定年後の再雇用を拒否された! 契約更新の拒否や解雇への対処法
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平成27年の国勢調査の結果によると、柏市における60~64歳の就業者数は全体の約8.0%、65~69歳では約6.0%でした。
25~29歳は8.1%、30~34歳が9.6%であることと比較すると、一般的な定年退職の時期を迎えた方が、いまだ労働人口として大いに活躍していることがわかります。
定年退職後のはたらき方としてはいくつかのパターンがありますが、これまでの勤務先でそのまま雇用を受ける「再雇用」を期待している方も多いでしょう。
定年までは再雇用の方向で話が運んでおり、定年後の生活も安定が期待できると考えていたところ、突然「再雇用はしない」と拒否を言い渡されてしまったら、不当な扱いだと感じるはずです。また、再雇用されたものの、雇止めや解雇にあったら、あきらめるしかないのでしょうか。
本コラムでは、再雇用の拒否や雇止め、解雇に関するトラブルをテーマに、柏オフィスの弁護士が対処法を解説します。
1、定年と企業の雇用義務
旧来の雇用制度では、60歳を定年退職の年齢とする事業主が多数でした。
ところが、少子高齢化が進む現代では、60歳を定年とすることで企業の労働力が著しく低下したり、経験豊富な従業員を欠いてしまったりという問題が起きていました。
また、年金制度改革により、厚生年金の支給開始年齢が段階的に引き上げられたことに伴い、受給の対象である65歳までの収入を安定させる必要も生じています。
このような社会情勢をうけ、「高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(通称:高年齢者雇用安定法)」により、現在では原則として65歳までの雇用を確保することが、事業主の義務とされています。
ただし、同法は定年を65歳まで引き上げることを義務化しているわけではありません。
定年を65歳未満に定めている場合は、65歳までの雇用を確保するために、次にあげるいずれかの措置を導入しなければいけないとされています。
- 定年の引き上げ
- 継続雇用制度の導入
- 定年の定めの廃止
なお、平成24年の改正により、継続雇用制度を導入した場合は、継続雇用を希望する労働者全員を対象としなければいけなくなっています。
ただし、再雇用契約に際し、定年前とまったく同じ労働条件にすることは義務付けられていません。そのため、再雇用後は業務内容が変わる可能性はあるでしょう。
しかし、再雇用については、次のようなトラブルも多く発生しています。
- 再雇用を希望したものの会社から拒否された
- 賃金が著しく低下した
- 希望しない職種に転換された など
違法性の有無などは、各事案によって異なると考えられますが、立場の弱い労働者が泣き寝入りせざるを得ないケースも少なくありません。再雇用にあたって不当な扱いや、不利益を被っていると感じた場合は、会社と話し合う、または弁護士などの専門家に相談することが得策といえます。
2、再雇用後の解雇・雇止めが認められるケース
定年後に再雇用を受けながら、その後に解雇を受ける、雇止めを受けるといったトラブルも少なからず存在しています。しかし、すべてのケースが不当になるわけではありません。
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(1)通常の解雇事由にあたる非違などがあった場合
再雇用された従業員も、就業規則に定められている解雇事由に該当する非違があった場合は解雇の対象になりえます。
会社の信用を大きく失墜させるトラブルを犯した、刑事事件を起こして有罪判決を受けたなどがあれば、正規雇用の場合と同じく解雇対象となることは避けられません。
また、勤務状況の不良、業務に耐えられない疾患などがある場合の解雇も同様です。 -
(2)合理的な理由がある場合の雇止め
有期労働契約において、契約期間満了に際し、使用者から次期の契約更新を拒絶することを雇止めといいます。雇止めをするにあたっても、「客観的にみても合理的な理由があり、社会通念上の相当性」がない場合には無効とされています。
就業規則に定める解雇事由、または退職事由に該当している場合は、雇止めが認められる可能性があります。また、雇用契約書に雇止めの判断となる基準が明記されており、その基準を満たしていないことが客観的にも証明されている場合も、同様に雇止めが認められる可能性があるといえます。
3、不当な雇止めにあたるケース
再雇用後は、契約期間の定めがある有期雇用契約を結ぶケースが多いでしょう。有期雇用契約の場合、会社側は期間満了時に労働契約を終了させることができるのが原則です。しかし、無制限に雇止めが有効と認められるとすれば、労働者のその後の生活に大きな不安を与えることになります。
労働契約法第19条は、
有期労働契約であって次の各号のいずれかに該当するものの、契約期間が満了する日までの間に、労働者が当該有期労働契約の更新の申込みをした場合、又は当該契約期間の満了後遅滞なく有期労働契約の締結の申込みをした場合であって、使用者が当該申込みを拒絶することが、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないときは、使用者は、従前の有期労働契約の内容である労働条件と同一の労働条件で当該申込みを承諾したものとみなす。
と定めた上で、対象となる有期労働契約を以下の①②のように規定しています。
- ①過去に反復して更新されたことがある有期労働契約で、その雇止めが無期労働者を解雇することと社会通念上同視できると認められるもの(同条第1号)
- ②労働者において有期労働契約の期間満了時に当該有期労働契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められるもの(同条第2号)
では、具体的にどういったケースであれば不当な雇止めといえるのでしょうか。再雇用の場合にも該当可能性がある②の要件、及び客観的合理的理由、相当性について重点的に説明します。
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(1)契約が更新されるものと期待することについて合理的な理由があるものであると認められる場合とは
契約期間を定められた従業員が「来期も当然に契約を更新してくれるだろう」と合理的に期待する理由がある場合には、この要件を充足する可能性があります。
たとえば、定年後の再雇用を受けた他の社員は希望すれば65歳まで契約更新され、また、65歳まで契約更新する旨が使用者からも説明があり、当該従業員自身も過去に反復更新がなされている場合です。このような場合、自分だけが65歳に達する前に、(2)で述べるように理由なく更新拒絶をされた場合には、不当な雇止めに該当する可能性があります。 -
(2)客観的合理的理由、相当性
(1)のように契約更新の合理的期待がある場合には、客観的、合理的な理由があり、かつ、更新の拒絶が社会通念上も相当といえない限り雇止めが無効となります。
たとえば、「年齢」のみを理由にしたものであれば、不当な雇止めにあたる可能性があります。
そもそも、高年齢者雇用安定法が改正された理由は「高年齢者の雇用の確保」です。
65歳未満の労働者について「高齢だから」という理由だけで雇止めをすることは、雇用の機会を不当に奪ったことになり、無効となる可能性があります。
高年齢者雇用安定法では、原則、定年の引き上げか希望者全員の再雇用によって、65歳までの雇用機会を確保することを義務付けています。
再雇用にあたり、65歳未満の年齢、たとえば「63歳までの雇用とする」などの規定を会社独自に設け、それを理由に雇止めをすることも、高年齢者雇用安定法の趣旨に反します。 -
(3)確認するべきは再雇用後の「雇用契約書」や「就業規則」の契約更新基準
再雇用後の雇止めが、不当にあたるのかを判断する重要な材料となるのは「雇用契約書」「就業規則」です。
契約更新を拒否された場合は、まずこれらを確認しましょう。
依然として65歳未満までの雇用とされている場合は、高年齢者雇用安定法が改正されたことに対する措置が不十分な可能性があります。不当な雇止めの可能性もあるため、雇止めの理由を明確にする必要があるでしょう。
一方で、就業規則に解雇や再雇用の基準が明記されており、自身が解雇事由に相当する評価を受けている場合や、重大な非違を起こしてしまった場合は、雇止めが適法となると考えられます。
いずれにしても、雇止めの理由が不明瞭な場合や、疑問を感じた場合は、就業規則に規定されている内容を確認するとともに、弁護士などの専門家へ相談するべきでしょう。
4、再雇用後の雇止め等への法的対処法
再雇用後に不当に解雇された、契約更新を拒否されたなど、再雇用について不当な扱いを受けた場合は、まず会社と労働者との間で話し合いの機会を設けるのが一般的です。
ただし、会社側が話し合いのテーブルすらついてくれないケースも、めずらしくありません。
会社側と正当な話し合いの場がもてない場合は、法的な手続きに頼ることになるでしょう。
具体的には、裁判所に労働審判手続きを申し立てて、まずは調停で解決を図ることが多いです。調停でも双方の合意が得られない場合は、裁判所は労働審判を下しますが、従業員側、会社側のいずれかから異議申し立てがあれば、労働審判として出された解決案は効力を失い、訴訟に移行します。
再雇用後のトラブルを解決するためには、労働関連の法律について深い知識と経験をもつ弁護士のサポートが必須です。
早い段階から弁護士のサポートを得れば、解雇・契約更新の拒否を告げられた段階から、弁護士が代理人として会社との交渉のテーブルに立つことも可能です。弁護士が代理人に立つことで、会社側が話し合いに応じるケースも少なくありません。
話し合いでは解決できず、労働審判・訴訟に臨む場合も、申し立ての段階からサポートが可能です。
再雇用・解雇に関する法律は非常に難解で、トラブルに対処するには、過去のさまざまな判例にもとづく法理についても広い知識が必要です。
雇用の継続や賃金・損害賠償金(慰謝料)の支払いを求めるのであれば、まずは弁護士に相談してアドバイスを受けましょう。
5、まとめ
定年退職後の再雇用については、法改正によって原則的に65歳までの継続雇用が保障されています。
ところが、再雇用を希望したのに拒否された、契約更新を不当に拒否されたなどのトラブルはあとを絶ちません。
再雇用後の解雇・契約更新の拒否に関するトラブルへの対処は弁護士への相談が必須です。
再雇用後の解雇や契約更新の拒否についてお悩みの方は、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士にご相談ください。労働問題の解決実績を豊富にもつ弁護士が、全力でサポートします。
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