離婚調停の申し立てに必要な陳述書とは? 記載内容と書くときのポイント

2023年03月14日
  • 離婚
  • 離婚
  • 調停
  • 陳述書
離婚調停の申し立てに必要な陳述書とは? 記載内容と書くときのポイント

千葉県柏市における2019年の離婚件数は700件で、人口1000人当たり1.7組となっています。

離婚調停を申し立てる際には、申立書と併せて「陳述書」を作成する場合があります。陳述書を作成する際には、裁判官や調停委員に対して経緯や主張内容がわかりやすく伝わるように、客観的かつ整理された記述を心がけることが大切です。

申立書や陳述書、その他の証拠資料を作成する際には、専門家である弁護士に相談することをおすすめします。本コラムでは、離婚調停で提出する陳述書について、記載事項や作成時の注意点などをベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説します。

1、離婚調停で提出する「陳述書」とは?

離婚調停や離婚訴訟では、当事者の主張内容をまとめた書面(申立書・答弁書・準備書面など)に加えて、当事者の主張を裏付ける証拠資料を提出することが一般的です。
陳述書は証拠資料の一種であり、離婚の当事者や関係者が記憶している事実を記載した書面となります。

  1. (1)当事者が作成する陳述書

    離婚調停において当事者が陳述書を作成する場合、その目的は、裁判官や調停委員に主張内容をよりわかりやすく伝えることです

    主張したい内容を法的にまとめた書面は主張書面や意見書として提出しますが、それと併せて陳述書を提出することで、裁判官や調停委員に細かい事情が伝わって、事件の全貌を理解してもらいやすくなります。

  2. (2)当事者以外の関係者が作成する陳述書

    離婚調停では、当事者以外の関係者が作成した陳述書を提出することもあります

    この場合の目的は、裁判官や調停委員に対して作成者の記憶している事実関係を伝えることです。
    第三者的な立場にいる関係者が記憶している事実関係を提示することにより、自身の主張を補強する効果が期待できます。

2、当事者が作成する離婚調停の陳述書に記載すべき事項

当事者が作成する離婚調停の陳述書には、主に、以下のような事項を記載します。
また、陳述書を作成する際には、裁判官や調停委員に対して内容が説得的に伝わるように、整然とした記載を心がけましょう

  1. (1)離婚調停を申し立てた経緯

    陳述書のなかでもっとも重要なのは、「離婚調停を申し立てた経緯」に関する記載です。
    申立書や答弁書などのなかでも経緯に関する記載は行いますが、陳述書では、当事者が感じたことなども含めてより詳細に記載することになります。

    離婚調停の場合、申し立ての経緯に関しては、以下の事項を記載することが一般的です。

    • 結婚をした時期
    • 婚姻期間中の夫婦関係の変遷
    • 離婚を決意するに至った出来事
    • 各段階で当事者として感じたこと

  2. (2)婚姻期間中・現在の生活状況

    離婚調停の陳述書では、婚姻期間中にどのような生活を送っていたのか、現在はどのような生活を送っているのかについて、具体的に記載しておくことが重要です。
    結婚生活に関する詳細は、調停委員にとっては、離婚条件に関する調整を進めるために重要な参考情報となるためです。

    具体的には、争点になりそうな離婚条件に応じながら、以下のような事情について詳しく記載することをおすすめします

    ① 財産分与関係
    • 収入はどのくらいか
    • 毎月生活費はどのくらいかかるか
    • 財産の種類、額がどのくらいあるか

    ② 慰謝料関係
    • 配偶者から受けた暴力、侮辱などの内容
    • 配偶者が不貞行為に及んだ経緯
    • 配偶者の不貞行為を知るに至った経緯
    • 配偶者の行為に対して感じたこと

    ③ 婚姻費用関係
    • 別居を始めた時期
    • 別居期間中、自身の収入はどのくらいあったか
    • 子どもの人数、年齢

    ④ 子ども関係
    • 婚姻期間を通じて、子どもをどのように養育してきたか
    • 子どもの養育に関する費用はどちらが負担してきたか
    • 婚姻期間中の1日の生活スケジュール
    • 別居開始後、子どもはどちらと一緒に住んでいるか
    • 子どもと一緒に住んでいる場合、生活をサポートしてくれる家族などはいるか
    • 離婚後の生活について、子どもと相談した際の会話内容
  3. (3)配偶者の財産などについて知っていること

    特に財産分与が争点となっている場合、配偶者の財産などについて知っていることがあれば、その内容も陳述書に記載しておきましょう。

    正確なところが分からなければ大まかな内容でも問題ないので、以下のような事項を記載してください。

    • 配偶者の職業
    • 配偶者の収入実績
    • 配偶者の資産の内容、金額


    なお、配偶者の財産などについての客観的な資料(給与明細・確定申告書・預金通帳など)がある場合には、陳述書と併せて提出しましょう。

  4. (4)最終的に希望する解決の内容

    離婚調停では、当事者双方が希望する解決内容をふまえて、調停委員が当事者間の調整を試みます。
    調停委員に対して自身の希望を正確に伝えるためには、その内容を陳述書にまとめて記載することが効果的です。

    具体的には、以下の事項について、希望する解決内容を記載しましょう。

    • 離婚を希望するかどうか(条件付きであればその旨も)
    • 財産分与の内容、金額
    • 慰謝料の有無、金額
    • 婚姻費用の有無、金額
    • 親権を希望するかどうか
    • 養育費の金額、支払い方法、終期(子どもが何歳になるまで支払うか)
    • 面会交流の頻度、方法

3、当事者が離婚調停の陳述書を作成する際の注意点

離婚調停で当事者が陳述書を提出するのは、あくまでも裁判官や調停委員に対して、自分の主張の内容を説得的に伝えるためです。
したがって、陳述書を作成する際には、以下の点に注意してください。

  1. (1)時系列を整理してわかりやすく記載する

    裁判官や調停委員は離婚の当事者ではないため、提出資料を見て初めて夫婦の結婚生活の詳細を知ることになります。

    そのため、申立書や答弁書と同様に、陳述書においても、事実を時系列に沿ってわかりやすく記載することが大切です
    当事者であれば当たり前に思えるような内容についても、第三者である裁判官や調停委員が読むことを前提として、過度に省略せずに順を追って説明することを心がけましょう。

  2. (2)感情的な内容の記載は避ける

    陳述書に感情的な記載を連ねることは、裁判官や調停委員を味方につけるという観点からすると、全くメリットがありません。
    非合理的な主張をしているような印象を与えてしまい、離婚調停を有利に進めることがかえって難しくなる可能性が高いためです。

    配偶者に対して悪感情を持っているとしても、陳述書を作成する際には、その感情を表現しないようにしましょう
    あくまでも理路整然と、事実に基づく記載を心がけることで、裁判官や調停委員を味方につけられる可能性が高まります。

  3. (3)法的な観点をふまえて作成する

    離婚調停は、話し合いによる解決を目指す手続きです。
    調停委員は、法的な観点から妥当な落としどころを意識して、当事者間の調整を行います。
    また、最終的に調停が不成立となった場合には、調停手続きの中で提出された陳述書が、離婚訴訟の証拠資料になることもあるのです。

    そのため、離婚調停で提出する陳述書には、法的な観点から自身に有利になる記載を心がけることが大切です
    弁護士に相談すれば、「財産分与・慰謝料・婚姻費用・子どもに関する事項などの離婚条件を念頭に置いたうえで、各条件について有利な結論を得るためには陳述書で何を述べるべきか」という点についてアドバイスを受けることができます。

4、離婚調停の陳述書作成は弁護士にご相談を

離婚調停の陳述書は、裁判官や調停委員に対して与える事件の印象を大きく左右する可能性があります。
陳述書に不合理な記載が含まれていると、それだけで裁判官や調停委員が疑念を抱き、離婚調停を有利に進めることが難しくなるおそれもあるのです。

裁判官や調停委員を味方につけるためには、自身の主張が法的な観点からも正当であることを、陳述書を通じて理路整然と訴えることが大切です

弁護士であれば、希望する解決内容に応じながら、適切に陳述書を作成することができます。
また、陳述書の他の証拠資料の作成や収集、調停期日への対応などについても、弁護士はすべてサポートすることができます。
離婚調停の申し立てを検討されている方は、お早めに、弁護士に相談することをおすすめします。

5、まとめ

離婚調停において陳述書を提出する際には、感情的な内容を記載せず、事実についてわかりやすい記載を行い、裁判官や調停委員を理路整然と説得することが重要です。
弁護士のサポートを受けながら陳述書を作成すれば、離婚調停において裁判官や調停委員を味方につけられる可能性を高められます

ベリーベスト法律事務所では、離婚に関するご相談を受け付けております。
配偶者との調停離婚を検討されている方や、より良い条件での離婚を実現したい方は、ベリーベスト法律事務所にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています