休日に1時間だけ出勤したときに代休は取得できる? 休日手当は?
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千葉県が公表している毎月勤労統計調査地方調査年報によると、令和2年の1人平均月間総実労働時間は、131.0時間でした。そのうち、早出、残業、休日出勤などの所定外労働時間は8.7時間でした。また、1人平均月間出勤日数(1日のうち1時間でも就業すれば出勤日としてカウント)は、17.3日でした。
繁忙期や急なトラブルの対応のためにやむを得ず休日に出勤した、という経験をされている労働者の方は多くおられます。会社によっては、「丸一日出勤をした場合には代休を取得することを認めるが、数時間の出勤であった場合には代休の取得が認めない」という制度になっている場合もあります。しかし、このような制度は、法律的に問題である可能性があります。
また、休日出勤といっても法律上いくつかの種類が存在しており、どの種類の休日出勤に該当するかによって休日手当の計算方法も異なってきます。労働者が代休や休日手当で損をしないためには、休日出勤に関する基本的なルールを知ることが重要です。
本コラムでは、休日出勤をした場合の代休や休日手当に関する基本的なルールについて、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説します。
1、休日出勤の基本
まず、休日出勤に関する法律的な基本的事項について解説します。
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(1)休日出勤とは
1年間の365日は、労働契約においては、労働日と休日に分けられます。労働契約上、労働義務が設定されている日を「所定労働日」といい、労働契約上初めから労働義務が設定されていない日を「所定休日」といいます。
「休日出勤」は、一般的に労働義務が設定されていない所定休日に働くことを指すのです。
1年のうちどの日が所定休日になるのかについては、会社と労働者との労働契約および就業規則によって定められています。
たとえば、月曜日から金曜日までを所定労働日、土日祝日を所定休日と定めている会社では、土日祝日に労働者が出勤することを休日出勤と呼びます。
そのため、休日出勤にあたるかどうかを判断するためには、暦上の土日祝日を基準とするのではなく、ご自身が勤務する会社との労働契約内容や就業規則を確認する必要があります。 -
(2)休日の種類
所定休日は、労働基準法によって義務付けられる「法定休日」とそれ以外の「法定外休日」に分けられます。以下では、それぞれの休日について説明します。
① 法定休日
労働基準法では、使用者に対して、毎週少なくとも1回または4週間を通じて4日以上の休日を与えることを義務付けています(労働基準法35条)。
このような労働基準法によって義務付けられている休日のことを「法定休日」といいます。
法定休日は法律上の義務であるため、労働者が同意をしていたとしても休みなく働かせることは違法となります。使用者に対しては、6カ月以下の懲役または30万円以下の罰金が科されることになるのです(労働基準法119条)。
法定休日に労働者を働かせるためには、「三六協定」の締結および届け出が必要となり、実際に労働者が法定休日に労働をした場合には、通常の賃金に加えて、35%以上の割増賃金を支払う必要があります。
② 法定外休日
法定外休日とは、労働基準法では義務付けられていないものの、労働契約や就業規則などによって設定されている休日のことをいいます。
たとえば、週休2日制を採用している会社における週の休日のうちのいずれか1日、国民の祝日、会社の創立記念日、年末年始休日などがこれに該当します。
法定外休日は、会社が独自に定めている休日であるため、労働基準法の休日に関する規定(労働基準法35条~37条)の適用はありません。
したがって、法定外休日に労働者が働いたとしても、休日労働に関する三六協定の締結および届け出は必要なく、割増賃金の支払いも義務付けられていないのです。
2、短時間の休日出勤の取り扱い
休日出勤をしたとしても丸一日働くのではなく、短時間の打ち合わせだけで終了することもあるでしょう。
このような短時間の休日出勤をした場合に、代休または振替休日の扱いについて、解説します。
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(1)振替休日と代休の違い
「振替休日」とは、あらかじめ就業規則などで定めた休日を所定労働日に変更して、他の所定労働日を休日に変更することをいいます。
振替休日を付与するためには、労働契約上の根拠が必要となります。そのため、就業規則において休日振替を必要とする場合に休日振替を行うことができる旨の規定を設け、この規定に基づいてあらかじめ振替休日を特定して振替を行うことによって、当該休日は所定労働日に振り替わることとなります。この場合には、事前に労働日と休日が振り替えられていますので、休日労働させたことにはなりません。
一方、「代休」とは、所定休日に休日労働をさせた代償として、使用者が労働者に対して後から休日を付与することをいいます。
このように、振替休日と代休の違いは、「事前に休日を振り替える」か「休日に労働をさせる代わりに事後的に休日を付与する」か、という点にあるのです。 -
(2)時間単位の振替休日・代休の可否
週1回の休日の付与は、法律上の義務とされており、休日は、原則として暦日とされています。そのため、振替休日を分割して付与したり、時間単位で付与したりすることは認められず、休日を振り替える場合には、暦日単位で振り替えなければならないのです。
したがって、短時間休日出勤をしたからといって、その時間分の振替休日を取得することはできません。
他方、代休については、会社独自の恩恵的措置という位置づけであるため、半日単位や時間単位で分割付与することも可能です。
そのため、短時間の休日出勤をした場合には、会社の定めに応じ、その時間分の代休を取得するということも可能です。
ただし、代休の付与は、法律上の義務ではありません。
したがって、就業規則や労働契約において代休の付与に関する規定がない場合には、労働者の側から代休の付与を求めることはできないのです。
3、休日出勤における手当の考え方
以下では、休日出勤をした場合における休日手当がどのような場合に支払われるのかについて、解説します。
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(1)休日手当とは
「休日手当」とは、労働者が法定休日に労働をした場合において支払われる手当のことをいいます。
休日出勤において支払われる金額は、労働者が労働をした日が法定休日であるか法定外休日であるかによって異なってきます。
① 法定休日の場合
法定休日に労働をした場合には、通常の賃金に加えて、休日手当として割増賃金が支払われます。法定休日に労働をした場合の割増率は、35%以上と定められていますので、通常の賃金に加えて、1時間あたりの基礎賃金にこの割増率を掛けた金額を休日手当として支払ってもらうことができます。
たとえば、1時間あたりの基礎賃金が2000円であり、法定休日に8時間の労働をした場合の賃金額は、以下のようになります。通常の賃金(2000円×8時間)+休日手当(2000円×8時間×35%)=2万1600円
② 法定外休日の場合
法定外休日の場合には、法定休日の場合とは異なり、休日労働に対する割増賃金(休日手当)は支払われません。そのため、法定外休日に労働をした場合には、平日と同様、通常の賃金が支払われることになります。
たとえば、1時間あたりの基礎賃金が2000円であり、法定外休日に8時間の労働をした場合の賃金額は、以下のとおりです。通常の賃金(2000円×8時間)=1万6000円
ただし、休日出勤をしたことによって、1週間の労働時間が法定労働時間(40時間)を超えた場合には、超過した時間に対して25%以上の割増率を掛けた時間外手当が支払われます。
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(2)休日手当と振替休日・代休との関係
休日出勤をしたとしても、振替休日または代休を取得した場合には、休日手当はどうなるのでしょうか。
① 振替休日の場合
振替休日は、法定休日を所定労働日に変更するものですので、法定休日に労働したとしても休日労働にはあたりません。
そのため、法定休日に休日出勤をしたとしても、休日労働に対する割増賃金(休日手当)は支払われず、通常の賃金のみが支払われることになります。
② 代休の場合
代休は、法定休日に労働をした労働者に対し、恩恵的に付与される休日です。
そのため、事後的に代休を取得したとしても、法定休日に労働をした部分については、通常の賃金に加えて、35%以上の割増率を適用した割増賃金が休日手当として支払われなければならないのです。
4、まとめ
法定休日に1時間だけ労働したとしても、休日労働に該当します。したがって、通常の賃金に加えて、当該時間に相当する休日手当を請求することができるのです。
ただし、労働基準法上の休日の考え方は、非常に複雑であり、割増賃金の適用のある休日出勤であるかどうか、労働者の方が正確に判断することが困難な場合もあるでしょう。また、振替休日や代休も絡んでくると、その判断はさらに複雑なものとなります。
そのため、休日手当が適切に支払われているかどうかについて疑問が生じた場合には、専門家である弁護士に相談をすることをおすすめします。
千葉県柏市で未払いの休日出勤手当の請求をご検討されている方は、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスにまで、お気軽にご相談ください。
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