離婚における損害賠償の請求方法は? 基礎知識と手順を弁護士が解説

2019年11月06日
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離婚における損害賠償の請求方法は? 基礎知識と手順を弁護士が解説

都内通勤者のベッドタウンとしても人気が高い柏市ですが、平成29年の柏市1000人あたりの離婚率は1.8であり、厚生労働省が発表した同年の全国平均離婚率である1.66を上回っています。
離婚に至る原因は人それぞれですが、不倫や家庭内暴力などの理由によって離婚に至った場合には、相手方に慰謝料を請求できる場合があります。慰謝料という言葉はよく耳にしますが、具体的には損害賠償請求のひとつにあたります。
この記事では、離婚における損害賠償請求について、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説します。

1、損害賠償請求とは

そもそも損害賠償とは、どのような場合に請求できるのでしょうか。

損害賠償とは、違法な行為によって他人に損害を与えたときに負う責任のことを言います。損害賠償は大きく分けて「債務不履行による損害賠償」と「不法行為による損害賠償」があります。
ある人とある人が話し合って決めた合意を守らなかった場合には、債務不履行による損害賠償を請求できると考えられます。
他には、配偶者が不倫をしたのであれば、配偶者としての権利を侵害されたとして、不法行為による損害賠償請求ができるのです。

損害賠償で請求できるのは「財産的損害」「精神的損害」の2種類があげられます。

「財産的損害」とは、発生した事柄が原因となって失った財産がある場合などの損害です。わかりやすく言うと、交通事故で自動車が壊れた場合の修理費用や、怪我をして通院したときの医療費などが該当します。
「精神的損害」とは、その名の通り、精神的苦痛に関する損害です。不貞やモラハラなどによって深く心が傷ついた場合の精神的損害に対して、慰謝料を請求することができます。

2、慰謝料請求できるケース

離婚において慰謝料を請求できるケースには、次のような事柄があげられます。

  • 不貞行為(不倫)
  • 悪意の遺棄
  • 家庭内暴力
  • モラルハラスメント


たとえば不貞行為は、法律上の離婚原因として認められています。したがって、不貞行為により婚姻関係が破綻した場合には、不貞をした配偶者と不貞の相手方に対して慰謝料の請求ができます。
また、配偶者が婚姻関係の破綻を企図して(あるいは、破綻しても構わないと考えて)、生活費を渡さない、意味のない別居をする、家出をするといった場合には、悪意の遺棄として慰謝料が発生する可能性があります。
その他、継続的な重度の暴行(殴る、蹴る)や日常的な暴言、過度の束縛によって肉体的、精神的に傷ついた場合にも慰謝料を請求できる可能性があります。

ただし、不貞行為に基づいた慰謝料請求には時効があります。
不法行為をしていること及びその相手方を知ってから3年が経過してしまうと、時効によって請求権が消滅します。たとえば、不貞行為を知っていたけれど、何もしないまま3年が経過すると、不貞行為の事実があったとしても慰謝料を請求することはできなくなります。
過去に不貞行為をされていたことを偶然知ってしまい、慰謝料を請求したいと考えた場合でも問題ありません。不貞行為のあること及びその相手方を知ってから時効のカウントダウンが始まるからです。

3、慰謝料請求できないケース

離婚において、慰謝料請求が難しくなる典型的なケースは「性格の不一致」です。
性格の不一致の場合、一概にどちらか一方に責任があるとは言えないので慰謝料請求は認められない可能性が高いでしょう。

また、「離婚=慰謝料がもらえる」と思いがちですが、必ずしもそうではありません。そもそも慰謝料は損害賠償のうち、精神的苦痛に対する賠償金です。
離婚に至った事由が何かによって、慰謝料の請求可否も変わってきます。

4、慰謝料請求の方法

一般的な離婚手続きは、まず協議から始めます。協議不成立となった場合には、裁判所による調停をして、それでも解決しない場合に裁判へと進みます。

話し合いができる状況であれば、離婚協議の中で慰謝料の金額や支払方法を決めていきます。基本的にはお互いが納得すれば、慰謝料の額に計算根拠は不要です。ただし、話し合いの内容は、双方合意の元、録音するかメモで残しておくと良いでしょう。離婚は感情が深く絡む問題なので、後からもめ事になることも少なくありません。不要なトラブルを避けるためにも、話し合いの内容は残しておくのが良いでしょう。

話し合いによる協議で決着がつかないときには、調停を申し立てます。調停は家庭裁判所で行われ、2名の調停委員が中立的な立場で話し合いに立ち会います。当事者だけではなく、第三者が入ることによって、冷静かつ客観的に離婚にむけて話し合いをすることができます。ただし、基本的には調整だけになることから、合意に至るかどうかは、話し合いの状況に任せられます。

調停でも双方の合意が得られなければ、最終的に裁判によって慰謝料を請求することになります。

5、慰謝料請求で弁護士ができること

慰謝料請求では、相談や協議に立ち合うだけではなく、あなたの代理人として話し合いに臨むことも可能です。また、協議で決着がついたときは、話し合いの内容を書面に残すための「和解契約書」といった示談書の作成も任せられます。もちろん、調停や裁判になったときは、手続きから決着まで専門知識をもって解決に全力を尽くします。

これ以外にも、弁護士へ依頼するメリットがあります。

  1. (1)消滅時効を停止する処置

    前述したように、慰謝料請求には時効がありますが、時効の進行を止める手段もあります。

    • 内容証明郵便などにより慰謝料請求の通知を行う「催告」
    • 裁判上の請求をする


    時効が迫っている場合は、まずは「催告」が有効です。時効期間が完成することを6ヶ月延長することができますが、一時的な対応であることは変わりません。延長した6ヶ月以内に、訴訟を提起する必要があります。これらの手続きは、時効が迫っていることから、迅速に手続きを進める必要があります。訴訟を提起する準備もあるので、弁護士がいれば安心です。

  2. (2)証拠集めや親権に関する相談

    配偶者の不法行為を立証するためには、証拠集めも重要です。しかし、いくら証拠をかき集めても、第三者へ立証できる客観的な証拠でなければ意味がありません。弁護士であれば法的に有効となり得る証拠についてだけではなく、証拠集めの方法についても的確なアドバイスが可能です。その他、離婚後の生活のために知っておきたい公的制度のことや、子どもがいる場合には親権などの問題についても相談できます。

    離婚は、慰謝料請求だけではなく法的な対応が必要になる場面が多々あります。ひとりで対応しようとすると、つらい時間を長引かせてしまうことになりかねません。離婚を決めた際は、少しでも早く弁護士へ相談することをおすすめします。

6、まとめ

離婚にあたり、損害賠償として慰謝料を請求したいと考えても、多くの方が何から手をつけて良いのかわからないと思います。また、配偶者に説得されて、慰謝料の請求権はないと思い込んでしまっていることもあるかもしれません。
しかし、配偶者の不法行為をしっかりと証明できれば、精神的な損害に対して慰謝料を請求する権利があります。不安や疑問を感じた際は、一度弁護士に相談してください。弁護士はあなたの代理人として、配偶者と話し合いをすることも可能です。あなたのパートナーとして、離婚に関わる諸問題から慰謝料請求まで、全力でサポートします。

離婚に際し、損害賠償として慰謝料を請求できるかどうか悩まれている方は、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士へご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています