どこからが不貞行為(ふていこうい)になる? 不倫・浮気との違いとは

2021年02月25日
  • その他
  • 不貞行為とは
どこからが不貞行為(ふていこうい)になる? 不倫・浮気との違いとは

平成30年に柏市では、1日あたり5組の夫婦が誕生し、一方で1.9組の夫婦が離婚しているそうです。

「不貞行為(ふていこうい)」は、一般的に使われる言葉ではないものの、離婚の場面においては使われることが多い言葉と言えます。しかし、言葉自体は知っていても「不倫や浮気とどう違うのか」、「どこからが不貞行為なのか」、「慰謝料請求はできるのか」などについて、明確に答えられる方は少ないかもしれません。

配偶者や内縁のパートナーの不倫や浮気が原因で離婚を考えている場合は、今後の方向性を考えるためにも「不貞行為」について知っておくことが大切です。

本コラムでは、不貞行為の考え方と、不倫・浮気の違いや慰謝料請求について、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説します。

1、不貞行為は法律で認められた離婚事由

配偶者や内縁のパートナーの不倫や浮気が原因で離婚を考えている場合、なぜ不貞行為について知っておく必要があるのでしょうか。順を追ってご説明していきましょう。

  1. (1)不貞行為とは

    不貞行為は、「ふていこうい」と読みます。

    不貞行為とは、法律上の夫婦や内縁関係にある夫婦の一方が、自由な意思にもとづいて配偶者や内縁のパートナー以外の異性と性的関係(肉体関係)をもつことです。そのため、単に付き合っているだけで肉体関係がない場合は、不貞行為には該当しません。

  2. (2)法律で規定されている離婚理由

    民法では、一定の理由があるとき、たとえ相手が離婚を拒んだとしても裁判で離婚を請求することが認められています。この一定の理由を「法定離婚事由」と言い、不貞行為もその中に含まれます。

    法定離婚事由は、次の5つです。

    1. ① 相手に不貞行為があったとき
    2. ② 悪意の遺棄があったとき
    3. ③ 3年以上にわたり生死が不明
    4. ④ 強度の精神病にかかり回復の見込みがないこと
    5. ⑤ その他婚姻を継続しがたい重大な事由があること
  3. (3)不貞行為が原因で離婚をする場合の流れ

    不貞行為は法定離婚事由に該当しますが、不貞行為があれば、直ちに離婚できるというわけではないので注意が必要です。なぜなら離婚は、基本的には当事者である夫婦の合意によって決めるものであるためです。一方が離婚を拒んでいるような場合には、話し合い(協議)のみで離婚を成立させるのは難しくなります。

    離婚の話し合いがまとまらなかったり、話し合い自体ができなかったりする場合には、家庭裁判所に離婚調停を申し立てて解決をはかります。調停では、調停委員が夫婦の間に入って話し合いをすすめ、離婚成立を目指します。離婚調停でも合意ができなければ、裁判で最終的な解決をはかることになります。

    裁判では、裁判官の判決によって離婚の可否が決まりますが、裁判官は「法定離婚事由に該当する事実の有無」で離婚の可否を判断します。したがって、相手に不貞行為があった場合、たとえ相手が離婚を拒否し続けていても離婚できる可能性はあると言えるでしょう。

2、どこからが不貞行為になる?

不貞行為の意味を知ると、「不倫や浮気と同じではないか?」と思われるかもしれません。
しかし不貞行為は、不倫や浮気よりも狭い概念と言えます。
たとえば、不倫・浮気と一口に言っても、異性とデートした、頻繁にメールをしているなど、人によって判断基準は異なります。しかし不貞行為は性的関係の有無が判断基準となるため、たとえ異性とデートをしていたとしても性的関係が認められなければ、不貞行為には該当しません。

つまり、一般的には不倫・浮気と思われる行為だとしても、不貞行為にあたるとは限らないのです。では、具体的な例を元に、一般的に不貞行為にならないケース、不貞行為になり得るケースを見ていきましょう。

  1. (1)不貞行為にならないケース

    単にデートした、頻繁に連絡をとりあっている、というケースでは、不貞行為には該当しません。また、別れ際にハグをした、キスをした、手をつないでいたなどの行為は、浮気・不倫と感じる方も少なくないと思いますが、不貞行為にはあたらないとされています。
    また、強姦された場合も、自由な意思にもとづく性行為とは言えないため、不貞行為にはあたりません。

  2. (2)不貞行為になり得るケース

    実際に性的関係があれば、たとえ相手からしつこく誘われたからだとしても、不貞行為になります。一度限りの関係であっても同様です。

    ただし、裁判においては、1回の過ちであれば離婚原因として認められない可能性があります。また、実際に性的関係があったかどうかは明確に判断できなくても、客観的に不貞行為があったといえる状況があれば、不貞行為と判断される可能性があります。
    たとえば、ホテルに長時間2人で滞在していた、相手の家に頻繁に泊まっているなどが明らかであれば、不貞行為があったと判断される可能性はあるでしょう。

3、不貞行為と慰謝料請求

配偶者に不貞行為があったときには、慰謝料を請求することが可能です。

  1. (1)不貞行為と慰謝料請求

    夫婦には貞操義務があり、不貞行為はその義務に反する不法行為です
    不法行為が成立すれば、被害者は精神的苦痛に対して加害者に慰謝料を請求することが認められます。これは、不貞行為にも当てはまります。

    たとえば夫が不貞行為をしていたとします。この場合、夫と不貞行為の相手は共同で、妻に対して不法行為をしたことになります。そのため妻は、夫とその相手に慰謝料を請求することができます。ただし夫婦が離婚をしなければ、妻が夫に慰謝料を請求しても同じ家計の中でお金の出入りがあるだけで意味をもたないことがほとんどでしょう。

    なお、妻は不貞行為の相手にだけ、慰謝料を請求することも可能です。
    しかしこの場合に注意しなければいけないのは、不貞行為の相手は夫に対して、求償(きゅうしょう)することが可能という点です。
    前述したように、不貞行為は夫と不貞行為の相手、2人で行った共同不法行為であり、公平に責任分担するべきと考えられます。そのため、不貞行為の相手にのみに慰謝料を請求した場合、不貞行為の相手は夫に対して、請求された慰謝料のうち一部の支払いを求めることができるのですこのことを求償と言います
    この場合も、慰謝料の一部は同じ家計の中で、お金の出入りがあるだけになってしまいます。そのため、求償しないことを示談条件のひとつにするなどの対策が必要です。

  2. (2)慰謝料を請求するには証拠が重要

    不貞行為を理由に慰謝料請求する場合は、証拠が必要です。特に裁判においては、証拠がなければ慰謝料請求は認められません。

    具体的には、次のようなものが証拠になり得ます。

    • メールや会員制交流サイト(SNS)の内容
    • 一緒に旅行に行った、ホテルに泊まった、などの客観的に不貞行為があったであろう状況を示す内容や性行為を示唆するような内容
    • 写真や動画
    • ホテルや相手の家に出入りする写真や旅行先での写真、動画など
    • 録音データや書面
    • 不貞行為を認める発言を記録した録音データや書面
    • その他、証拠として認められる可能性があるもの
    • クレジットカードの使用履歴やレシートなど

4、不貞行為が理由で離婚する場合の注意点

配偶者の不貞行為が原因で離婚を検討するときには、いきなり離婚を切り出すのではなく、離婚後の生活を具体的にイメージし、事前にしっかりと準備することが大切です。

まずは、前述したように不貞行為の証拠を集めておきましょう。まずは焦らず、身近なところから集めていくことをおすすめします。証拠集めに苦慮している場合は、まずは弁護士に相談するのも一案です。

次に、離婚後収入がどの程度になるか、そして生活費はどの程度かかるのかを算出し、離婚の際に得られる財産分与や慰謝料を踏まえ、離婚後の生活が可能か考えておきましょう。仕事に就いていない場合は、就職先も平行して探すと良いでしょう。また離婚後の住まいや子どもの生活環境についても、しっかりと考えておくことが大切です。

配偶者の不貞行為がわかれば、非常にショックを受けるとともに、怒りを覚えるのは当然のことと言えます。しかし、感情的になって離婚を急いでしまえば、後悔することになりかねませんしっかりと準備を整えた上で、離婚にむけて動き出すことが大切です

5、まとめ

不貞行為として認められるかは、性的関係があったかどうかがポイントです。それを踏まえた上で、まずは不貞行為があったことを証明できる具体的な証拠を集めましょう。
それにより配偶者と不貞行為の相手に慰謝料を請求することができます。また、配偶者が離婚を承諾しなくても、裁判で離婚が認められる可能性が高くなります。

配偶者の裏切りに傷ついたまま、ひとりで離婚問題を解決するのは、精神的な負担が非常に大きいものです。また、ご自身にとって有利な条件で離婚を成立させるためには、法的な知識は欠かせません。

離婚問題に悩まれている場合は、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士へご相談ください。慰謝料の請求ができる見込みがあるのか、どのように離婚を勧めるべきなのか、そして親権や財産分与など、離婚成立までにかかるすべての問題について、全力サポートします。
おひとりで悩むことなく、ぜひお気軽にご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています