配偶者の親が毒親で耐えられない! 毒親を理由に離婚はできる?
- 離婚
- 毒親
- 離婚
柏市がある千葉県の県庁ホームページによると、千葉県では平成29年中に10359組の夫婦が離婚していることが明らかになっています。
離婚に至った原因には、それぞれの夫婦にしか分からない多種多様の事情があるでしょう。当人同士の関係はもちろんのことですが、その他配偶者の親が関係している場合もあります。そのなかで、近年メディアでも取り上げられることが増えた「毒親」が、原因となったケースもあるかもしれません。
本コラムでは、配偶者の親が「毒親」であり、それが原因で離婚したい場合の対処法や慰謝料請求について、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説します。
1、「毒親」とは?
-
(1)毒親の特徴
法律用語ではありませんが、近年メディアなどで「毒親」という言葉が用いられることがあります。
一般的に毒親とは、子どもの人格を尊重せずに支配し、不健全な家庭環境を作り出す親のことをさす言葉として使われています。
たとえば、子どもに暴力をふるう、怒鳴る、育児放棄や性的虐待などをしているケースが当てはまります。またこういった明確な形ではなくても、子どもの人格や感情を否定するような暴言を吐き続けるなどの精神的な虐待、過干渉して追い詰める、人間関係を制約するといったケースも当てはまるとされています。 -
(2)毒親と子どもの配偶者の関係
毒親は自分の子どものみならず、子どもの配偶者も支配しようとする場合があります。下記のような行動によって、子どもの配偶者を精神的に追い詰めることも少なくありません。
- しつこく電話などで連絡してくる
- 頻繁に家に押しかけてくる
- 詮索、説教をする
- 人格を否定するような暴言を吐く
2、離婚する前にできることとは?
配偶者の親が毒親だったことが原因となり、最終的には離婚という決断に至ることもあるでしょう。しかし状況によっては、離婚を決める前にできることがあります。
-
(1)配偶者に相談して対策する
配偶者の毒親の行動に対して、まず配偶者に相談し二人で対策を考えることがもっとも理想的だといえます。配偶者が自分の親が毒親である、ということに気が付いていれば、カウンセラーや医師に相談するなどして、毒親からの支配を逃れ人生を取り戻せることもあります。その上で、今後の人生のために対策をとることができれば、離婚に至らずに済むでしょう。
しかし、長年にわたり毒親に支配されてきた配偶者は、相談しても毒親の肩を持つなど協力してくれない場合や、逆に怒ってしまうというケースも考えられます。 -
(2)毒親と適切な距離をとる
配偶者の毒親の行動に対して、感情的に対応しても事態が好転することはあまり望めません。しかし我慢しすぎると、ご自身の心が追い詰められてしまうことになります。
そのため「同居している場合は別居する」「遠方に引っ越す」「仕事を理由に距離をとる」など適切な距離をとることが、過干渉や暴言などから身を守るためには大切です。 -
(3)配偶者と別居する
配偶者が離婚に応じてくれない場合は、配偶者と別居することもひとつの選択肢といえます。結果的に、配偶者の毒親とも適切な距離をとれる可能性があります。
なお、配偶者との別居が長期にわたった場合は、裁判になった際に離婚が認められるための重要な事実となります。
3、配偶者の親が毒親であることを理由に離婚できる?
-
(1)夫婦が合意できれば離婚できる
離婚は、夫婦が合意するのであれば、どのような理由であっても成立します。
そのため、配偶者の親が毒親であることに我慢ができなくなった妻が離婚を切り出し、夫が合意すれば離婚が成立します。
当事者の協議で離婚が成立しない場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てることができます。離婚調停では、調停委員を交えて夫婦の話し合いが進められます。調停で合意できれば離婚が成立しますが、話し合いがまとまらなければ裁判で離婚を求めることになります。
つまり、当事者の協議や離婚調停では、双方が合意さえできれば離婚は成立します。
しかし裁判では、法律上認められる離婚事由に該当しなければ、離婚は認められません。 -
(2)裁判では直接の離婚原因としては認められない可能性が高い
相手が離婚を拒んでいる場合は、裁判で離婚を求めることになります。しかし、前述したように裁判で離婚が認められるためには、法律上離婚が認められる「法定離婚事由」に該当する必要があります。
- 配偶者に不貞行為があったとき
- 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- 配偶者が3年以上生死不明のとき
- 配偶者が強度の精神病にかかり回復の見込みがないとき
- その他婚姻を継続しがたい重大な事由があったとき
配偶者の親が毒親であることは、法律上で認められる離婚事由に直接的には該当しません。
しかし、毒親が原因となり婚姻を継続しがたい状況であることを、客観的に証明することができれば、裁判で離婚が認められる可能性は残ります。 -
(3)裁判で離婚するためにはどうすればよい?
毒親が原因で離婚をしたい場合、法定離婚事由の「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があったとき」に該当する可能性はないのか、と考えるかもしれません。この離婚事由は、裁判上主張されることが多いもので、配偶者によるDV(ドメスティックバイオレンス)や配偶者の浪費などさまざまなケースで主張されます。
ただし、配偶者の親が毒親であったという事実だけでは、主張することは難しいでしょう。
毒親の干渉などの程度が極端で結婚生活に支障が生じていた場合や、結果として長期の別居に至った場合などには「その他婚姻を継続しがたい重大な事由があったとき」に該当する可能性があります。
裁判で離婚を成立させるためには、長期の別居の事実や毒親の暴言を録音しておくなど証拠を集めて、対策する必要があるといえるでしょう。
4、配偶者の毒親に慰謝料請求はできる?
夫婦に婚姻継続の意思があり努力しているにもかかわらず、毒親が主導的になり社会通念上許容される範囲を超えて干渉し婚姻を破綻させたといった場合には、不法行為が成立し、慰謝料を請求できる可能性があります。
ただし、いくら毒親の行為がひどいものだったとしても、不法行為であることを客観的に立証できなければ慰謝料請求は難しいでしょう。弁護士に相談して、請求できる可能性があるのか、しっかりと検討することが重要です。
5、離婚問題を弁護士に依頼するメリットとは?
離婚に関して弁護士に依頼した場合のメリットには、次のようなものがあります。
-
(1)代理人として配偶者と交渉ができる
弁護士に依頼した場合、弁護士は代理人として配偶者と交渉することが可能です。
離婚を決断したものの、「配偶者と顔を合わせたくない」「直接会うと条件などを伝えにくい」などといった事情がある場合は少なくありません。
弁護士に依頼することで、精神的な負担を軽減するのはもちろんのこと、主張を伝えやすくなります。 -
(2)離婚に際して起こり得るさまざまな問題への助言
離婚に際しては、財産分与や慰謝料請求、親権の問題など解決しなければならない多くの問題が生じます。弁護士は、判例や知見をもとに、適正な財産分与や慰謝料の金額を算出するなどのアドバイスができます。
ひとつの問題を解決できないために、離婚が成立しない、話し合いが長引き消耗する、といったことも少なくありません。早期の段階から弁護士が介入することで、少しでも早く新しい生活をスタートできることが期待できます。 -
(3)調停や裁判でのサポート
当事者の合意で離婚がまとまらず調停や裁判になった場合でも、弁護士はご依頼者にとって有利になる主張や証拠を提出するなどの方法で、できる限りご希望にそった解決に導けるよう活動します。
特に裁判では、法律の知識は必要不可欠です。希望している判決を得るためには、弁護士のサポートが重要だといえるでしょう。
6、まとめ
本コラムでは、配偶者の親が毒親ということを理由に離婚ができるのか、また毒親への慰謝料請求ができるのかについて解説しました。
裁判で離婚や慰謝料請求が認められるためには、法律上の離婚事由や不法行為に該当することを主張してくことが大きなポイントになります。弁護士に相談してアドバイスを受け、適切な対応を進めることが重要です。
新しい生活を少しでも早くスタートできるよう、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が全力でサポートします。ひとりで悩まず、まずはご相談ください。
- この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています