離婚するときに住宅ローンの連帯保証人から外れることはできる?

2021年07月26日
  • 離婚
  • 連帯保証人
  • 離婚
離婚するときに住宅ローンの連帯保証人から外れることはできる?

柏市が公表しているデータによると、平成22年から令和元年まで、柏市では例年700組前後の夫婦が離婚を選択していることがわかります。この数値が示すように、離婚は決して珍しいことではなくなっています。

離婚にあたっては、さまざまな事柄を決める必要がありますが、頭を悩ませることになるもののひとつに「住宅ローン」があげられます。たとえば、住宅ローンの主債務者は夫で、妻が連帯保証人になっているような場合には、何も手を打たなければ離婚後もその関係は変わりません。しかし、妻がその家で生活をしないのであれば、妻は連帯保証人から外れたいと考えるでしょう。では、離婚を理由に、住宅ローンの連帯保証人から外れることはできるのでしょうか。

本コラムでは、離婚する際に住宅ローンの連帯保証人から外れることができるのかについて、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説します。

1、連帯保証人と保証人はどう違う?

まず連帯保証人についてと、保証人との違いについて確認しておきましょう。

  1. (1)連帯保証人とは

    連帯保証人とは、主債務者と連帯して返済義務を負う保証人のことをいいます。
    たとえば家を借りるときには、大家(賃貸人)と借り主(賃借人)で賃貸借契約を締結しますが、連帯保証人をたてることを要求されることがあります。連帯保証人は、大家(賃貸人)との間で連帯保証契約を締結し、借り主が家賃を滞納したときに借り主の代わりに返済する義務を負うことになります。

    いわば、連帯保証人は主債務者の身代わりとなりうる存在で、単なる保証人よりも重い責任を負います

    住宅ローンにおいては、夫婦の一方が主債務者となってローンを組み、もう一方が連帯保証人になるようなケースが見受けられます。また、一方が経営者になっている会社の不動産について、配偶者が連帯保証人として個人保証しているようなケースも考えられるでしょう。

  2. (2)保証人との違い

    連帯保証人も保証人も、返済義務を負いますが、保証人に認められている「分別の利益」「催告の抗弁権」「検索の抗弁権」が、連帯保証人にはありません。その点が保証人との違いであり、重い責任を負うことにつながります。

    ● 分別の利益
    分別の利益とは、保証人が複数いるときには、“人数に応じた割合で負担すればよい“というものです。

    たとえば、1000万円の債務について保証人AとBがいる場合には、主債務者が返済できなければ、Aは債務の2分の1(500万円)を返済すれば保証債務を果たしたこととされます。
    一方、AとBが連帯保証人であった場合は分別の利益が認められていないので、Aが債権者から1000万円の返済を迫られたときには1000万円全額を弁済しなければなりません。

    ● 催告の抗弁権
    債権者が主債務者よりも先に保証人に返済を迫ったときに、“先に主債務者に請求してほしい”と主張できる権利です。連帯保証人には催告の抗弁権はないので、主債務者より先に請求を受けたときでも返済しなければなりません。

    ● 検索の抗弁権
    主債務者が返済できる資力があるにも関わらず返済しないといった場合に、債権者が保証人に返済を迫ったとしても、“主債務者が返済できるから自分は支払わない”と主張できる権利です。連帯保証人には検索の抗弁権はないため、主債務者が返済できる資力があっても請求を受けたときには返済しなければなりません。

2、離婚を理由として連帯保証人から外れることはできる?

では、離婚を理由として、金融機関との連帯保証契約を解除し、連帯保証人から外れることができるのか、という点について確認していきましょう。

結論からいえば、離婚を理由として、連帯保証契約を一方的に解除できるわけではありません

連帯保証人は、主債務者と同様に債務の返済について重い責任を負う存在です。金融機関にとっては、連帯保証契約が解除され連帯保証人を失うことになれば、住宅ローンの返済を受けられないリスクが大きく高まることになります。
そもそも、金融機関は、主債務者が返済できなかったときに備えて、連帯保証人を付けることを前提条件のひとつとして融資したのですから、簡単には連帯保証契約の解除には同意しないでしょう。

3、連帯保証人から外れる方法

離婚にともない住宅ローンの連帯保証人を外れるのは簡単ではないものの、外れる方法が一切ないわけというわけではありません。次のような方法によって、連帯保証人から外れることができる可能性はあります。

  1. (1)他の連帯保証人をたてる

    連帯保証人は、主債務者が返済できなかったときの担保といえる存在です。そのため、同じだけ(またはそれ以上)の信用力のある人を連帯保証人にできるのであれば、金融機関が連帯保証契約を解除することに合意する可能性はあります。

    たとえば、夫を主債務者とする住宅ローンについて妻が連帯保証人になっている場合に、一定の安定した収入がある夫の兄弟などに連帯保証人になってもらうことで、妻は連帯保証人から外れることができる可能性はあります。
    また新たな連帯保証人がみつからなかったとしても、他に担保になる不動産などがあれば、金融機関の契約解除の合意を得られる可能性はあるでしょう。

  2. (2)ローンを借り換える

    連帯保証人から外れるための方法には、主債務者がローンの借り換えをする方法もあります。
    たとえばA銀行から借りている住宅ローン(主債務者:夫、連帯保証人:妻)について、B銀行で(妻を連帯保証人にしない)夫単独の住宅ローンを組み直し、A銀行に返済するような方法です。ローンの借り換えによって、A銀行の住宅ローンは返済されることになるので、妻の連帯保証人としての責任もなくなります。
    ただしローンの借り換えは、新たな住宅ローンを組み直せるだけの信用力が主債務者にある場合や、十分な担保がなければ審査に通ることが難しいという問題はあります。

  3. (3)家を売却して住宅ローンを返済する

    離婚を機に家を売却して、売却によって得られたお金で住宅ローンを返済するのも、ひとつの方法です。
    家を住宅ローン残額よりも高い金額で売却できる場合を「アンダーローン」といい、この場合には住宅ローンを完済できるので、連帯保証人としての責任もなくなります。

    一方で、住宅ローンの返済額よりも低い金額でしか売却できない場合を「オーバーローン」といい、慎重な対応が必要です。オーバーローンの場合には、金融機関に承諾を得て任意売却という方法で家を売却することも考えられますが、住宅ローンは完済できないので連帯保証人としての返済義務は基本的に残ってしまいます

4、住宅ローン問題は離婚前に話し合いを

住宅ローンの連帯保証人になっている場合には、離婚前に夫婦で話し合い、対処しておくことが大切です。
離婚成立を急ぐあまり、住宅ローンの問題を話し合わずに離婚をしてしまえば、連帯保証人を外すための手続きの協力が得られなくなる、相手が話し合いに応じてくれないというリスクが生じる可能性があります。この状態では、ある日突然、連帯保証人として多額の返済を迫られることも起こりうるのです。

しかし離婚の際には、感情的な対立があり、冷静な話し合いができないケースも少なくないでしょう。また話し合うべき内容について、専門的知識があるわけではないので、当事者だけ進めるのは不安だと感じるかもしれません。
そのため、離婚に際しては弁護士に相談することがおすすめです。

弁護士は、裁判になるような大きなトラブル時にしか相談できないというイメージがあるかもしれません。しかし、話し合いによる離婚(協議離婚)の場合でも、弁護士に依頼いただくことで、状況に応じた適切な助言ができるほか、代理人として、相手方と離婚や離婚の条件について話し合いを進めることが可能です。第三者が間に入ることで冷静になり、落ち着いて話し合いが進むことにも期待できるでしょう。
また、離婚の成立だけではなく、将来に向けた対策もしっかりと講じることができるので、離婚成立後の生活も、安心してスタートすることができます。

5、まとめ

離婚を機に家からでていくのであれば、住宅ローンの連帯保証人から外れたいと考えるのは当然のことかもしれません。しかし、連帯保証人は簡単に外れることはできません。
連帯保証人から外れるためには、新たな担保を提供するなどの対策で金融機関の合意を得る、または借り換えや家の売却によって完済するといった対応が必要です。

住宅ローン問題を含め、離婚時には解決すべき問題や決めなければいけない事柄が多数発生します。感情的になって話し合えない、相手と会いたくないなどの理由から、何も決めずに離婚を急いでしまうと、後悔することにもなりかねません。そのため、離婚問題については、弁護士のサポートを得ることをおすすめします。

ベリーベスト法律事務所 柏オフィスでは、協議離婚から離婚調停、裁判離婚まで、状況に応じた適切な助言を行います。離婚問題は相談しにくく、ひとりで抱え込んでしまうことも少なくありません。柏オフィスでは、離婚問題に関するご相談は、初回60分まで無料で承っております(※)。まずは、お気軽にご相談ください。

※ご相談の内容によって、一部有料となる場合がございます。詳しくは、お問い合わせ時にご確認ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています