未払いの残業代を請求したい! 相談先や請求方法について弁護士が解説

2020年11月04日
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未払いの残業代を請求したい! 相談先や請求方法について弁護士が解説

平成29年5月、夜間の仮眠時間も勤務時間にあたるとして未払い残業代を請求した裁判で、千葉地方裁判所は会社に対し、割増賃金と制裁金にあたる付加金を含めて177万円の賠償を命じました。

サービス残業が横行している職場では、日頃から「勤務時間の端数を切り捨てる」「始業時間より○分以上前に来るものだ」「準備・片付け・勉強は業務時間外」などと教え込まれることもあるかもしれません。
このような職場にいると「これが普通なのだろうか」「みんな我慢しているのだから」と、誰にも相談できないまま、泣き寝入りしてしまう方も少なくありません。
しかし本来は、労働の対価として、働いた分の賃金はきちんと支払われるべきです。

このコラムでは、未払いの残業代がある場合の適切な相談先や対応策について、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説します。

1、未払い残業代に関する相談先

もしも、あなたの会社で残業代の未払いが恒常化しているとしても、皆が従っているルールに異を唱えることは、簡単ではないことでしょう。
しかしながら、残業代を支払わない行為は、れっきとした法律違反です。

まずは、未払いの残業代がある場合に相談できる先をご紹介します。

  1. (1)全労連「労働問題ホットライン」

    労働組合の全国中央組織である全労連(全国労働組合総連合)が運営している相談窓口です。フリーダイヤルに電話をかけると、電話をかけた地域の労働相談センターにつながります。電話のほか、団体サイトのメールフォームからの相談も可能です。

  2. (2)労働基準監督署内の「総合労働相談コーナー」

    千葉労働局による無料相談コーナーです。千葉県内では、柏、千葉、船橋、銚子(ちょうし)、木更津、茂原、成田、東金の労働基準監督署内に設けられています。
    面談または電話にて、労働に関するさまざまな問題について、無料で助言を受けられます。

    必要に応じて、書面による指導も行いますが、あくまでも自主的な紛争解決を目指すための手だてとなるので、強制力はありません。

  3. (3)社労士会労働紛争解決センター千葉

    千葉県社会保険労務士会が運営している、個別労働関係紛争について解決をはかる機関です。
    あっせん委員は、労働者と事業主双方の言い分を聞き、公正・中立の立場で妥結点を見いだせるようはたらきかけます。
    当事者の一方の住所、または所在地が千葉県内にあり、労働者と使用者の間の労働関係の問題に対する紛争であれば、対応してもらえます。

  4. (4)労働基準監督署

    労働基準監督官は、司法警察員としての権限を有するため、労働基準関連法令の違反が疑われ、その違反が重大なものである場合には、逮捕や捜索、差し押さえ、送検を行うことが可能です。
    しかし、これらの対応は違反行為が重大かつ明白な場合の措置であり、実際に上記の対応まで求めることは容易ではありません。また、事実を証明するための証拠は、相談者自ら集める必要があります。

  5. (5)弁護士

    個人が会社という組織と争うことは、不安であったり、何らかの困難を伴ったりするケースが非常に多いでしょう。
    そのようなときに、あなたの味方となり、代理人として会社との交渉できるのが弁護士です。
    会社との任意交渉から、証拠集め、労働審判、訴訟などの手続きをすべて任せることができます。
    弁護士によって得意とする分野が異なる場合もありますので、労働問題の経験が豊富な弁護士を探すことが重要です。

    弁護士事務所は敷居が高いと感じたり、費用面に不安を感じたりすることもあるかもしれませんが、初回相談は無料にしている事務所も増えてきていますので、利用すると良いでしょう。
    なお、ベリーベスト法律事務所では、残業代請求に関するご相談については、何度でも無料でご相談いただけます。

    また、弁護士への法律相談を検討する上では、法テラス(日本司法支援センター)の利用を行うという選択肢もあります。
    法テラスでは、法的トラブル解決のために、必要な情報やサービスが受けられる総合案内所という位置づけで、無料で法律相談を受けることができます。法務省所管の公的機関で全国に設置されており、千葉県内には、千葉、松戸の二か所にあります。

2、残業代を請求できる可能性があるケース

労働基準法における法定労働時間は「1日8時間、1週間で40時間」と定められています。これを超過して働く場合、会社は残業代(割増賃金)を支払う義務があります。

また、以下のような社内ルールがある場合、残業代を請求できる可能性があります。

  • 退社のタイムカード打刻後に残業するよう指示される
  • どれだけ残業しても、残業時間に上限がある
  • 労働時間の端数が切り捨てられている

3、残業請求に証拠は必須

残業代を請求することができるのか、また実際にどれだけの未払い残業代があるのかを判断するには、根拠となる証拠集めが重要です。

  1. (1)残業していた事実を証明する証拠

    残業したことを客観的に証明するためには、以下のようなものが証拠になり得ます。

    ●タイムカード
    勤務時間を記録したタイムカードはコピーしておきましょう。WEBなどを使用している場合は、画面を印刷しておきます。会社がタイムカードを導入していない場合は、業務日誌や業務日報のコピーでも構いません。

    ●交通系ICカード
    交通系ICカードには駅の入出場時間が記録されています。券売機などで出力できますが、記録される件数や期間に制限が設けられているケースが多いので、注意が必要です。

    ●メール
    顧客とのやりとりなど、業務時間外に仕事をしていたことがわかるメールの履歴は、印刷するなどして保管しておきましょう。

    ●タクシーの領収書
    残業後にタクシーを使用した場合は、利用時間がわかる領収書を保管しておきましょう。

    ●LINEなどの送信履歴
    家族などに対して「残業してこれから帰る」などと送信したLINEやメールの履歴も、証拠になり得ます。スクリーンショットなどで記録しておくと良いでしょう。

    ●パソコンのログイン・ログアウト情報
    システムログなどから履歴を確認することができますが、使用しているパソコンの機種や権限によっては、個人ではログを確認できないこともあります。

  2. (2)残業代の未払いを証明する証拠

    残業代が未払いであることを証明するためには、次の資料を用意しておくことが大切です。

    • 給与明細
    • 源泉徴収票
    • 就業規則

    給与明細・源泉徴収票・就業規則は、未払いの残業代を計算する際にも必要となります。WEB上で確認しているような場合は、画面を印刷しておくようにしましょう。

4、どれくらい請求できる? 未払い残業代の計算方法

  1. (1)残業代の計算式

    残業代の計算は、個々の事案によって異なってきますが、おおまかな計算のイメージは以下のとおりです。

    基本給および諸手当(賞与や交通費、法律に規定される一部の手当等は除く)を法律の定めに基づいて時給(時間単価)に直したもの
    ×
    割増率
    ×
    時間外労働・休日労働または深夜労働の時間数


    算出された割増賃金の単価に、割増率や実際に残業した時間を掛けあわせることで、請求できる残業代が分かります。

  2. (2)割増率

    割増率とは、法定外残業をした場合に上乗せされる賃金のことで、残業の区分により割増率は異なります。

    ●法定内残業
    就業規則で定めた所定労働時間が、法定労働時間(1日8時間、1週間40時間)より短い場合は、法定内残業になります。法定労働時間内の残業では、割り増しはありません。

    たとえば、就業規則で定められた所定労働時間が7時間で、1時間残業したケースで考えてみます。この場合、残業時間を含めても法定労働時間である8時間は超えません。そのため、残業代は支払われるものの、割り増し対象にはなりません。

    ●法定外残業
    法定労働時間を超えた時間外労働は、25%の割り増しです。
    さらに、時間外労働が1か月60時間を超えた場合は、50%割り増しで支払うことが定められています。

    ●深夜残業
    午後10時から翌朝午前5時までは深夜労働となり、25%の割り増しです。
    法定外残業かつ深夜労働であれば50%の割り増し、1か月60時間を超えた法定外残業かつ深夜労働は75%の割り増しです。

    ●法定休日残業
    労働基準法では、原則として週に1日、または4週間に4回以上の「法定休日」を与えるよう定めています。法定休日に労働した場合は、35%の割増賃金を支払う必要があります。


    このように、残業代を算出するためには、自身の雇用形態、勤務状況、会社の規則のほか、割増率も意識しなければいけません。
    正しく計算できなければ、会社へ請求することもできません。計算に迷われたときは、弁護士などの専門家へ相談することが得策です。

    なお、ベリーベスト法律事務所では、残業代を請求できる可能性があるのか確認できる「残業代チェッカー」をご用意しています。入社退職の時期、月収、残業時間、支払われている残業代を入力すると自動で計算ができますので、ぜひご利用ください。

    残業代チェッカー

    ※残業代チェッカーによる計算結果は、あくまでも簡易的な計算による目安を示すものです。実際に請求できる金額は、勤務先の就業規則、勤務先との契約内容等によって異なります。

5、まとめ

会社から残業代が支払われないという問題を抱えている場合、さまざまな機関に相談することができます。状況に応じた相談先を選択すると良いでしょう。
ただし、代理人となれるのは弁護士だけです。会社に対し、弁護士を通じて申し入れを行うだけでも、事態が動く可能性もあるでしょう。

また、未払いの残業代を会社に請求するためには、事前に証拠を集めておくことも重要になります。それらの証拠集めに関しても、弁護士であれば助言をするだけではなく、会社へ開示請求を行うなど、確実に証拠を集めるための手段を講じることができます。

未払いの残業代があり会社に請求したいとお悩みの際は、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士にご相談ください。柏オフィスの弁護士がしっかりとお話を伺ったうえで、最適な残業代請求の方法を提案します。まずは、ご相談ください。

  • この記事は公開日時点の法律をもとに執筆しています