめ、お子さんがいるなら親権問題、養育費についてなど、離婚する前に取り決めなければいけないことが次々と浮上してきます。大切なことを決められないまま離婚してしまい、後で悔やむようなことがあっては大変です。
もしも離婚問題で悩まれているようでしたら、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスまでご相談ください。弁護士がご相談者さまのお気持ちに寄り添いながらお話をうかがい、問題の解決に向けて精いっぱいサポートいたします。ぜひお気軽にご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています