海外赴任による別居期間は離婚に影響する? 離婚における別居の考え方
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新型コロナウイルスの関係で海外との往来が制限され、海外赴任先から日本に戻ることができず、日本に残っている配偶者や子どもと長い間会えなくなっているという方もいらっしゃるかもしれません。柏市内の新型コロナウイルス感染者数は、令和3年1月をピークに徐々に減少傾向にありますが、世界的に収束の見込みは立っておらず、今後の状況も注視する必要があるでしょう。
海外赴任に配偶者が同行できない場合は、別居せざるを得ない状況になってしまいます。では、海外赴任による別居の状態が続いたまま、日本にいる配偶者から離婚したいといわれた場合、どのように対応すれば良いのでしょうか。海外駐在のために別居していた期間が長ければ、離婚の話し合いで不利になるのでしょうか。
本コラムでは、別居と離婚の関係や、海外赴任による別居は離婚に影響するのかといった疑問点について、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説します。
1、別居が離婚に与える影響
一般的に、別居していることが離婚に対してどのように影響するのでしょうか。離婚と別居の関係について、確認していきましょう。
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(1)別居が協議離婚に与える影響
日本で圧倒的に多いのは協議離婚です。協議離婚は、夫婦が話し合いによって離婚に合意し、離婚届を役所に提出することで、離婚が成立します。
協議離婚の場合、お互いが納得すればそれで良く、離婚に至った理由は問われません。お互いが離婚することに納得していれば、性格の不一致や、単に相手が嫌いになったという理由でも問題ないでしょう。そのため、別居の有無についても、問われることはありません。長年別居していても、昨日まで同居していても、協議離婚においては関係がないといえます。 -
(2)離婚調停と別居の関係
協議離婚で合意できなかった場合は、離婚調停によって離婚成立を目指すことになります。離婚調停とは、夫婦関係調整調停の一種で、家庭裁判所において当事者が離婚について話し合い、合意を目指す法的な手続きです。なお、夫婦関係調整調停には、円満な夫婦関係を回復するためのいわゆる円満調停もあります。
法的な手続きですが、あくまでも話し合いによる解決を目指す手続きです。裁判官と調停委員が間に入り、双方が納得して解決まで導けるよう助言やあっせんを行いますが、あくまでも当事者同士が納得しなければ、離婚調停は成立しません。
そのため、別居期間は調停委員の意見に影響を与える可能性はありますが、離婚調停の結果には必ずしも直結しないといえます。 -
(3)離婚訴訟と別居の関係
離婚調停が不成立で終わった場合は、離婚訴訟によって解決を図ることになります。協議離婚や離婚調停と異なり、離婚訴訟だけは、当事者間で合意ができなければ裁判所が離婚の当否や内容を決定します。つまり、一方が離婚を断固拒否しても、裁判所が離婚判決を下した場合は離婚が成立します。
ただし、裁判によって離婚が認められるのは、離婚事由が以下のいずれかに該当する場合に限られます。
【民法第770条|裁判上の離婚】- ① 配偶者に不貞な行為があったとき
- ② 配偶者から悪意で遺棄されたとき
- ③ 配偶者の生死が3年以上明らかでないとき
- ④ 配偶者が強度の精神病にかかり、回復の見込みがないとき
- ⑤ その他婚姻を継続し難い重大な事由があるとき
民法が定める、5つの離婚事由に「別居していたこと」自体は含まれません。したがって、別居していれば直ちに離婚が認められるというわけではありません。しかし、別居期間が何年にもわたって続いており、客観的に見て夫婦関係は破たんし修復の見込みがない状況であれば、「⑤その他婚姻関係を継続し難い重大な事由」があると認められる可能性があります。
裁判所としては、夫婦の関係を客観的な事実から判断するしかなく、その際に有力な判断基準となるのが「同居・別居」の状況です。そもそも、民法第752条において、夫婦には法律上、同居しなければならないという義務が規定されているため、民法上は、夫婦は同居していることが原則となります。
したがって、別居の事実は、離婚訴訟においては重視されるポイントであり、裁判官の判断にも影響を与えるといえるでしょう。 -
(4)離婚が認められる別居期間とは
一般的に、別居を理由として夫婦関係が破たんしていると判断される期間は5年~7年程度とされていますが、明確な基準が決まっているわけではありませんので、ケース・バイ・ケースです。また、期間の長短だけではなく、別居期間中の夫婦間の関係なども考慮されます。
なお、中には別居する前から家庭内別居状態だったというケースもあるかもしれません。しかし、家庭内別居は裁判において、離婚に影響する別居期間とは認められない可能性が高いと考えられます。ただし、同居していても、夫婦間の関係が悪化していたというような事情があれば、別居しているとは評価できないとしても、夫婦関係が破たんしている一事情として考慮される可能性はあります。
2、海外赴任による別居期間が離婚に与える影響
では、配偶者の海外駐在や海外赴任に同行しなかったことによって別居している場合、この別居期間は離婚においてどのような影響を与えるのでしょうか。
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(1)別居期間と評価されうる事情
海外赴任自体は、自分の意思だけで決めるものではないため、希望して別居を開始したとはいえず、原則としては、離婚訴訟で不利になる可能性は低いでしょう。
ただし、次のような事情があれば、海外駐在期間も離婚の原因としての別居期間と評価される可能性があるため、注意が必要です。
- 海外赴任前から別居していた
- 海外赴任中に一度も配偶者が訪ねてきていない
- 帰国した際も自宅に帰らず、自宅以外の場所に寝泊まりしている
- 海外赴任中にメールや電話などのやりとりがない など
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(2)別居期間と評価されにくい事情
逆に次のような事柄は、海外駐在期間の別居について、離婚に結びつく別居期間とは判断されにくい事情といえます。
- 海外赴任前は夫婦仲が良かった
- 海外赴任先を頻繁に訪れている
- 帰国時は良好な夫婦関係にあった
- 海外赴任中も頻繁に連絡をとりあっている
- 海外駐在が終わった後の同居生活について夫婦で前向きな話をしている
なお、裁判においては、双方の言い分だけではなく、提出された客観的な証拠によって判断されるため、証拠は非常に重要です。離婚をしたくない場合や少しでも有利な条件での離婚成立を望むのであれば、やりとりをしたメールや手紙、一時帰国で自宅に帰った際の交通費の明細や領収書、帰国時に家族と過ごした写真などを、証拠として保全しておくようにしましょう。
3、海外赴任に同行したものの別居に至った場合はどうなる?
海外赴任に同行したものの海外駐在期間中に不仲になり、一方が帰国した場合はどのように判断されるのでしょうか。
このようなケースでは、一方が自らの意思で同居期間を終わらせて別居を選択したことになるため、夫婦関係は破たんに近づいていたと評価される可能性があります。そのため、単身赴任で海外に駐在しており、一方が日本に残ったケースの別居と比べれば、離婚原因としての別居と評価される可能性が高まると考えられます。
このように、離婚原因となる別居期間と評価されるかどうかは、別居に至った理由が重要です。別居のきっかけが、お互いの仕事や夫婦仲とは無関係の家族の事情などであれば、離婚原因と評価されにくい事情になるでしょう。一方で、夫婦仲の悪化が原因となり別居に至った場合や、良好な関係だったにもかかわらず別居によって夫婦仲が破たんし、そのまま別居が継続したような場合は、離婚原因となる別居期間と評価される可能性が高くなります。
4、まとめ
夫婦仲の悪化が原因ではなく、海外赴任によって別居に至った場合、離婚に与える影響はケース・バイ・ケースです。ただ、このようなケースでの離婚は、物理的な距離が問題のケースもあれば、別の問題が起因となっているケースも考えられますので、離婚したい旨を伝えられた場合は、配偶者としっかりと話し合うことが大切です。配偶者が日本におり、すぐに帰国することが難しい状況であれば、メールやテレビ電話などによって話し合いを進めることになりますが、相手が話し合いに応じない場合や話し合いがまとまらない状況の場合は、弁護士へ相談することをおすすめします。
ベリーベスト法律事務所 柏オフィスには、離婚問題の対応実績が豊富な弁護士が在籍しています。弁護士から適切なサポートを受けることで、状況を整理し冷静に話し合いを進めることができるでしょう。柏オフィスの弁護士がしっかりとお話を伺いますので、おひとりで抱えこまず、まずはご相談ください。
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