離婚後に出産しても元夫の子どもになる!? 300日問題の対処法を解説
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柏市が公表している、平成30年「柏市統計書」によると、1日あたり5組の夫婦が誕生し1.9組の夫婦が離婚しているとされています。
離婚には時間がかかることもあり、離婚直後に新しいパートナーの子どもを妊娠していることが判明することもあることでしょう。ところが、離婚から300日以内に子どもが生まれた場合には、そのままでは戸籍上元夫の子どもとして扱われる「300日問題」に直面します。
本コラムでは、離婚後に出産した場合における「300日問題」と対処法について、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説していきます。
1、離婚後の出産における「300日問題」とは?
離婚後300日以内に新たなパートナーの子どもを出産した場合は、いわゆる「300日問題」に直面することになります。
「300日問題」とは、離婚後300日以内に出生した子どもは「元夫の子」として戸籍上取り扱われてしまうという問題です。
子どもが生まれたときには、原則として出生後14日以内に市区町村の窓口に「出生届」を出さなければなりません。
離婚後300日以内に出生した子どもの出生届を規定にそって提出すると、元夫の子どもとして取り扱われます。たとえ新たなパートナーの名前を出生届の父の欄に記載したとしても、新たなパートナーが父と認められるわけではなく、出生届も受理されません。
しかし、元夫が父親として登録されることを避けるために出生届を提出しなければ、子どもは無戸籍となり今後の人生において大きな不利益を被ります。
なぜこのような「300日問題」が起こるのかというと、法律上では離婚後300日以内に誕生した子どもは「元夫の子どもと推定する」と規定されているためです。
2、法律上の父親の推定とは?
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(1)法律上の父親の推定
母親と子どもには、出産の事実によって当然に法律上の母子関係が発生します。
しかし、父親に関しては、当然に法律上の父子関係が生じるわけではありません。ただし「妻が婚姻中に懐胎した子ども」に関しては、法律上「夫の子と推定する」ことが規定されています。
具体的には、次の期間に生まれた子どもが該当します。婚姻成立日から200日経過後または婚姻の解消・取り消しの日から300日以内に生まれた子ども(民法 第772条2項)
この期間内に生まれた子どもは、婚姻関係にあった配偶者の子どもだと推定されるので、基本的に「推定される嫡出子」と呼ばれる立場になります。ちなみに「推定」とは、それを覆す反証がなされない限り、そのように取り扱われるということです。
離婚後300日以内に生まれた子どもは「推定される嫡出子」に該当するため、元夫が父親であるという法律上の推定が及びます。 -
(2)法律上の父親の推定が及ばないケース
離婚後300日以内に生まれた子どもでも、夫の子どもではないことが客観的に明らかであるケースでは嫡出推定が及びません。
客観的に明らかであるケースとしては、懐胎の時期に元夫が長期出張していたなど、生活を共にしていなかった場合や、夫婦が別居していたなどの事情が考えられます。
このようなケースに該当する子どもは、「推定が及ばない嫡出子」と呼ばれます。 -
(3)再婚禁止期間との関係
女性には、再婚禁止期間が法律上定められています。
再婚禁止期間については、従来6か月とされていたものが平成28年の民法の改正によって「100日」に短縮されました。この「100日」という再婚禁止期間は、子どもの父親がだれであるかを明確にするために必要な期間とされています。
たとえばAさんと結婚していたBさんが、離婚後にCさんと再婚したとします。
このケースでBさんが離婚後300日以内に子どもを出産したときには、元夫Aさんの子どもと推定されます。しかし離婚後すぐに再婚できるとすると、Cさんとの婚姻成立から200日経過後の子どもにもなりうることになります。つまり、AさんだけでなくCさんの子どもとしても推定されてしまいます。
このように、現在の夫と元夫の双方の嫡出推定を受ける事態を避けるため、100日という再婚禁止期間が設けられているのです。
3、離婚後300日以内に生まれた子どもの出生届はどうするべき?
離婚後300日以内に生まれた子どもについては、そのまま出生届を出せば元夫の子どもとして戸籍に記載されますが、元夫の子どもでない場合には、嫡出推定を覆す必要があります。
嫡出推定を覆すためには、裁判所で元夫の嫡出子でないことを認める「嫡出否認の手続き」などを行う必要があります。
しかし裁判所での手続きには時間がかかるので、出生届の提出期限である出生後14日以内に間に合わない可能性があります。そこで、次のような対処法が考えられます。
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(1)元夫の子どもとして出生届を提出する
いったん元夫の子どもとして、出生届を提出しておく方法です。
元夫の戸籍に子どもが入ることになりますが、後から嫡出否認の手続きを経れば、実父を修正することができます。 -
(2)住民票を先に取得する
出生届は提出期限がありますが、すぐに出生届を出さずに嫡出否認の手続きが終わってから提出する対処法が取られることもあります。
この方法であれば、子どもは元夫の戸籍に入ることなく、実父の戸籍に入ることができます。しかし無戸籍の期間が生まれてしまう可能性があるため、子どもが健診や予防接種などの行政のサービスを受けられないほか、戸籍法違反により過料が科せられる可能性もあります。
このような事態を避けるために住民基本台帳法の一部が改正され、嫡出否認の手続きを行っていることを証明できれば、出生届が未届けであっても子どもの住民票を先に作成することができるようになりました。
ただし、裁判所での手続きが進行しているという事実があり、出生届を確実に提出できる見込みがあるからこそ利用できる制度といえます。
なお、同手続きに関しての詳細は、お住まいの地域の戸籍役場にご確認ください。 -
(3)懐胎時期に関する証明書を取得する
離婚後300日以内に出生した子どもであっても、離婚後の妊娠であることが明らかであれば、実父を父と記載した出生届が受理されます。ただしこの場合には、医師が作成した「懐胎時期に関する証明書」を出生届に添付しなければなりません。
4、実の父と法律上の親子関係を築くための方法
離婚後300日以内に出産した子どもが元夫の子どもではない場合には、次のような対処法で実の父との法律上の親子関係を築ける可能性があります。
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(1)嫡出否認の手続き後に認知する
離婚後300日以内に生まれた、推定される嫡出子と元夫の親子関係を否定するためには、原則として嫡出否認の手続きを行う必要があります。
嫡出否認の手続きは、元夫が家庭裁判所に「嫡出否認の調停」を申し立てます。申し立てができる期間は、元夫が「子どもの出生を知ったときから1年以内」と限定的です。
調停で離婚した夫婦双方で夫の子どもではないと合意し、家庭裁判所が調査などの上で合意が正当なものであることを認めれば審判が下されます。なお、何らかの理由により調停が成立しなかった場合には、訴訟を提起して争うことも可能とされます。
嫡出否認の手続きによって元夫と子どもとの父子関係が否定された後、実父が子どもを認知すれば法律上の父子関係を築くことができます。 -
(2)親子関係不存在確認調停を申し立てる
離婚後300日以内に出生した子どもであっても、客観的に元夫の子どもでないことが明らかな「推定が及ばない嫡出子」であれば、親子関係不存在確認調停を申し立てることができます。
親子関係不存在確認調停は、母親からも申し立てることができ申立期限もありません。親子関係不存在確認調停によって、当事者双方の間で合意ができ、裁判所も合意が正当と認めれば、元夫との父子関係を否定する審判が下されます。
調停が成立すれば、実父が子どもを認知することが可能です。 -
(3)認知調停を申し立てる
「推定が及ばない嫡出子」であるときには、親子関係不存在確認調停だけでなく認知調停手続きも利用できます。認知調停の申立人になれるのは、子ども、または子どもの直系卑属かそれらの法定代理人です。
認知調停によって父子関係が認められると、新たなパートナーと子どもの法律上の父子関係が認められ、元夫と子どもとの父子関係は否定されることになります。
5、まとめ
離婚後300日以内に出生した子どもは「元夫の子」と推定されるので、そのまま出生届を提出すれば元夫が父親となります。その事態を避けるために、出生届を出さなければ、さまざまな不利益を被るおそれがあるため、父親が元夫でない場合には、適切な対処法を取る必要があります。
ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士は、ご相談者さまのお話を丁寧にうかがい迅速に裁判所の手続きなどを進めていきます。離婚問題や、離婚後の出産に関するトラブルを抱えている場合は、おひとりで悩むことなくお気軽にご相談ください。
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