休日出勤したのに手当なし? 知っておきたい休日労働と休日手当の関係
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千葉市労働局が令和2年7月に発表した情報によると、県内の労働基準監督署などに寄せられた労働相談件数は約5万件で、7年連続4万件を超えたそうです。
労働環境や嫌がらせなど、さまざまな労働相談があるなかでも、賃金にまつわるトラブルは労働者にとって非常に大きな問題になり得ます。一方で、労働者自身が賃金体系や、どのようなケースで手当がつくかなどを正確に把握していないことも少なくありません。
特に、法定休日労働に対する割増賃金(以下、「休日手当」といいます。)に関しては、労働者側が休日手当に関する正確な情報や知識を持ち合わせていないことによって、不利益を被っているケースがあります。
そこで本コラムでは、労働者が知っておきたい休日労働と手当の関係について、ベリーベスト法律事務所 柏オフィスの弁護士が解説します。
1、法律上における「休日」の考え方
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(1)「休日」とは
土日を休日と定める会社に勤務している場合、土日に出勤して働けば、その時間はすべて休日出勤になると考えるかもしれません。
しかし、休日には、「法定休日」と「所定休日」の2つの種類があり、労働基準法において休日の労働として扱われるのは「法定休日」に働いたケースのみです。
どちらの種類の休日に勤務したかによって、割増賃金との関係が異なるため、明確に区別しておく必要があります。 -
(2)法定休日
「法定休日」は、労働基準法で定められている休日であり、労働者の心身を守るために必要とされる最低限度の休日です。具体的には、「毎週少なくとも1回」または「4週間をとおして4日以上」与えることが義務づけられています。
そして、法定休日に労働させるためには、使用者は労働者側と「時間外・休日労働に関する協定」(「36協定」とも呼ばれます)を締結していることが前提になります。 -
(3)法定外休日(所定休日)
「法定外休日(所定休日)」とは、それぞれの会社が独自に就業規則や労働契約などで定める休日のことをいい、「法定外休日」や「所定休日」と呼ばれるのが一般的です。
たとえば、土日休みの週休2日制の会社に勤めていた場合、土曜日または日曜日の1日だけ出勤したときには「法定外休日」に出勤したものとして扱います。
この場合、週に少なくとも1日という「法定休日」は確保できているためです。
2、「休日労働」と「手当」の関係
では「休日労働」と「手当」の関係をみていきましょう。
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(1)休日労働と手当
法律上、法定休日の労働に対しては、割増賃金の支払いが必要であると定められています。この割増賃金は「休日手当」のような名称で支払われます。
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(2)法定休日労働の割増率
法定休日労働の割増率は、「35%以上」と定められています。
割増賃金は、「1時間あたりの賃金単価×割増率」で、算出することができます。 -
(3)管理職は基本的に手当なし
法定休日労働をしても、すべての労働者に休日手当がでるわけではありません。
労働基準法では、「管理監督者」には労働時間・休憩・休日関連の規定が適用されないとされています。そのため管理監督者が法定休日に労働をしたとしても、休日手当は支払われません(深夜割増賃金は支払われます)。
ただし会社が定める管理職であっても、法律上の管理監督者とはいえないケースもあるので、注意が必要です。
管理監督者とは「経営者と一体的な立場にある者」を指し、名称にとらわれず、その職務と職責、勤務様態、その地位にふさわしい待遇がなされているかなどの実態に照らして、管理監督者に該当するかが判断されます。
そのため会社から管理職といわれていても、いわゆる、名ばかり管理職で法律上の管理監督者に該当しないときは、休日手当を請求できる可能性があります。
3、振替休日と代休では休日手当の有無が違う
休日に出勤をしたときは、振休(振替休日)や代休を取得することもあるでしょう。振替休日と代休は、同じ意味だと誤解されることも少なくありませんが異なる制度であり、どちらを選択したかによって休日手当の有無が異なるので、注意が必要です。
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(1)振替休日を取得したとき|手当なし
振替休日とは、業務上の都合などで休日と定められた日を“あらかじめ”労働日に変更して、その代わりに特定の労働日を休日とすることをいいます。労働日と休日を交換しているだけなので、振替休日を取得した場合は、基本的に割増賃金は請求できません。
たとえば土日休みの週休2日制の会社において、日曜日に出勤することになったため、あらかじめ特定の水曜日を休日に振り替えるといった対応が「休日の振替」に該当します。
ただし振替休日として扱われるためには、本来休日であった出勤日をむかえるまでに、あらかじめ振替休日が定められている必要があります。
また少なくとも、4週4日の法定休日は確保されることが前提です。 -
(2)代休を取得したとき|手当あり
代休とは、休日労働が行われたときに、事後的にその代償として他の労働日を休日にして休ませる措置をいいます。
代休は労働日と休日を交換したものではないため、休日出勤をした事実は代休の取得によっても消えることはありません。
そのため代休を取得したとしても、休日労働した分の割増賃金を請求することができます。
たとえば、日曜日の法定休日に緊急対応で出勤し、事後的に「明日の月曜日は休んでいい」といわれたようなケースでは、月曜は代休扱いとなります。そして、日曜日の出勤に関しては、休日労働として割増賃金を請求することができます。
4、法定外休日の出勤は残業代が発生する可能性がある
休日手当は、法定休日の出勤に対して支給される割増賃金です。
一方、法定休日以外の会社所定の休日(法定外休日)に出勤したときは、「時間外労働」として時間外手当(残業代)の支給を受けられる可能性があります。
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(1)時間外労働とは
時間外労働とは、法定労働時間を超える労働のことをいいます。
労働基準法では、使用者が労働者を就労させられる時間として「1日8時間・1週40時間」を原則とすることを定めており、それを超えた時間外労働に対しては、「25%以上」の割増率で賃金が計算されます。 -
(2)残業代を請求できるケース
法定外休日に出勤したとき、どのようなケースであれば時間外手当を請求できるのかについて、具体例を元に解説します。
【例】
就業規則で土日休みの週休2日制を採用する会社において、月曜から金曜まで、毎日8時間働いた。しかし業務が終わらず、土曜日にも8時間勤務して、日曜は休みをとることができたケース。
結論から解説すると、例のケースでは、土曜日の勤務は休日出勤扱いにはならないものの、時間外労働としてカウントされるので、残業代を請求することができます。
まず、毎週少なくとも1日必要な法定休日は日曜日に取得できているので、土曜日の出勤は休日出勤としては扱われず、休日手当は支給されません。
しかし、月曜から金曜までの勤務時間の合計は「8時間×5日」で法定労働時間の上限となる40時間に達しているため、土曜の勤務時間は法定労働時間を超えた時間外労働になります。
したがって、土曜日に勤務した8時間については、25%の割増率で計算した残業代を請求することができます。 -
(3)残業代を請求する際の注意点
時間外労働をしているにも拘わらず残業代が支給されていない場合は、残業代を会社に請求することができます。ただし、請求する際には、残業をした事実や残業時間を証明する証拠と、正確な請求額を確定させておく必要があります。
また、残業代を請求できる期間には時効があるので、未払いの賃金がある場合は、できるだけ早く動き出すことが大切です。
残業代請求権の時効は、令和2年4月1日以降に発生した残業代請求権に関しては3年、令和2年4月1日以前に発生した残業代請求権に関しては2年です。
5、まとめ
休日出勤をしているにもかかわらず、何ら手当がついていないという場合は、まずは出勤した日が、法定休日なのか、それとも法定外休日なのかを判断する必要があります。また、別日に休みを取得しているような場合は、それが振替休日なのか、代休なのかも、確認しておきましょう。
休日手当を会社に請求する場合は、法的な知識に加え、雇用条件や就業規則なども確認した上で、会社と交渉する必要があり、労働者個人で対応するのは簡単なことではありません。そのため、休日手当や残業代に関して疑問やお悩みを抱えている場合は、まずは弁護士へ相談し、アドバイスを得ると良いでしょう。
ベリーベスト法律事務所 柏オフィスでは、休日手当や残業代の請求をはじめとする労働問題のご相談を受け付けております。泣き寝入りすることなく、最善の方法で解決できるよう尽力しますので、ぜひお気軽にご相談ください。
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