隣家の庭木がきっかけにトラブル発生! 法的に適切な対応方法とは

2023年09月28日
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隣家の庭木がきっかけにトラブル発生! 法的に適切な対応方法とは

ご近所トラブルのなかでも非常に困るもののひとつに、「隣家の庭木」に関するトラブルがあげられます。
枝が敷地にはみ出してきている、落ち葉や花・木の実が庭に落ちる、害虫が発生する等によって、快適な生活が害されてしまうケースも少なくありません。

庭木に関するトラブルは、隣家なので苦情を伝えづらいという事情もあって、柏市が解説している相談窓口に相談することを検討されている方もいらっしゃるでしょう。
そこで本コラムでは、隣家と庭木に関するトラブルが発生した場合、とるべき対応方法についてベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説します。

1、隣家との庭木に関するトラブル

隣家と揉め事になりやすい庭木に関するトラブルの代表例を挙げてみましょう。

  1. (1)枝が境界を越えてはみ出している

    もっとも代表的なトラブルが「枝が境界を越えてはみ出している」というケースです。
    背の高い樹木が生い茂っており、枝の部分が境界を越えてはみ出していると決して心地の良いものではありません。
    また、隣家の庭木によって日が入らなくなった、洗濯物の乾きが悪くなったなどの、物理的なトラブルが発生するケースもあります。

  2. (2)根が侵食している

    大きな樹木や竹などのように深く広い根をはる植物の場合、土地の境界を越えて侵食することもあります。地中のことなので目に見えたトラブルは発生しにくいものですが、垣根やブロック塀などを損壊させる原因になることもあります。

  3. (3)大量の落ち葉などが庭を汚す

    隣家からはみ出している庭木が葉・花・実をつけるものであれば、落ち葉などが自宅の庭に落ちてくるでしょう。
    大量の落ち葉などがあれば、掃除の手間がかかります。

  4. (4)害虫が発生する

    樹木があると、毛虫などの害虫が発生することも少なくありません。
    わが家の庭木から害虫が発生してしまう分には我慢できても、隣家の庭木が原因で害虫に悩まされる事態になれば耐え難いでしょう。

2、勝手に枝を切っても良い? 正しい対応方法とは

隣家の庭木の枝が境界を越えてはみ出していると「はみ出している部分を切ってほしい」と考えるのが当然です。
こちらの敷地内に入っている部分であれば、敷地の管理権などを理由に無断で切っても問題がないように感じるかもしれませんが、実際のところはどうなのでしょうか。

  1. (1)まずは「枝を切ってほしい」と要求する

    隣家の枝によって迷惑をこうむっている場合は、まず、隣家の所有者に枝を切ることを求めましょう。

    なお、隣家の庭木がはみ出している場合の対応は、民法に定められています。

    民法第233条(竹木の枝の切除及び根の切取り)
    【1項】
    土地の所有者は、隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。
    【2項】
    前項の場合において、竹木が数人の共有に属するときは、各共有者は、その枝を切り取ることができる。
    【3項】
    第一項の場合において、次に掲げるときは、土地の所有者は、その枝を切り取ることができる。
    1 竹木の所有者に枝を切除するよう催告したにもかかわらず、竹木の所有者が相当の期間内に切除しないとき。
    2 竹木の所有者を知ることができず、又はその所在を知ることができないとき。
    3 急迫の事情があるとき。
    【4項】
    隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。


    民法233条は、令和5年4月に改正法が施行されています。

    令和4年3月31日までは、隣家の庭木の枝について「切除させることができる」、根については「切り取ることができる」と表現していました。つまり、枝の場合は隣人に対して「切ってほしい」と伝えて対応を求めることが許されていますが、無断で伐採することまでは認められていなかったのです。そのため、もし、隣家の庭木の枝がはみ出しているからといって無断で伐採すれば、他人の所有物を損壊させたことになるので、刑法第261条の器物損壊罪に該当するおそれがありました。

    しかし、前述の通り法改正がなされたため、隣人がいつまでたっても対応してくれないときや、調査をしても土地の所有者がわからない・連絡がつかなくなっているとき、そして、境界を越えた枝があなたの住戸を破壊しそうになっているなど早期に対応しなければならない事情があるときについては、枝を削除してもよいことになりました。

    一方の根については、改正前と同様、隣人の許可などがなくても切除が可能です。

  2. (2)「切っても良い」と言われたら合意書を交わす

    はみ出した枝について隣人に切除を求めたところ「そちらで切ってくれて構わない」と言われた場合は、合意書などでその旨を担保しておきましょう。
    あとになって「認めていない」とクレームをつけられてしまう事態を回避するためにも、隣人の合意・許可があった証拠を残しておくことは重要です。

    また、根の場合も「無断で切除されたせいで庭木が枯れてしまった」というクレームを受けるおそれがあるので、切除する旨を隣人に伝えて合意書を取り付けておくほうが安心です。

  3. (3)隣家が空き家の場合

    隣家が空き家で所有者・管理者の連絡先もわからない場合は、枝の伐採を求めることも、根の切除を通知することもできません。

    改正された民法の規定に従えば、連絡先がわからないという理由から無断で枝を伐採することができそうではあります。しかし、「知ることができず、またはその所在を知ることができないとき」と規定されています。そのため、何らかの方法で連絡先を入手できないか確認したほうがよいでしょう。調査により所有者が判明したら通知してください。不動産登記簿謄本は誰でも取得することができますので、登記簿上の名義人を確認してみてください

    空き家の管理は大きな社会問題になっており、空き家対策特別措置法が整備されるなど、対策が強化されています。
    柏市でも「柏市空家等対策計画」が策定されており、自治体による支援・協力が受けられる可能性があるので、所有者・管理者がわからない場合は市への相談をおすすめします。

3、伐採費用は請求できるのか?

隣人から許可をもらい庭木や樹木の伐採をした場合、その費用を請求することは可能なのでしょうか?

  1. (1)合意できれば費用の請求は可能

    民法第233条に、費用に関して特段の定めはありません。そのため、隣人から許可を得て伐採をする際は、隣人に見積書を見せて費用負担についても合意しておくべきでしょう。

  2. (2)支払いを拒まれる場合

    隣人が快く費用を負担することに同意をしてくれるのであれば、問題はありません。
    しかし、かたくなに拒まれるケースも考えられます。この場合は、隣人に対して枝の切除請求訴訟を提起し、請求認容判決を得たうえで、これを債務名義として強制執行を申立て、隣人の費用負担で第三者に切除させることになります(民事執行法第171条第1項、第4項)。

  3. (3)物理的な被害に関しても請求が可能な場合がある

    枝が伸びて屋根が損壊した、車に当たって傷がついたなどの物理的な損害が生じるケースもあります。この場合、隣人が損害の発生を防止するために安全な状態であるよう必要な処置を講じていなければ、損害賠償請求をすることが可能な場合があります(民法第717条第2項参照)。

4、隣家の庭木トラブルの解決は弁護士に相談を

隣家の庭木が境界を越えている、隣人に頼んでも枝を切ってくれない、伐採や落ち葉の清掃などに費用がかかったので請求したいなどのお悩みは、弁護士への相談をおすすめします。

弁護士と聞くと、裁判などをイメージし、大げさになりすぎる、頼みづらいと感じるかもしれません。しかし、弁護士は、近隣トラブルなど身近で発生した法的な問題を解決する専門家です。
そして、法律の定めだけを優先させるのではなく、「お隣さんとの関係を悪くしたくない」「今後もトラブルにならないように対応しておきたい」といった要望に応えつつ、最適な対応策についてアドバイスすることが可能です。

5、まとめ

隣家の庭木が自宅の敷地にはみ出していた場合、まずは隣家に伐採を求めましょう。空き家になっていて不動産登記簿謄本を取得しても所有者がわからないなどの事態が起きていたら、まずは自治体に相談することをおすすめします。そのうえで、通知などを行っても対応してもらえない、調査をしても所有者がわからない・連絡が取れない、緊急性が高いなどの事情があれば、令和5年4月の民法改正により、伐採してもよいこととなりました。

隣家とのトラブルは、日々の生活に直結する大きな問題です。
隣家の庭木がはみ出しているなど、近隣トラブルにお悩みの方はベリーベスト法律事務所 柏オフィスまでご連絡ください。柏オフィスの弁護士が、状況に応じた対応策をご提案したうえで、解決までしっかりとサポートします。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています