Web担当者必読! 引用のルールと著作権侵害にあたるケースを弁護士が解説

2019年12月13日
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Web担当者必読! 引用のルールと著作権侵害にあたるケースを弁護士が解説

柏市は市のHP上で、市政の情報だけではなく市内の情報などをコラム記事にしてアップしています。このように、自治体のみならず企業も自社のPRのためにHPやWebサイトを運営することは、今や当たり前におこなわれる時代となりました。特に中小企業や個人事業者にとっては、広告力や経済力で有利な大企業に太刀打ちするためのツールとしても不可欠だといえるでしょう。
利用者の見やすさや印象を考慮して、写真や画像を掲載することも多くなりますが、著作権侵害には注意が必要です。他人の著作物を引用するには一定のルールがあり、「知らなかった」では済まされないことが多々あります。
この記事では、著作権法の基本や侵害にあたる場面、正しい引用方法などを解説します。

1、著作権の基本と違法行為

ネット上の画像や写真、文章を自社サイトに掲載するとき、特に問題となるのは著作権侵害です。著作権の基本知識と、どのようなケースが違法になるのかを押さえておきましょう。

  1. (1)著作物と著作権

    著作物とは、人の思想や感情を独自に表現した文化的な創作物のことを指します。小説や論文などの原稿、音楽や美術、映画などの芸術品、コンピューター・プログラム、子どもが描いた絵まで幅広く含まれます。
    これらを創作した人を著作者といい、著作者人格権(人格的な利益を保護される権利)と財産上の利益を保護される権利をもっています。これが著作権です。

  2. (2)著作権法に抵触する行為とは

    著作物かつ利益保護の対象となるものを、著作者の了承を得ずに利用すると基本的に違法となります。
    たとえば次のようなケースです。

    • ネット上の画像や写真をコピーして自社のWebサイトに掲載した
    • 他人のイラストや写真を載せた本を販売した
    • 他人のブログ記事を自分のブログにそのまま転載した
    • アニメや映画などの作品をネット上で公開した
    • 著名アーティストの絵を自社のサイトにアップロードした


    他人の著作物を参考にしたことが明らかである場合や、高い類似性が見られる場合にも、著作権侵害が認められる可能性があります。

  3. (3)フリー素材利用の注意点

    Webサイトの作製にあたり、フリー素材と呼ばれる写真やイラストを利用することは、不要なトラブルを回避するための王道の方法です。素材サイトの運営会社が自社で制作したものや報酬を払って外注して制作したものは、利用規約にもとづいて正しく使用すれば基本的には問題ないでしょう。

    利用規約によって、加工や商用利用は不可といった指定がされているケースもあります。ほかにも、人物写真の著作権者は一般的には撮影者にありますが、モデルがフリー素材として利用することを許可していなければ、肖像権侵害にあたるおそれもあるので注意が必要です。

    その他、注意したいのは、サイト運営会社が第三者の委託を受けて提供しているケースです。たとえば、素材となる写真やイラストを、作成者自らがサイトにアップロードすることができ、それらがフリー素材として提供されているような場合です。

    多くの運営会社は、素材の作成者に対しても利用規約において、アップロードする作品が権利を侵害していないことなどを規定しています。しかし、すべての素材に関して権利の侵害をしていないかについては、確認ができていないというケースも少なくありません。つまり、すでに著作権を侵害しているものを第三者がアップロードし、運営会社がそれに気が付かずフリー素材として提供していることもあり得るのです。
    たとえ、その事実を知らないままに素材を利用していたとしても、実際に利用した人や企業が賠償責任を求められる可能性があることを知っておきましょう。

    このように、フリー素材だから何でもあり、というわけではありません。よく確認したうえで利用することが大切です。

2、著作権を侵害すると何が起きる?

著作権を侵害した場合、逮捕され罰を受けるおそれがあります。

著作権や出版権などを侵害した者には「10年以下の懲役または1000万円以下の罰金、もしくは併科」が、法人に対しては「3億円以下の罰金」が科さられます。

また、著作権を侵害された者は民事上、次のような請求権を有することになります。著作権を侵害すると、企業や個人事業者にとって大きな損失となりかねません。

●侵害行為の差し止め請求
掲載をやめるのはもちろんのこと、たとえば他人の著作物を利用して出版物を販売していたようなケースでは回収のための費用もかかります。

●損害賠償請求
不法行為による損害賠償請求を受けます。

●不当利得返還請求
侵害によって何らかの利益が発生した場合、それは相手方の損失において利益を受けていることになり、不当です。受けた利益のみならず利息も返還対象となります。

●名誉回復の措置請求
たとえばHPや新聞で謝罪文を掲載するようなことが該当します。

さらに、昨今では違法の事実がSNSを通じて拡散され、Webサイトや企業の信頼性を損なう事態にも留意しなくてはなりません。

3、著作権を侵害しないための正しい引用の方法

他人の著作物を勝手に使用することは原則としてできませんが、すべてにおいて制限すると利便性が著しく低下し、文化の発展を妨げる事態にもなりかねません。そこで一定の条件を満たすことで著作物の自由利用が可能になります。
文化庁では著作物を自由に使える場合として複数のケースと条件、注意事項などを掲載しています。
Webサイトの運営において利用することが考えられるケースとしては、主に「引用」が該当します。正しい引用のルールを確認していきましょう。

  1. (1)正当な範囲内で利用する

    独自のコンテンツを発信するために、引用が不可欠である事情が必要です。たとえば、ある文章を批評や研究する目的で使用する場合は、引用が必要だと認められやすいといえるでしょう。単純にアクセス数を伸ばすためという目的であれば、正当といえません。また、必要な範囲を超えて引用することもできません。

  2. (2)明瞭区分性を設ける

    自社のコンテンツと引用部分の区分が、明瞭であることが必要です。たとえば、引用部分を「」(かぎかっこ)や””(ダブルクォーテーション)、枠線で囲む、背景色や字体を変えるといったことです。誰が見ても引用部分が明らかになっていることが大切です。

  3. (3)主従関係を明確にする

    引用とはオリジナルのコンテンツを補強するために、他人の著作物を一部分だけ取り入れることです。そのため、自社のコンテンツをメインとしたうえで、あくまでも補足的に引用されていることが必要です。独自コンテンツを多少追記すればよいわけではなく、量的、質的に差があることが重要です。

  4. (4)改変しない

    著作物の改変は認められませんので、同一の状態で引用する必要があります。ただし、引用文が長い場合の要約は、原文の意味や趣旨が変わらなければ許容されるケースがあります。もっとも、この境界線の判断は難しいため注意が必要です。

  5. (5)出どころを明記する

    著作者名、著作物の題名、Webページのアドレスなどを記載しなくてはなりません。ただし、単に引用元を掲載すればよいわけではなく、前述した他の条件も同時に満たす必要があります。

4、まとめ

今回は、著作権法の基本的な知識や違法にあたるケース、正しい引用のルールを中心に解説しました。無数にあるサイトのなかで見かける転載や引用も、実は違法であるケースが少なくありません。中小企業や個人事業者は、違法性はもとより、企業やサイト利用者の信頼性を損なわないためにも慎重に運営することが求められます。しかし、法的知識が求められるうえに判断が難しいケースも多くなりますので、弁護士へ相談しながらサイトを運営すると安心でしょう。

ベリーベスト法律事務所 柏オフィスでは、Webサイトにおける著作権の問題への対応はもちろんのこと、その他、企業で起こりうるトラブルに対応できる顧問弁護士サービスも提供しています。企業法務に関するお悩みを抱えている場合は、ぜひお気軽にお問合せください。

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